孫毅氏が、自ら書いたSOSの手紙を手にしている。手紙は世界中を巡り、孫毅の元に届いた。(Courtesy Flying Cloud Productions)

安さの代償 中国製品の裏に潜む強制労働

2012年、米オレゴン州の女性がKマートで購入したハロウィーンの装飾品の箱を開けたところ、中から一枚の紙切れが現れた。たどたどしい英語で書かれたその手紙には、こう記されていた。もしあなたがこの製品をたまたま購入したのなら、どうかこの手紙を世界人権機構に転送してください。そこには、長時間労働、暴力、そして過酷な中国の労働収容所での実態が綴られていた。

この手紙を書いたのは、孫毅(スン・イー)というエンジニアであり、夫でもある男性だった。孫さんは、中国共産党により非合法とされた精神修養法「法輪功」の修煉を理由に投獄されていた。

私はこの物語を、ドキュメンタリー映画『馬三家からの手紙』で伝えた。今でも彼の穏やかで静かな表情を覚えている。その内面には、鋼のような確固たる意志があった。彼の書く一行一行には、恐怖と希望が交錯していた。孫さんは、その手紙を外部に出すことで自らの命を危険にさらした。自分が永遠に自由になれないかもしれないと知りながらも、彼は真実を知れば、人々は関心を持ってくれる、どこかの誰かが、きっと行動してくれると信じていた。

▶ 続きを読む
関連記事
2026年上半期、中共軍の台湾海峡・西太平洋での活動は大幅減。背景には指揮系統の混乱、装備・維持管理の課題、日米の抑止強化があり、対外行動は全体に抑制的となっている
7月1日、中国本土では対外投資に関する新規則(国務院令第837号)が正式に施行される。この中では、個人による対外投資への規制が新たに加えられ、かつてないほど厳格な内容となっている。
欧州経済の低迷を機に、ケインズ主義の「節約のパラドックス」を痛烈に批判する論評。過剰消費と政府債務が招いたゾンビ国家化を指摘し、真の経済成長には安易な金融緩和ではなく、地道な「貯蓄と投資」こそが必要だと説く
トランプ氏によるイラン核施設への軍事攻撃を支持する政治評論。核開発の手遅れになる前の「行動」こそが、危機を回避し世界をより安全にしたと論じる
少子化と未婚化が進む日本社会の現状をデータから読み解き、個人の自由や多様性の裏で薄れゆく「家族」という根源的な絆の重要性と、現代人が抱える深刻な孤独の本質を東洋の知恵を交えて問い直す論説