鼻呼吸をすることで、口呼吸に比べて18%多くの酸素を吸収

専門家が語る、口呼吸がもたらす健康リスク

無意識のうちに健康を損なっていませんか?

呼吸という単純な行為が、睡眠の質を乱したり、身体の発育を阻害したりすることで、あなたの健康を密かに損ねているかもしれません。しかし、その驚くべき解決策は、の先にあるかもしれません。

 

口呼吸がそんなに悪いの?

鼻は嗅覚と呼吸のために、口は会話や味覚、食事のために設計されています。

家族歯科医で睡眠医学の専門家であるマーク・バーヘンヌ医師によると、体の各部分が本来の役割を超えて機能する場合に問題が発生します。口で呼吸すると、鼻呼吸に比べて空気の量が多くなり、気道が閉塞しやすくなるそうです。

口呼吸は、気道が閉塞しやすくなる(Shutterstock)

 

口呼吸は歯周病や虫歯の最も一般的な原因の一つでもあります。口の中の歯茎や柔らかい組織にダメージを与え、口腔内の細菌の自然なバランスを乱すことがあります。

子どもたちにおいても、口呼吸は異常な顔の発達や成長、そして睡眠の質の低下と関連しています。さらに、口呼吸は学業成績や血圧に影響を与え、注意欠如・多動性障害ADHDは、発達障害の一種で、不注意、多動性、衝動性が主な特徴の神経発達障害)に似た症状を引き起こし、喘息を悪化させることもあります。

「口呼吸は、短く浅い上胸部の呼吸を引き起こし、心身にストレス反応を誘発します」と、南アフリカ・ヨハネスブルグの統合医療医であり、呼吸法の専門家でもあるプリヤル・モディ医師は『The Epoch Times』のインタビューで述べています。

その他の口呼吸の影響として、口臭、虫歯、歯周病、喉の炎症、感染症、口の乾燥、声のかすれ、呼吸の疲労などが挙げられます。モディ医師は、口呼吸は睡眠不足や集中力の低下、記憶力の低下、気分の変動、代謝の乱れ、いびき、疲労感、脳の霧、血圧上昇、慢性的なストレスや不安とも関連していると指摘しています。

口呼吸は睡眠不足や集中力の低下、記憶力の低下などにも関連しているとされている(Shutterstock)

 

さらに、口呼吸がより一般的になっている背景には、ストレスの多い生活習慣や不適切な食事、肥満、鼻づまり、鼻中隔の湾曲、鼻ポリープ、肥大した鼻甲介(びこうかい、鼻腔内に存在する薄い骨の板状のでっぱり)や扁桃腺などの構造的な異常が関係していると、モディ医師は説明しています。

 

鼻呼吸のメリット

鼻呼吸は、空気が肺に到達する前に徹底的な浄化プロセスを経ることができるため、体に良い影響を与えます。鼻の中にある毛や繊毛、空洞、鼻甲介を通ることで、空気はろ過され、消毒され、加湿され、さらに浄化されます。この過程で、ホコリやアレルゲン、汚染物質が取り除かれます。また、鼻腔は吸い込んだ空気に一酸化窒素を導入します。

アレルゲンを鼻から吸い込む(Shutterstock)

 

一酸化窒素は、記憶や行動といった神経生物学的な機能に重要な役割を果たしており、血圧や炎症の調節にも役立ちます。さらに、マウスを使った研究では、一酸化窒素が肥満管理においても有益であり、体重減少を促進する可能性があることが示唆されています。動物モデルの研究では、一酸化窒素に鎮痛効果抗うつ作用の可能性があることも示されています。

科学ジャーナリストであり、『Breath: The New Science of a Lost Art』の著者であるジェームズ・ネスター氏によると、鼻呼吸は一酸化窒素の生成を6倍に増やすことができるといいます。ネスター氏は、鼻呼吸をすることで、口呼吸に比べて18%多くの酸素を吸収できるとも述べています。彼の研究は、呼吸システムの精巧なメカニズムに深く踏み込み、鼻が体の機能を最適化する重要な役割を果たしていることを明らかにしています。

ネスター氏は著書の中で、「鼻呼吸をすると、空気が浄化され、温められ、加湿され、体が吸収しやすくなります。多くの人がこれを知っています。しかし、鼻が勃起不全のような問題に関与していることや、消化を助けたり、血圧を下げるホルモンや化学物質を引き起こす役割があることを考える人は少ないでしょう。また、女性の月経周期にどう反応するか、心拍数や足の血管をどう広げるか、心拍数をどう調整するかについてもほとんど知られていません」と述べています。

鼻呼吸をすると、空気が浄化され、温められ、加湿され、体が吸収しやすくなる(Shutterstock)

 

鼻腔は抗真菌、抗ウイルス、抗菌特性も備えています。モディ医師によると、鼻呼吸は呼吸をゆっくりさせ、横隔膜をよりよく活用できるようになるため、リラックス効果があり、酸素の吸収効率も向上するといいます。

口呼吸から鼻呼吸に切り替えることで、私たちは多くの健康上のメリットを引き出し、全体的な健康を向上させることができます。

 

予想外の睡眠ハック

口にテープを貼ることで、睡眠中に鼻から十分な空気を吸うことができます。

ジェームズ・ネスター氏は自分自身で実験を行い、口にテープを貼ることで、いびきの時間が4時間からわずか10分に減少し、以前は一晩に数十回起こっていた睡眠時無呼吸も解消されたと報告しています。

2022年に『Healthcare (Basel)』に発表された研究では、2つの重要な概念が示されました。まず、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者の多くは口呼吸をしており、口呼吸がOSAの重症化を助長するという点です。次に、睡眠中に口にテープを貼ることで、睡眠時無呼吸の重症度が改善され、いびきが減少することが確認されました。

この研究に基づき、研究者たちは、口にテープを貼ることが、手術や持続的気道陽圧療法(CPAP)などのより侵襲的な治療法(身体に直接的な手を加えることで行われる治療法の総称)に頼る前に、代替治療法として有効である可能性があると示唆しています。

 

試してみるべき呼吸法

「呼吸は、パフォーマンスや健康を向上させる上で十分に活用されていないツールです」と、機能的呼吸コーチのロス・オースティン氏は『The Epoch Times』に語っています。「科学や神経系の仕組みを理解し始めると、物事をより包括的に捉え、呼吸法の影響に対する認識が深まります」と彼は言います。

さらに良いニュースとして、呼吸は訓練可能であり、その基本を理解することで、健康とパフォーマンスの向上に役立てることができると述べています。彼が推奨する、リラックスと落ち着きを促進するための呼吸法は以下の通りです。

息を長く吐く呼吸法:4秒吸って、8秒かけて吐く(繰り返す)

ケイデンス呼吸:3秒吸って、3秒止めて、6秒吐き、3秒止める(繰り返す)

478呼吸法:4秒吸って、7秒止めて、8秒吐く(繰り返す)

生理的ため息:深く息を吸い、もう一度息を吸い、ため息をついて吐き出す

深呼吸の図(Shutterstock)

 

もう一つ検討すべき呼吸法は、交互鼻呼吸です。2013年に『Journal of Clinical and Diagnostic Research』に発表された研究では、交互鼻呼吸を6週間にわたって1日15分行うことで、副交感神経系の活性化に大きな影響を与えることが示唆されています。

1800年代に書かれ、今では古典とされているジョージ・キャトリンの著書『The Breath of Life, or Mal-Respiration: And Its Effects Upon the Enjoyments & Life of Man』の最後の段落には、次のような言葉が記されています。

「そして、もし私が後世に最も重要なモットーを伝えようとするなら、それは――『口を閉じろ』だ。私はこれを世界中のすべてのベッドや育児室に刻み、その意味が誤解されることはないでしょう。そして、この教えを守れば、その重要性はすぐに実感されるに違いありません」

 

(翻訳編集 華山律)

ゼナ・ルー・ルーは、健康ジャーナリストで、健康調査ジャーナリズムの修士号を持ち、機能栄養に特化した認定健康およびウェルネスコーチです。スポーツ栄養学、マインドフルイーティング、内的家族システム、および応用ポリヴェーガル理論のトレーニングを受けています。彼女はプライベートプラクティスで働き、英国に拠点を置く健康学校の栄養教育者としても活動しています。