コンピューターで作成された、球菌や桿菌など、さまざまな形の細菌の図。 (Kateryna Kon/Shutterstock)
ストレス・がん・微生物叢の悪化 診断から始まる悪循環

がんとストレス: 医師と患者が共に管理すべき致命的な組み合わせ(中)

2つの微生物叢

今回の新たな研究では、82人の乳がん患者の微生物叢を詳細に調査し、ストレスや生活の質とともに細菌の科・属に大きな違いが見られることを指摘しています。

ストレスレベルが高い人は、アルカリゲネス科細菌とステレラ細菌がより豊富でした。アルカリゲネス科は、過敏性腸疾患、慢性腎臓病、およびいくつかのがんに関連する細菌科です。研究によると、これらの細菌は炎症を促進する性質があり、通常、強い不安を伴わないうつ病患者に多く存在しますが、疾患の発症または進行に関与していると考えられています。

研究によれば、ステレラは、特に過敏性腸疾患、クローン病、多発性硬化症などのさまざまな疾患と関連しているといいます。ステレラの量が多いと、がん治療の効果の向上につながり、少ないとうつ病になったり睡眠時間が短くなると考えられています。

また研究では、ストレス値の低い人ほどレンサ球菌科の細菌が有意に豊富でした。この科の細菌の多くは健康を守り、神経伝達物質のバランスを整え、セロトニンを産生する能力を有します。

しかし、メンタルヘルスに関して言えば、相反する見解を示したレンサ球菌科の研究もあります。ある研究では、精神神経障害と診断された子供たちが前年に連鎖球菌感染症に苦しんでいることが指摘されています。

微生物叢の研究はまだ初期段階にあります。この複雑な生態系に関する不明点は多くあります。それでも上述のホルコムさんは、ストレスに関する新たな洞察が、がん患者の治癒をサポートする方法の確立につながると語りました。

彼女は現在、ホリスティック医療に基づくがん支援団体「ヒーリング・ストロング」の理事を務めています。

治療の切迫感が問題?

治療の切迫感がストレスの一因となっている可能性があるなかで、特定の状況においては「経過観察」が受け入れられてきているとホルコムさんは述べています。

「最初の診断時に、ありとあらゆる悪いことを聞かされます。あなたを急かしたいからです。おそらく10年かけて成長し続けてるがんであっても、1か月以内に手術を受けさせたいからです。すべての医師がそうとは言いませんが、そうやってストレスは増大します」とホルコムさんは語った。

そういった切迫感は、特定のがんにおける治療の遅れと転帰の悪化とを結び付けた研究結果にも起因します。

ところで、遅れの原因も重要な要素です。医療体制への過重な負担により遅延が発生する場合、患者は自分の健康状態を心配する可能性があります。治療法の決定で患者に非常にストレスのかかる場合も遅延が発生します。これも転帰を悪化させる可能性があります。

『The Patient Education and Counseling』誌の2021年の記事によると、乳がん患者が「臨床的に重大なレベルの苦痛」を報告することは珍しいことではなく、その中には治療法の決定に対する不安も含まれ、それが何年にもわたって続くこともあるといいます。

乳がん患者が味わう苦しみの深刻さと長さは、トラウマに対する反応とも類似しているようです。 研究支援団体「Breast Cancer Now」は、乳がん患者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されることはまれではあるものの、フラッシュバックや孤立感、感情の麻痺などを経験する可能性があると述べています。

分かりにくさが不安を引き起こす

『The Patient Education and Counseling』誌の記事によれば、信頼の置ける医師に支えてもらえていると述べた人は心理的苦痛が軽減され、自分の決断により満足しているそうです。 一方で、わかりにくいと感じ、疑問が晴れないまま診察を終えてしまう患者もいます。

「決断の際に味わう苦痛は、乳がん患者の生活の質と決断に対する満足度に影響を与えることが予期されるため、重要です。意思決定に関する否定的な感情が苦痛の一因となる可能性があり、苦痛が治療法の決定に関する否定的な感情の一因となる可能性があります」と記事は綴っています。

がんの代替治療法について学びたい患者を支援する非営利団体「Annie Appleseed Project」の創設者 アン・フォンファさんは、エポックタイムズに対し、「医療制度は患者に有意義な支援を提供する機会を失っている」と語りました。彼女は1993年に乳がんと診断されました。

「複雑な決断を迫られるときは、どの方向に進むべきかわからないので、人生で最悪の時期です。しかし、そのストレスは調整可能です。次のステップを決定できると、考え込んでいる時よりもずっと良い状態になります。何をしたらいいのかと考えることが本当の問題です」

無限の選択肢という負担

概ねがん専門医が説明する治療法は、手術、放射線治療、化学療法、ホルモン療法、免疫療法、標的療法くらいです。そして、乳がんの種類、ステージ、大きさ、位置、増殖速度に応じて、それぞれの治療法にさまざまな選択肢が存在します。患者の健康状態、年齢、更年期の状態、好みも考慮されます。

ホルコムさんは「乳がん患者の多くは仕事を持ち、子供の世話や親の介護に終われる女性です。めまぐるしい決断の数々が、人生における決断とのバランスによってさらに複雑化します」と指摘しています。

また、多くの患者は、乳房切除術の必要があるかどうかで悩みます。

「どういった結果になるのか、詳しくは教えてもらえません。私の体の中では必要ない部分で、なくても機能しますが、それでも欠損です。そのためにたくさん悩んできました」とフォークトさんは語った。

化学療法を受けている患者、またはホルモン療法としてタモキシフェンを服用している患者は、副作用として脳卒中リスクが高まります。フォークトさんにはこれらの危険因子がなかったにもかかわらず、高血圧と不安症を患い、乳房切除術から1か月後には脳卒中を起こしました。

彼女は脳卒中の再発リスクについて不安を感じており、がん専門医から繰り返し勧められたタモキシフェンに反対しました。2019年9月の診断以来、不安が続いていたフォークトさんですが、ようやく通常の自分に戻りつつあると感じ始めているそうです。

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