体質によって異なる花粉症の症状
3月、4月は、日本では花粉症がピークを迎える時期です。その悩みを解消する最良の方法は、五臓のバランスを整え、体質を改善することです。
中医学では、花粉症の主な原因は春の五行が「木」に属し、木の気が強くなること(特徴として風が多く、風が強い)にあると考えます。これにより、脾(土)、肺(金)、腎(水)の働きが抑えられ、バランスが乱れやすくなります。さらに、日本は地理的に東に位置し、東は五行では「木」に属するため、日本の春は風が強く、大量の花粉を運ぶだけでなく、寒さや湿気、熱などの影響も受けやすくなります。特に、風により運ばれた花粉が毛穴に入り込んだり、肺に吸い込まれたり、口や鼻などの呼吸器に侵入すると、すぐに症状が現れます。体質によって症状が異なるため、それぞれに適したケアが必要になります。
一般的に、花粉症の体質には以下の6つのタイプがあります。
- 肺気虚(はいききょ):アレルギーを起こしやすく、鼻炎を繰り返す
- 脾胃虚寒(ひいきょかん):体に湿気が溜まりやすく、消化不良になりやすい(寒湿体質)
- 湿熱内蕴(しつねつないうん):鼻詰まり、黄色い鼻水、口の苦み、軟便
- 陰虚火旺(いんきょかおう):鼻のかゆみ、喉の乾燥、寝汗
- 上熱下寒(じょうねつげかん):上半身はほてり口が渇くが、下半身は冷えやすい
- 腸燥便秘(ちょうそうべんぴ):体が乾燥しやすく、口や喉が渇き、便が硬くなりやすい
このように、体質によって花粉症の症状も異なるため、調整方法も変わります。中医学では、体質に応じて五臓(肝・脾・肺・腎)のバランスを整えることが重要とされています。花粉症は、春に「木」の気(風の影響)が強くなり、脾(土)・肺(金)・腎(水)の機能が乱れることで起こると考えられます。そのため、肝(木)の影響を抑えつつ、脾・肺・腎を強化して、体内のバランスを取り戻すことが治療の基本となります。
五行のバランスを整えることで、体質が徐々に改善され、花粉症を引き起こす体内環境を根本から正していきますが、ただしこれは長期的な調整が必要となります。
具体的な改善方法としては、肺を強くし、熱を鎮めます。脾と胃の働きを高め、湿気を取り除き、腎を潤し、陰を補います。風の影響を抑え、肝の火を鎮めます。
こうした6つの異なる体質に対応するため、私たちは杜仲(とちゅう)を主成分とした漢方茶を提案します。
中医学では「根本を強くする」ことが大切とされ、特に腎は「生命の源」と考えられています。冬に腎を養生せず、夜更かしが続くと腎が弱まり、水分が不足しがちになります。その結果、肝(木)に十分な水が供給されず、春になると肝の火が強くなりすぎてしまうのです。このような体質の乱れを整えるため、杜仲茶を活用します。杜仲には腎陽を温めて補う働きがあり、特に冷え性(手足の冷えなど)を改善するのに適しています。
さらに、温性(体を温める作用)はあるものの、過度に熱を持たないため、バランスの取れた調整が可能です。また、陰を補う枸杞(くこ)や黒豆を加えることで、陰陽のバランスを整え、体質を根本から改善することができます。腎水が肝(木)を潤すことで、肝の気が安定し、余分な火が自然に鎮まります。こうして、五臓の働きが調和していきます。
これらの漢方茶の材料は、スーパーや一般的な薬局でも購入できるため、手軽に取り入れることができます。
6種類杜仲茶で花粉症を改善
1. 肺気虚の改善(アレルギーを起こしやすく、鼻炎を繰り返す人向け)
○おすすめの漢方茶:
杜仲葉・菊花・枸杞茶
○材料(1日分)
- 杜仲葉(杜仲茶)3g … 腎を補い、体を温め、筋肉や骨を強くし、気力を高めます
- 菊花(杭菊または甘菊)2g … 肝の働きを整え、熱を鎮め、目の疲れを和らげます
- 枸杞 5g … 肝と腎を養い、血を補い、目の健康を促す。肝が腎の潤いを受けることで、体のバランスを整えやすくなります
- 生姜スライス(お好みで)2枚 … 肺を温め、寒さや湿気を取り除き、胃腸の働きを助けます
- 熱湯 300〜500ml
○作り方 & 飲み方
1. 材料をカップやポットに入れ、熱湯を注ぐ。10〜15分蒸らします
2. 温かいうちに飲みます。1日1〜2回、食後に飲むのが理想的です
○効果
- 肺の働きを高め、免疫力を強化します。
- 花粉症の症状を和らげ、再発を防ぐことが期待されます。
○注意点
- 体に熱がこもりやすい人や、のぼせやすい人は長期間の飲用を避けましょう
- 高血圧の人は、枸杞の量を控えめにしましょう

2. 脾胃虚寒の改善(湿気が溜まりやすく、冷えやすい体質の方に)
○おすすめの漢方茶:
杜仲葉・山薬・茯苓茶
○材料(1日分)
- 杜仲葉 3g …腎を補い、体を温め、筋肉や骨を強くします。
- 山薬(乾燥山薬スライス)5g … 胃腸を整え、肺を助け、腎の働きを安定させます。
- 茯苓 5g … 胃腸の働きを良くし、体内の余分な水分を排出します。
- なつめ(お好みで)1粒 … 胃腸を補い、肺の働きを助け、血を養い、気持ちを落ち着かせます。
- 熱湯 300〜500ml
○作り方 & 飲み方
1. 杜仲、山薬、茯苓を鍋に入れ、10分ほど煮ます。火を止めて5分蒸らします。
2.茶こしで濾し、温かいうちに飲みます。
★1日1回、午後に飲むのがおすすめです。
○効果
- 胃腸と腎を補い、体を温めます。
- 余分な水分を排出し、アレルギー症状を和らげます。
- 鼻水を減らし、消化機能を高めます。
○注意点
- 体内に熱がこもりやすい方(舌苔が黄色くベタつく、口の苦みや口臭がある方)は、飲みすぎないようにしてください。症状が悪化する可能性があります。
- 糖尿病の方は、なつめの量を控えめにし、血糖値の急な変動を避けてください。
3. 湿熱内蕴の改善(鼻づまり、黄色い鼻水、口の苦み、便が粘りやすい方に)
○おすすめの漢方茶:
杜仲葉・薄荷(ハッカ)・桑葉茶
○材料(1日分)
- 杜仲葉 3g — 腎の働きを助け、陽気を高め、筋肉や骨を強くします。
- 桑葉 3g — 肝の働きを整え、肺の熱を冷まし、肺を潤して咳を和らげます。
- 薄荷(後入れ)2g — 頭をすっきりさせ、肝と肺にこもった熱を発散させます。
- 黄菊花 2g — 肝の熱を抑え、目の疲れを和らげます。
- 熱湯 300〜500ml
○作り方 & 飲み方
1. 杜仲、桑葉、菊花をカップやポットに入れ、熱湯を注ぎ、10〜15分蒸らします。
2. 薄荷を最後の2分で加え、香りを引き出しつつ、冷えすぎないようにします。
★1日1〜2回、日中に飲むのがおすすめです。
○効果
- 体の余分な熱を鎮め、湿気を取り除きます。
- 体内の熱のこもりを防ぎ、解毒を助けます。
- 鼻づまりや黄色い鼻水を和らげます。
○注意点
- 胃腸が冷えやすい方は、長期間の飲用を避けてください。(薄荷には体を冷やす作用があり、胃腸を弱める可能性があります。)
- 低血圧の方や妊婦の方は、薄荷の使用を控えめにしてください。(血圧が下がったり、胎児に影響を与える可能性があります。)

4. 陰虚火旺の改善(鼻のかゆみ、喉の渇き、寝汗が気になる方に)
○おすすめの漢方茶:
杜仲・桑葉・決明子茶
○材料(1日分)
- 杜仲葉 3g …腎を補い、陽気を助け、筋肉や骨を強くします。
- 桑葉 3g … 風を鎮め、熱を冷まし、肺を潤して咳を和らげます。
- 決明子(軽く炒ったもの)5g … 肝の火を鎮め、目の疲れを和らげ、腸を潤して便通を促します。
- 枸杞 5g … 肝と腎を養い、血を補い、目の健康を促します。
- 熱湯 300〜500ml
○作り方・飲み方
- すべての材料をカップやポットに入れ、熱湯を注ぎ、10〜15分蒸らします。(お湯を継ぎ足して再度抽出も可能です。)
★1日1〜2回、食後に飲むのがおすすめです。
○効果
- 体の潤いを補い、熱を鎮めます。
- 鼻のかゆみや喉の渇きを和らげます。
○注意点
- 妊娠中の方は決明子の使用を控えてください。(子宮の収縮を促す可能性があります。)
- 下痢をしやすい方は、決明子の長期使用を避けてください。(腸を潤す作用が強いためです。)

5. 上熱下寒の改善(上半身は熱っぽく、下半身が冷えやすい方に)
○おすすめの漢方茶:
杜仲・黒豆・なつめ茶
○材料(1日分)
- 杜仲葉 3g …腎を補い、陽気を助け、筋肉や骨を強くします。
- 黒豆(炒ったもの)10g …腎を補い、陰を養い、肝の気を穏やかにし、乾燥を防ぎます。また、体内の水分代謝を促します。
- なつめ(種を取ったもの)2粒 …気を補い、血を養い、心を落ち着かせます。
- 枸杞 5g … 肝と腎を養い、血を補い、目の健康を促します。
- 熱湯 300〜500ml
○作り方・飲み方
1. 杜仲、黒豆、なつめを鍋に入れ、10分煮ます。
2. 火を止めて5分蒸らし、茶こしで濾し、温かいうちに飲みます。
★1日1回、午後または夜に飲むのがおすすめです。
○効果
- 腎を温め、陽気を助けます。
- 陰陽のバランスを整え、体内の冷えと熱の偏りを軽減します。
- 体を温めながらアレルギー反応を和らげます。
○注意点
- 体内に熱や湿気がこもりやすい方は、長期間の飲用を避けてください。
- 血糖値が高い方は、なつめの量を控えめにしてください。(血糖値が上昇しやすいためです。)
6. 腸燥便秘の改善(口や舌の渇き、便が硬くなりやすい方に)
○おすすめの漢方茶:
杜仲・黒ごま・桑葚茶
○材料(1日分)
- 杜仲葉 3g …腎を補い、陽気を助け、筋肉や骨を強くします。
- 黒ごま(炒ったもの)5g …腸を潤し、便秘を改善し、肝と腎を養います。
- 桑葚(乾燥した桑の実)5g … 体の潤いを補い、血を養い、腸を潤して便通を促します。
- 熱湯 300〜500ml
○作り方・飲み方
1. 杜仲、桑葚を鍋に入れ、10分煮ます。火を止めて5分蒸らします。
2. 茶こしで濾し、温かいうちに飲みます。
★1日1回、午後または夜に飲むのがおすすめです。
○効果
- 腸を潤し、便秘を改善します。
- 皮膚や鼻の乾燥を和らげます。
○注意点
- 胃腸が弱く、軟便や下痢をしやすい方は、黒ごまの摂取に注意してください。(腸を潤す作用が強いためです。)
- 糖尿病の方は、桑葚の量を控えめにしてください。(血糖値が上がりやすいためです。)
全体の注意事項
これらの漢方茶は、体質改善を目的としています。花粉症の症状が重い場合は、専門の医師に相談し、適切な治療を受けてください。また、現在服用中の薬がある方は、医師の指導のもとでお飲みください。また、一度に大量に摂取するのではなく、適量を継続的に飲むことが大切です。
(翻訳編集 華山律)
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