鶏卵は人々の生活に欠かせない重要な食材であり、多くの人が子どもの頃から食べてきました。卵の調理法も実に多彩です。健康志向が高まる中、全卵・卵白・卵黄が人体に与える影響については、栄養士や一般の人々の間でしばしば話題になります。
多くの人は、卵黄のコレステロール含有量が高いことから避けるようになり、市場には卵白だけの商品も増えてきました。では、全卵・卵白・卵黄は人体にどのような利点や欠点をもたらすのでしょうか。栄養士の意見を見てみましょう。
登録栄養士テレサ・シャンク氏は、「1990年代から2000年代初頭を振り返ると、人々は低脂肪に非常に関心を寄せていました。そのため、脂肪分の少ない卵白の人気が高まったのです」とアメリカの人気週末副刊誌『パレード(PARADE)』で語っています。
しかし彼女は付け加えます。現在では、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の健康効果が認識されつつあります。全卵にはこれらの脂肪と飽和脂肪が含まれており、これが「卵白だけの方が全卵より健康的なのか」という混乱を招く理由の一つです。
卵黄と卵白の栄養構成
登録栄養士バネッサ・リセット氏は『パレード』で、卵の各部分にはそれぞれ栄養価があるものの、卵白と卵黄の栄養成分は大きく異なると述べています。
「卵白の主な利点は、リーンプロテイン(脂肪分の少ないタンパク質)を含んでいることです」と彼女は言います。
卵白1回分にはおよそ3gのタンパク質が含まれています。
一方、全卵1個を食べると18gのタンパク質が摂取できます。リセット氏によれば、これが全卵を食べることで満腹感が得られる理由の一つです。さらに彼女は、卵白にはリーンプロテイン以外の栄養はあまりなく、大部分の栄養は卵黄に含まれていると説明します。
では、卵黄はどのような栄養をもたらすのでしょうか。
リセット氏とシャンク氏は、卵黄の栄養的利点として、タンパク質、鉄、ビタミンA、セレン(免疫機能をサポート)、リボフラビン(慢性炎症予防に関わるビタミンB群)、ルテイン、カロテノイド、ゼアキサンチン(いずれも炎症軽減や眼の健康維持に関与)、葉酸(脳の健康に重要なビタミンB群)を挙げています。
「卵黄は数少ないビタミンD含有食品の一つでもあります」とリセット氏は言います。
ビタミンDは免疫機能を支える上で重要な栄養素です。
一価不飽和脂肪
卵の脂肪はほとんどが卵黄に含まれており、その主成分は一価不飽和脂肪酸です。特に、オリーブオイルの主要成分であるオレイン酸が半分以上を占めています。
両氏によれば、卵黄は一価不飽和脂肪の良い供給源であり、心臓病リスクの低減を含む多くの健康効果が期待できます。
また、卵黄には多価不飽和脂肪や飽和脂肪も含まれていますが、飽和脂肪が心臓病リスクを高めるという明確な証拠は、21件の研究をまとめたメタ分析でも示されませんでした。
このメタ分析では、飽和脂肪の摂取と冠動脈性心疾患、脳卒中、心血管疾患リスクとの関係を調査した前向き疫学研究を総括しましたが、CHDやCVDリスクを高める重要な証拠は得られませんでした。今後は、飽和脂肪の代替栄養素が心血管疾患リスクに与える影響を明らかにするため、さらなるデータが必要とされています。
「卵は非常に栄養価の高い食品であり、その栄養の大半は卵黄に含まれています」とシャンク氏は述べています。

卵白だけの方が健康的?
両氏によれば、ほとんどの人にとっては卵白だけよりも全卵を食べる方が、体全体に有益です。免疫系、脳、心臓など、全身の健康をサポートするからです。
「全卵を食べることで、卵白にはほとんど含まれない脂肪やタンパク質を摂取でき、より多くのエネルギーと満腹感が得られます」とリセット氏は説明します。「また、卵黄に含まれる葉酸が脳の栄養になります」
科学的研究でも、葉酸は高齢者の脳機能や気分改善に役立つことが示されています。ハーバード大学の栄養学者で精神科医、脳の健康研究者であるウマ・ナイドゥ氏によると、葉酸はビタミンB9の天然型で赤血球形成に重要です。欠乏すると神経系の疾患を引き起こす可能性があり、葉酸の状態を改善することは認知機能に良い影響を与え、神経伝達物質の生成にも不可欠です。
『エビデンス・ベースド・メンタル・ヘルス(Evidence Based Mental Health)』誌オンライン版に掲載された研究では、血中の葉酸(ビタミンB9)濃度が低いことは、高齢者の認知症発症や全死亡リスクの増加と関連している可能性が示されました。

卵黄とコレステロール問題
卵黄で最も議論される点はコレステロール含有量です。100gの卵黄には約1510mgのコレステロールが含まれています。しかし、科学的証拠によれば、適量の卵黄摂取は血清コレステロール値に顕著な影響を与えず、心血管疾患などの危険因子にもなりません。一般的な人であれば、1日1個の卵摂取は心血管疾患リスクと関係しないとされています。
「卵は血糖値の安定や炎症抑制に役立ちます」とシャンク氏は述べます。「高コレステロールは炎症の直接的な結果であるため、これは重要です」
卵黄にはレシチンが豊富に含まれており、これは血中コレステロールの調整作用を持ちます。つまり、卵黄はコレステロールを多く含む一方で、自らコレステロールを調整する働きも備えているのです。
高コレステロールの人が特に注意すべきなのは卵黄ではなく、豚の脳、イカ、脂身の多い肉、動物の内臓などです。豚や牛の脳のコレステロール含有量は卵黄の約2倍に達します。
したがって、重要なのは卵黄の摂取量を適切に管理することであり、完全に避けることではありません。

卵の食べ方の工夫
「毎朝卵を4個、ベーコン、チーズ、テキサストーストと一緒に食べているなら、それはあまり健康的とは言えません」とリセット氏は言います。代わりに、卵に不足している食物繊維を含む食品と組み合わせることを推奨します。食物繊維は毎食補うべき重要な栄養素です。
そのためには、料理に野菜を加えたり、卵にフラックスシードを振りかけたりするのが良いでしょう。
有名栄養士ナミ・アガルワル氏も、インスタグラムで卵黄の利点を紹介し、卵を使った朝食レシピを投稿しています。
彼女は、鉄分とビタミンが豊富な卵に、ビタミンC源で抗炎症作用のあるニンニクやトマトを組み合わせています。また、「目玉焼き+アボカド」は非常に良い組み合わせだとも述べています。
(翻訳編集 井田千景)
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