冷え・太りにくい体質を変える 陽気と代謝の整え方

「水を飲んだだけで太る」という話を耳にすることがありますが、これは減量における重要なポイントである「代謝」を端的に表しています。体が水分をうまく代謝できなければ、いわゆる「むくみ太り」の状態になってしまいます。中医学では、代謝が悪い原因は「陽気不足」にあると考えられており、太りにくい体質をつくるための鍵は、陽気を高めること、特に消化器系の陽気を養うことにあります。

陽気とは、体を温め、活動させるエネルギーのことです。現代医学では、ミトコンドリアが細胞内でエネルギーを生み出す工場だと知られていますが、研究によると、長時間座りっぱなしの生活はミトコンドリアの機能を低下させ、細胞に十分なエネルギーを供給できなくなり、さまざまな不調や病気の原因になります。このミトコンドリア機能の低下は、中医学でいう「陽虚体質」とよく似た状態だと考えられます。

陽虚にみられる主な症状

陽気が不足すると代謝機能が低下し、次のような症状が現れやすくなります。

1.冷えやすい:手足が冷え、血行が悪くなります。重症の場合、冬になると指先や足先が紫色になることもあります。

2.疲れやすい:四肢に力が入らず、日中に強い眠気を感じやすくなります。

3.消化器系の不調:消化器のエネルギーが不足した状態を中医学では「脾陽虚」と呼びます(脾と胃腸は同じエネルギー系統に属します)。腸の動きが弱くなり、食欲不振、膨満感、胃食道逆流、消化不良、便秘や下痢が起こりやすくなります。重い場合には、食べた野菜がほとんど消化されないまま排泄されることもあります。

4.心血管・呼吸器の症状:心の陽気が不足すると、息苦しさ、胸のつかえ、動悸、息切れが起こりやすくなり、重症では心不全のような症状が現れることもあります。

5.腰や膝のだるさ:腎のエネルギーは骨や関節と深く関係しており、腰痛や膝の力が入らない状態は「腎陽虚」と考えられます。

6.頻尿・夜間尿:腎陽虚は泌尿機能にも影響し、トイレが近くなる原因になります。

7.睡眠と感情の乱れ:昼間に眠くなる一方で、夜は眠りにくくなります。手足の冷えが強いと、寝つきも悪くなります。また、気分の落ち込み、イライラ、不安感が現れることもあります。

(提供:医道心傳)

 

消化器系は「太りにくい体質」の土台

陽虚体質の人は、減量に成功してもリバウンドしやすい傾向があります。その理由として、代謝が遅いこと、血糖値の変動が大きくインスリンが過剰に分泌され脂肪がつきやすくなること、あるいはストレスによる過食などが挙げられます。

(提供:医道心傳)

 中医学では、陽気を高めることも血糖を安定させることも、すべて「胃腸を養うこと」から始まると考えます。しかし、多くのダイエットでは、誤った食事制限によって胃腸を傷めてしまっています。私は減量に取り組む人によくこう伝えています。「きれいになるために痩せたいのに、顔色が悪くなり、胃腸を壊して体が弱ってしまっては意味がありません。その状態で痩せても、必ずリバウンドしますし、戻る過程で体はさらに悪くなります」

中医学には「胃気あれば生き、胃気なければ死す」という言葉があります。これは、たとえ病状が重くても、食べ物を消化する力が残っていれば回復の可能性がある一方で、消化するエネルギーさえ失われれば、生きる力そのものが尽きてしまう、という意味です。そのため、中医学の治療では、まず胃腸を整えることが最優先とされています。
 

胃腸を立て直す方法

胃腸が回復してはじめて、体は健康的な代謝を再起動できます。過去に食事制限で痩せたもののリバウンドしてしまった人には、次の3つの食材で胃腸を修復することが勧められます。

1.米湯/米油(のり状でとろみのある部分、上澄みの膜)

米湯を飲むことは、胃を養ううえで最も早く、効果的な方法です。

作り方:丸くて短粒の米を使い、米1カップに対して水20カップの割合で、土鍋や陶器の鍋を用い、弱火で2時間ほどじっくり煮ます。

食べ方:(米油)をすくい、朝の空腹時に温かい状態で1杯飲みます。

効果:上澄みにできた米油のエッセンスには、じっくり火を通した温かなエネルギーがあります。飲むと全身が心地よくなり、気力も高まります。胃の内壁を覆うように保護し、逆流性食道炎、胃潰瘍、胃びらんのある人にも適しています。

2.四神湯(ししんとう)

材料:山芋、芡実(けんじつ)、はすの実、茯苓(ぶくりょう)。台湾では、ここにハトムギを加えることもあります。

むくみ太りタイプの人には、ハトムギを加えて水分代謝を促しますが、すでに痩せている人には、ハトムギは加えないほうがよいとされています。

効果:山薬と蓮子は胃腸をやさしく養い、芡実は腎を補い、茯苓は脾を強くして余分な水分を排出します。中医学では、脾の働きが整うことで、むくみを取り除けると考えられています。

3.白米

主食は、しばらく白米を中心にすることが勧められます。よく噛み、ゆっくり食べることで、少しずつ胃腸を立て直していきます。

白米は精製された炭水化物で血糖値を上げやすく、「体に悪い食べ物」と極端に捉える人もいますが、それは偏った考え方です。白米で胃腸を養うことで代謝が整い、長期的には血糖コントロールにも役立ちます。
 

陽気を傷つける誤った習慣

胃腸を養う食事と同じくらい大切なのが、胃腸や陽気を傷つける行動を避けることです。特に、ネットで流行している一部のダイエット法――大量の水を飲む、生野菜ばかり食べる、スムージーを飲むといった方法は、陽気が不足している人には逆効果になることがあります。

1.朝食を抜く

朝、太陽が昇ると自然界の陽気が高まり、人体も陽気を高めるためのエネルギーを必要とします。朝食を抜く習慣が続くと、体のエネルギーが不足します。朝食はできるだけ温かいものを摂り、冷たいものは避けましょう。

2.朝に大量の水や冷たい飲み物を飲む

起床後すぐに250~500ccの水を飲むと、便通が良くなる、血液が薄まり血栓を防ぐ、と言われることがありますが、臨床的には半数以上の人にとって適していません。

簡単なセルフチェックがあります。朝、空腹時に250ccの水を飲む習慣を1~2週間続けてみて、以前よりお腹が張りやすくなった場合、それは陽虚の傾向があり、空腹時に多くの水を飲くのが合っていないサインです。水は陰の性質を持つため、朝に大量に飲むと胃腸の陽気を弱めてしまいます。陽虚の人は腸の動きも弱く、高齢者では、朝に水を飲みすぎることで逆に便秘になることもあります。

朝に適した水の量は人それぞれですが、一般的には朝食前に50cc程度が目安です。早朝に運動する習慣がある人は、やや多めでも構いません。

また、朝に冷たい野菜や果物のジュースを飲むと、陽気を一気に下げてしまいます。野菜を軽く湯通しし、生姜やナッツを加えたとしても、大量の液体は胃腸の負担になります。2~3週間続けてみて、頭がすっきりし体調が良ければ適応できていますが、腹部膨満や下痢になった場合は中止しましょう。

3.塩分を極端に控えすぎる

塩分の摂り過ぎが高血圧につながることを心配する人は多いですが、毎日、茹で野菜にほとんど塩を使わず、1日の塩分摂取量が1g未満という人には、陽虚の傾向がよく見られます。塩分が不足すると心臓の働きが弱まり、全身のエネルギーが低下します。

4.生野菜を食べ過ぎる

中医学では、食べ物には「寒・熱・温・涼」という性質があると考えます。寒涼性の食材は体を冷やしますが、摂り過ぎると陽気を傷つけます。野菜の多くは寒性寄りで、生で食べると、オリーブオイルやナッツを合わせても体を冷やす作用は強くなります。さっと火を通すことで、その冷えの性質を和らげることができます。
 

陽気を補う食べ物

体を温める性質をもつ食材を意識して摂ることで、胃腸を養い、陽気を補うことができます。

1.ニラ:性質は温性で、腎の陽気を補い、体を冷えから守る働きがあります。また、豊富な食物繊維が腸の動きを促し、便秘予防にも役立ちます。

注意点:体に熱がこもりやすい体質の人は控えましょう。また、授乳中の産婦は、母乳の分泌が減ったり止まったりする可能性があるため、避けたほうがよいとされています。

2.ショウガ:体の陽気を高め、代謝を促進します。

  • 生姜:「表」に作用し、体の表面を温めて発汗を促します。風邪のひき始めなど、外から冷えが侵入したときに向いています。
     
  • 乾姜(かんきょう):「裏」を温める作用があり、主に胃腸を温めます。胃腸が冷えやすい人に適しています。

注意点:陽気を補いたい場合は、乾姜を中心に使うのがおすすめです。生姜を摂り過ぎると、体力が弱い人では陽気が外へ逃げてしまい、かえって体が虚してしまうことがあります。実際に、3か月間まじめに生姜湯を飲み続けた結果、体重が3kg減ったものの、非常に体が弱り、体重が戻りにくくなった例もあります。

3.かぼちゃ:性質は温性で、脾の陽気を温め、気血を養うのに適した食材です。かぼちゃの種には亜鉛が豊富に含まれ、男性の前立腺を守る働きがあります。

4.シナモンパウダー:主に腎の陽気を補う作用があり、料理やコーヒーに少量加えるだけで、手軽に取り入れられる食養生です。
 

陽気を高める生活習慣

食事だけでなく、日光浴や運動などの生活習慣も、体のエネルギーを高めるうえで非常に重要です。

1.日光を浴びる

天人合一の考え方:人の体と自然界のエネルギーには、陰と陽があります。体では背中が「陽」、お腹が「陰」にあたります。一日の中では、正午前が陽、正午以降が陰です。日光浴をする際は、午前中は背中を太陽に向け、午後は正面から太陽を浴びることで、体と自然のエネルギーを調和させ、陽気を高めます。

簡易版:午前11時から12時の間に、5~10分ほど背中に日光を当てるだけでも、陽気を高める最も簡単な方法になります。

研究では、日光浴とビタミンDの補給を習慣にすることで、メタボリックシンドロームが改善され、特に脂質異常症や高血圧の改善につながることが示されています。また、動物実験では、日光浴の効果はビタミンDの増加だけでなく、一酸化窒素の調節にも関係することが分かっています。一酸化窒素は、全身の臓器や機能に関わる非常に重要な情報伝達物質です。

2.運動

  • ウォーキング:毎日歩くことが基本です。歩行は心臓への負担が少ない、最も穏やかな運動で、高齢者や体力の弱い人にも適しています。研究によると、高齢女性でも、週に1~2回、4,000歩程度歩くだけで、心血管疾患の予防効果が期待できます。
     
  • つま先立ち:座っているときに、つま先立ちの動作を繰り返すことで、ふくらはぎのヒラメ筋が鍛えられ、代謝の向上につながります。
     
  • スクワット:スクワットは心血管の健康に良く、血流が改善されることで、陽気を高める助けになります。

3.補助的なケア方法

  • 足湯:体の血行を促し、全身の巡りを良くします。
     
  • 艾灸:乾燥させたヨモギを燃やしてツボを温める方法で、陽気を高めるのに適しています。
     
  • 脚を縛って眠る:これは日本の礒谷療法の中核となる方法の一つです。足首の上、膝の上、膝の下にそれぞれバンドを巻き、両脚をそろえて眠ります。腎気や腎陽を補い、心臓の陽気を高める効果があるとされています。多くの人が、手足の冷えが改善し、睡眠の質が良くなったと感じています。
     
     (翻訳編集 華山律)
張瑛瑜