「ある会社員の女性患者が、ドライアイが次第に悪化し、視界が常に薄い膜に覆われたように感じると訴えました。顕微鏡検査を行ったところ、驚くことに眼表面全体が雪片のような化粧品の粉末で覆われていたのです。画像を用いて説明した後、患者は化粧方法に注意すべきだと理解し、その後、症状は明らかに改善しました」
アメリカ白内障・屈光手術医学会会員であり、台湾・珍世明眼科クリニック院長の王孟祺氏は、エポックタイムズの取材に対しこの症例を紹介し、アイラインは睫毛の生え際の外側に引き、眼周りのメイクはできるだけ控え、特に長時間のアイメイクを避けるよう警告しました。
王氏はさらに、化粧品がマイボーム腺を詰まらせることで涙液中の油脂分泌に異常が生じる可能性があり、とくに内側アイラインはマイボーム腺の開口部に近いため、長期的な閉塞によって腺が徐々に萎縮するおそれがあると説明します。加齢とともに油分不足型のドライアイが進みやすくなるのは、マイボーム腺から分泌される油脂が涙の蒸発を抑える役割を担っているためです。
研究と統計データ
アメリカでは女性の約62%が日常的にアイメイクを使用しており、なかでもマスカラが最も人気とされています。また、子どもやティーン向けの「玩具化粧セット」でも、眼部用化粧品がますます普及しています。
2025年4月に『Nature』傘下の『Scientific Reports』に掲載された研究では、28カ国・1,344人を対象とした調査の結果、アイラインを使用する人は眼表面疾患指数が高く、とくに睫毛の内側に描く人でその傾向がより顕著であることが示されました。
研究では、睫毛の内側は眼球に近く、この部位にアイラインを引くと、瞬きをするたびに化粧品粒子が眼表面に接触しやすくなり、涙液分泌の低下や、角膜・角膜縁を含む眼表面機能の障害につながる可能性があると指摘しています。
アイメイクが目に入って引き起こすさまざまな眼疾患
アメリカ眼科学会会員で、台湾・五福ノーベル眼科院長の粘靖旻氏はエポックタイムズの取材に対し、化粧品が原因とみられる眼疾患の患者が外来で増えていると語りました。多くの人は一時的な不快感だと考え休めば治ると思いがちですが、彼女は、小さな症状に見えても重い眼障害へ進行する可能性があると警告しています。
彼女は次のような例を挙げています。
アイメイクに含まれる刺激性の化学物質(ホルムアルデヒドやパラオキシ安息香酸エステルなどの防腐剤)は、アレルギー反応を起こしやすいこと;
つけまつげ用グルーに含まれるシアノアクリレート成分が眼球に触れると、化学性角膜炎を引き起こす可能性があること;
使用期限の切れたマスカラを誤って使用すると、細菌の増殖により重い眼感染症につながるおそれがあること;
ラメ入りアイシャドウに含まれる微小な金属片やプラスチックラメが目に入ると、角膜表面を傷つけたり、結膜下に挟まって結膜炎を引き起こしたりする可能性があること。
化粧品が目に入ったら絶対にこすらない
粘氏は次のように説明します。「化粧品の粒子が目に入ると、角膜表面に微細な傷ができ、一時的に視界がぼやけることがあります。また、その傷によって光への感受性が高まり、普段の明るさの光でも直視しづらくなることがあります。この状態では無意識に瞬きが増えたり目を細めたりしやすくなり、長期的には視力の低下や頭痛につながる可能性も考えられます」
彼女は強調します。化粧品が目に入った場合、まず目をこすらないことが重要です。異物がより深く入り込んだり、傷が悪化したり、手に付着した細菌によって感染が広がるおそれがあるためです。
彼女は正しい対処法として、次の点を挙げています。
- 大量の清潔な水、または生理食塩水で目を洗うこと。
- 軽く瞬きをして、涙の作用で異物を流すこと。
- 痛みや不快感が30分以上続く場合や、視力に影響が出た場合は、速やかに医療機関を受診すること。
化粧品残留の影響
メイク後の洗浄が不十分な状態が続くと、目は長期的にダメージを受けやすくなります。
王孟祺氏は、かつて中年女性の患者を治療した経験を語ります。彼女は頻繁な充血、発赤、かゆみ、分泌物の増加、乾燥といった症状を訴えていました。検査の結果、まぶたには汚れが多く付着しており、顕微鏡検査では、1本の睫毛の根元から11匹の蠕形ダニが確認され、その周囲には多数の幼虫も見つかりました。徹底した洗浄治療と、毎日のアイクリーニングシートによるケアを続けることで、この状態は徐々に改善しました。
王氏は次のように述べます。「多くの患者は、つけまつげが傷むのを恐れて睫毛の根元まで丁寧に洗いません。しかし、汚れや剥がれた皮膚細胞が睫毛の根元に蓄積すると、細菌や蠕形ダニが繁殖し、慢性眼瞼炎を引き起こす可能性があります。その結果、睫毛の脱落、まぶたの縁の赤み、眼表面の炎症、分泌物の増加、ドライアイなどの症状が現れます」
粘靖旻氏も、化粧品の残留物が睫毛の根元やまぶたの縁に蓄積すると、まぶたの縁に硬い塊のような感触や、皮膚の剥離などが生じることがあると指摘します。重度の場合には睫毛の成長に影響し、睫毛倒生を起こして見た目の問題だけでなく、眼球表面を継続的に刺激する原因になることもあります。朝起きたときに目の周囲に粘着性の分泌物やかさぶたが見られる場合は、クレンジングが不十分であるサインとして、特に注意が必要です。
彼女は、刺激の少ないクレンジング製品を選び、クレンジングは丁寧かつ優しく行い、アイラインやマスカラなどのアイメイクをしっかり落とすよう呼びかけます。前述のような眼瞼炎の症状が現れた場合は、すべてのアイメイクを中止し、眼科医に相談してください。自己判断で薬を使用したり、我慢したりすることは勧められません。
王氏は、ウォータープルーフの化粧品を使用した場合は、専用の眼瞼拭き取りシートによる十分な洗浄を勧めています。ダニの増殖が確認された場合には、医師と相談しながら適切な治療を行うことが重要です。
クレンジング液の危険
残留したアイメイクが目に与える影響に加え、アイクレンジング液自体にも注意点があります。アイクレンジング製品は主に、オイルタイプ、オイルフリータイプ、ジェルタイプの3種類に分けられますが、いずれもまぶた周辺に浸透し、涙膜の蒸発を促す可能性があります。とくにオイルタイプのクレンジングは、涙膜の安定性を低下させやすいとされています。
オイルフリータイプは異なる界面活性剤によってメイクを落としますが、これらの成分はまぶたの皮膚に必要な皮脂まで除去してしまい、目周りの乾燥を招き、眼瞼の刺激や湿疹などの皮膚トラブルを悪化させる可能性があります。また、界面活性剤は皮膚への浸透性があることが知られており、洗い流しても成分が残留するおそれがあります。
アイメイク成分の危険
研究によると、化粧品に使用されている化学成分は12,500種類に及びますが、化粧品成分審査委員会による安全評価を受けている化合物は20%未満とされています。アメリカでは11成分が禁止され、EUでは制限または禁止されている化学物質が1,300種類以上あります。これらの中には、感作性、発がん性、内分泌かく乱作用、免疫抑制作用を持つ可能性が指摘されているものも含まれます。
以下は、アイメイク製品によく使用され、一定濃度では安全とされているものの、目に対して影響を及ぼす可能性が指摘されている成分です。
・エチルヘキシルグリセリン
エチルヘキシルグリセリンは界面活性作用や保湿・防腐作用を持ち、感作性は比較的低いとされています。しかし、臨床症例の報告では、エチルヘキシルグリセリンを含む洗い流さない製品が、必ずしも完全に無害とは言えず、接触性皮膚炎のリスクが示唆されています。
・フェノキシエタノール
フェノキシエタノールは、さまざまなグラム陰性菌・陽性菌や酵母菌に対して抑制作用を持ち、化粧品の防腐剤として最大1.0%まで使用が認められています。しかし、この濃度の10分の1程度でも、まぶたのマイボーム腺上皮細胞の生存率を低下させる可能性があると報告されています。
・ベンザルコニウム塩化物
ベンザルコニウム塩化物は半減期が長く、消毒や殺菌に用いられる化合物で、EUでは化粧品中の最大濃度0.1%が許可されています。
しかし、標準濃度の2万分の1程度でも、体外の眼表面細胞や関連細胞に対して毒性を示す可能性があるとされています。体内では、涙膜の不安定化を引き起こし、粘液分泌によって涙膜を形成する杯状細胞の減少や、角膜上皮バリアの障害につながるおそれがあります。
眼科医のアドバイス
アイメイクによる健康リスクを減らすため、王孟祺氏は次の点を提案しています。
1.内側アイラインは描かない
睫毛の隙間をアイライナーで埋めて目を大きく見せる方法がありますが、医師の立場からはリスクがあると考えられています。王氏は、アイラインは睫毛の生え際の外側に描き、睫毛の根元や眼球側のまぶたの縁を汚さないよう勧めています。これらの部位は眼表面の健康に影響しやすいためです。
2.長時間メイクをしない
可能な限りアイメイクの時間を短くし、長時間のメイクは避けるようにします。
3.ラメ入り製品とロングタイプマスカラを避ける
ラメ入り化粧品やロングタイプのマスカラは使用を控えめにします。微小な粒子やナイロン繊維が眼表面に入りやすいためです。
4.アイメイク用品を共用しない
アイライナーやブラシなどのメイク用品を他人と共有しないようにしてください。交差感染のリスクがあります。
また、アレルギー体質の人、アトピー性皮膚炎のある人、ドライアイの人は、眼科や皮膚科で相談し、個別のアドバイスを受けることが望ましいと強調しています。
安全なアイメイク製品の選び方
東京大学医学博士の畢文傑氏はエポックタイムズの取材に対し、各国政府や業界が化粧品中の化学元素に上限を設けているものの、世界的に統一された基準はなく、一部は各国で市販されている化粧品の一般的な元素濃度を基準とし、また一部は製造者が毒性や潜在的毒性を考慮して独自に上限を設定していると、研究を引用して指摘しました。
畢氏は、成分がシンプルで刺激の少ない製品を選び、可能であれば防腐剤不使用、または敏感な目向けに設計されたアイメイク製品を選ぶことを勧めています。
- アイシャドウは粉飛びしにくいプレストタイプを選び、目に入りにくいものを使用すること
- アイライナーやマスカラは使用期限が比較的短いため、3カ月ごとに交換すること
- 購入前には耳の後ろや手首の内側で24時間のパッチテストを行い、赤みやかゆみが出ないか確認すること
- 眼科医の認証や敏感テストを通過したクレンジング製品を使用すること
を推奨されています。
(翻訳編集 日比野真吾)
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