カール・シュピッツヴェーク作『貧しき詩人』(1839年)。縦約36センチ、横約44センチ。1989年9月3日に美術泥棒によって盗まれ、いまだ発見されていません。(パブリックドメイン)

世界初の「失われたものの博物館」

アレクサンドリア図書館の焼失、アイルランドの王冠宝石の消失、琥珀の間の喪失──。歴史の中で、文化的に極めて重要なものが失われる瞬間は何度もあり、そのたびに私たちは少しずつ文化的な豊かさを失ってきました。

かつて存在した美しい写本や宝飾品、武器、道具の数々は、時の流れの中でどれほど多くが姿を消してしまったのでしょうか。この問いは、何世紀にもわたって考古学者や博物館の学芸員たちを悩ませてきました。そしてこのテーマは、人々の想像力を刺激し、『インディ・ジョーンズ』や『ナショナル・トレジャー』のような冒険物語を生み出す原動力にもなりました。

ユネスコは、こうした文化財の損失や不正取引に対する意識を高めることを目的に、新たな試みとして「盗まれた文化財のバーチャル博物館」を立ち上げました。絵画、陶器、楽器など多様な分野の盗難品を紹介するこの博物館では、誰でも無料で臨場感あるデジタル空間を「歩いて」楽しむことができます。展示されているのは、すべて行方不明となった文化財です。

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