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水を飲みすぎると体に悪い? 中医師が教える正しい水分補給法

台湾で「どれだけ水を飲めるか」を競う「水飲み大会」が行われ、参加した中学生はわずか30分で6,000mlもの水を飲み干しました。ところが帰宅後、めまいや嘔吐、けいれんなどの症状を起こして救急搬送され、一時は命の危険にもさらされました。これは典型的な「急性水中毒」と呼ばれる症例です。

水は生命維持に不可欠ですが、過剰な摂取はかえって健康を害し、命に関わることもあります。顔がむくむ、手足が冷えるといった症状を「体質」や「天候」のせいにしていませんか? 実は「水の飲み方」に原因があるかもしれません。

水の飲みすぎは「湿気」を生む

台湾の中医師・胡乃文氏によると、夏になると大きな水筒を持ち歩き、絶えず水をがぶ飲みする人が多いものの、腎臓の処理能力が追いつかず、水分が体内に滞ってしまうと、手足のむくみや頻尿、夜間の不眠を引き起こし、かえって睡眠の質が下がり、疲労感が増すといいます。

中医学では、水分代謝には腎の働きだけでなく、脾の力も重要だと考えます。中医学でいう「脾」は、西洋医学でいう「脾臓」というイメージではなく、胃や腸、膵臓を含むエネルギー循環システムで、栄養吸収と水分代謝を担う臓器群を指します。その機能が弱い人が水を摂りすぎると、体内に「湿気(しっき)」が生じます。こうした人は、顔がむくみやすく、手足が冷え、水をたくさん飲んでも喉の渇きが取れにくいという特徴があります。
 

一日にどのくらい水を飲めばいい?

では、一日にどれくらい水を飲むのがよいのでしょうか。胡医師は「一律の基準はありません」と言います。水分量は体質・気候・生活習慣によって柔軟に調整すべきもので、決まった数値を追うよりも「自分の体と相談すること」が大切です。

人体にはもともと「水分アラーム装置」ともいえる「圧受容体」があり、血液の濃度を常に感知しています。血液が濃くなると、脳が「のどが渇いた」と信号を出し、そのときに水を飲むのが自然で理想的です。

また、日常生活も水分の必要量に影響します。冷房の効いた部屋に長時間いるか、運動量が多いか、汗をかくことが多いか――こうした要素によって、必要な水の量は大きく変わります。

胡医師は、体の水分状態を知る最も簡単な方法として「尿の色」を観察することを勧めています。

  • 尿が透明で無色:飲みすぎ。体がこれ以上の水分を必要としていない。
  • 淡い黄色:理想的な状態。水分バランスが良好。
  • 濃い黄色〜オレンジ色:脱水気味。早めの水分補給が必要。
  • 濃いオレンジ〜茶褐色:肝臓の代謝異常の可能性もあり、単なる水不足ではなく医療機関の受診が必要。

ただし、尿の色は食べ物にも左右されます。ドラゴンフルーツやビーツ、ビタミンB群の摂取で赤や黄色に変わることもあるため、色だけで慌てず、全体の状態を見て判断しましょう。特に朝一番の尿が濃いのは、一晩の水分不足によるもので、異常ではありません。その後に適度な水を飲めば、自然に薄くなります。

体質による飲水量の違い

胡医師によれば、体質によっても適量は異なります。

  • 燥熱体質:汗をかきやすく、口が渇きやすいタイプの人は、水分を多めに摂るのが良いとされています。
     
  • 虚寒体質:手足が冷えやすく、下痢しやすい人は飲みすぎに注意が必要です。がぶ飲みすると脾腎を傷めるため、常温の水を少しずつゆっくり飲むのが良いとされています。

一方で、「水をたくさん飲めば便秘が治る」と思っている人もいますが、これも体質によります。

中医師・呉国斌氏は、虚寒体質で便秘の人が朝の空腹時に大量の水を飲むと、かえって逆効果をもたらすと指摘しています。

ある患者は便秘を改善しようと、毎朝300〜500mlの水を飲んでいましたが、便秘は治らず、湿疹や胃腸の張りが悪化していました。湿疹は「湿気」が多い人に典型的に見られる症状の一つです。

呉医師は「朝食前は100ml程度で十分」と助言し、1週間後には便秘が改善したといいます。
 

朝の「一杯目の水」はどう飲む?

胡医師は、朝の「最初の一杯の水」を非常に重要視し、「心血管疾患の患者にとって命を救う水」とまで呼んでいます。

睡眠中は軽度の脱水状態になり、血液の粘度が高まり、血圧も上昇するため、起床直後は心血管疾患のリスクが最も高い時間帯です。

胡医師は「朝起きたら、200ml程度のぬるま湯を、少しずつゆっくり飲んでください。一気に飲み干すのは厳禁です。急に大量の水を飲むと、血液が急激に薄まり、心臓や腎臓に負担をかけます」と説明します。

朝の一杯目の水は、夜の間に失われた水分を補うだけでなく、消化器系を刺激して活動を始めさせ、排便を促します。体が軽くなり、気分もすっきりして、一日を快調にスタートできます。

体内の水分が不足すると、頭の働きが鈍くなり、気分も落ち込みやすくなります。研究によると、体重のわずか2%の水分を失うだけで、注意力や認知力、運動調整能力が低下するといわれています。
 

水分補給を忘れがちな三つの場面

朝の一杯目の水以外に、胡医師は次の3つのタイミングでも積極的に水を摂るよう勧めています。

  1. 午後2〜3時の眠気対策:サラリーマンが午後2〜3時ごろにあくびが出るのは、単なる疲労ではなく、軽い脱水が原因のことも多いです。コーヒーではなく水を一杯飲むと、頭がすっきりして集中力が戻ります。
     
  2. 運動・温泉・入浴後:運動や温泉、入浴などで汗をかいたあとは、体温調節のためにもすぐに水分を補いましょう。放置すると熱中症の危険があります。
     
  3. 飛行機に乗るとき:機内の湿度はわずか20%ほどと非常に乾燥しています。肌や喉の乾燥を防ぐためにも、こまめな水分補給が大切です。

(翻訳編集 華山律)

林一山