コロナ発生から5年 中国で新たな呼吸器ウイルス「hMPV」が拡大

新型コロナウイルスが初めて出現してから5年、新たな呼吸器ウイルス「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」の感染が中国国内で広がり、多くの人々に5年前のデジャヴ(初めて経験することなのに親しみや懐かしさを感じること)を感じさせている。この事態は新たなパンデミック発生への懸念を引き起こし、周辺国や地域、さらには海外メディアでも関心が高まっている。

hMPVは急性呼吸器感染症を引き起こすウイルスであり、一般的な症状はインフルエンザに似ている。咳、発熱、鼻詰まり、呼吸困難といった上気道感染症状が主だが、重症化すると気管支炎、肺炎、喘息、耳感染症などの合併症を引き起こすことがある。特に5歳未満の子供、65歳以上の高齢者、免疫力の低い人々は重症化リスクが高い。

最近、中国国内の病院が患者で溢れている様子を捉えた写真や報道がソーシャルメディアで広まり、hMPVが新たな大流行を引き起こすのではないかとの不安が広がっている。

周辺国と地域の反応

中国共産党(中共)政府や世界保健機関(WHO)は、hMPVを公衆衛生上の緊急事態として宣言していないが、このウイルスに対する懸念は周辺国や地域に拡大している。最近では、香港やマレーシアなど、中国本土以外でも複数の感染例が報告された。

台湾疾病管理センターは、hMPVが子供、高齢者、免疫力の低い人々にとって高リスクだと警告している。

カンボジアの感染症対策部門も、hMPVが新型コロナやインフルエンザに症状が類似しており、注意が必要だと警告を発している。

インド衛生省は4日、中国の状況を受け、「呼吸器感染症に対処するため十分な準備を進めている」と述べた。

インド衛生サービス局のアトゥル・ゴエル博士は3日、インド国内メディアの取材に対し、「現在、中国でhMPVが流行しているとの情報が広まっているが、インド国内の呼吸器感染症のデータを分析した結果、2024年12月時点で目立った増加は見られない。また、大量の感染例を報告する機関も存在しない。このため現時点では恐慌に陥る必要はない」と語った。

WHOは中国共産党(中共)政府に対し、新型コロナの発生時に見られた情報共有の遅れを踏まえ、hMPVに関する透明性を求めている。しかし、中共政府は「hMPVは冬季に見られる一般的な呼吸器感染症であり、特別な措置を講じる必要はない」との立場を取っている。

ニュー・ストレーツ・タイムズ(New Straits Times)によると、マレーシア保健省は6日、感染拡大を防ぐ措置として国内外の状況を引き続き監視するとの声明を発表した。

パキスタンのSamaa TVによると、同国の衛生サービス部は国家衛生研究所(NIH)にhMPVの監視強化を指示したと報じられている。また、衛生官や医療専門家を招いたオンライン会議を開催し、現状を評価し対応策を策定する予定だ。

hMPVの感染拡大は国際的にも注目されている。カナダのトロント・スター(Toronto Star)、アメリカのニューズウィーク(Newsweek)、イギリスのインディペンデント(The Independent)、さらにはインド、マレーシア、パキスタンのメディアが、このウイルスについて報じた。台湾メディアも関連報道を行っている。

コロナの経験とhMPVへの懸念

5年前、中国武漢でコロナの感染が初めて確認された際、中共は初期対応で情報を隠ぺいした。この結果、ウイルスは海外にも拡大。世界的大流行に発展し、多くの命が奪われた。多くの家庭が今なお、その影響から立ち直れていない。

中共はコロナの真実を国際調査チームと共有することを拒否し続けている。2024年12月31日、WHOは「コロナの起源を解明するために、中国にデータ共有とアクセス権の提供を引き続き求める」と表明した。

「これは倫理的にも科学的にも緊急の課題である。透明性、情報共有、国際的な協力がなければ、将来の流行やパンデミックを防ぎ、備えることは不可能だ」

英紙The Independentは、中国でhMPVが拡大しているが、当局はこれを「冬季の恒例行事」として軽視していると報じた。一方、SNSではマスクを着けた人々が病院に押し寄せる写真や動画が拡散されている。多くの人がコロナ初期と似た光景だと指摘している。

中共外交部の毛寧報道官は1月3日の記者会見で、冬季は北半球で呼吸器感染症が流行する季節であり、今年の感染規模と強度は昨年よりも低いとの見解を示した。しかし、海外の取材によると、実際の状況は異なるようだ。

北京東城区の薬局店主は台湾中央社に対し、「今年の冬は風邪患者が例年より多い」と語り、感冒薬が品薄状態であると述べた。薬局を訪れた客の中には高齢者と若者の両方が含まれており、希望する薬が在庫切れだった例もあった。

北京の市民である王さんは中央社の記者に「今年の冬は昨年よりも感冒患者が明らかに増えている」と述べた。同氏は12月30日に息子を病院に連れて行ったが、呼吸器科は患者でほぼ満員の状態だったという。同じ状況は他の病院でも見られ、息子を病院に連れて行くことがむしろ感染リスクを高めるのではないかと不安を感じたものの、治療を優先したと語った。

hMPVのリスクと治療状況

福州市疾病予防管理センターは2024年12月27日に「hMPVはインフルエンザに似ており、小児や高齢者に対して重症化のリスクが高い」とする記事を発表した。同センターによると、現在hMPVにはワクチンや特効薬がなく、治療は対症療法が中心だという。

アメリカのクリーブランドクリニックも同様の見解を示しており、「HMPVに対する抗ウイルス薬は存在せず、重症患者には入院治療が必要だ」と説明している。また、ウイルスは感染者との接触や汚染された物品(ドアノブ、スマートフォン、玩具など)を介して広がるほか、咳やくしゃみなどの飛沫感染によっても広がるという。

張婷