鼻腔がSARS-CoV-2にさらされても、免疫反応の速い人やかすかな人は感染しなかった

なぜ一部の人は新型コロナに感染しないのか、新手の研究が説明

なぜ一部の人は鼻腔が新型コロナウイルスにさらされても感染しないのか、最近の研究でその理由が明らかになりました。

そのような人々は、新型コロナに罹患し症状が出た人よりも、免疫反応が迅速かつ僅かだったそうです。

研究の主任著者で、ロンドン大学呼吸器科名誉顧問のマルコ・ニコリッチ博士は、「今回の発見は、症状が現れる前にウイルスが定着するか急速に排除されるかを決める重要な初期段階の出来事に新たな光を当てています」とプレスリリースで述べました。

19日にネイチャー誌に掲載されたこの研究は、イギリスとオランダの研究者が実施したヒトへの感染実験です。参加者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2に意図的にさらされる実験としては初めてのものです。

研究者らは、この研究のために30歳未満の若く健康な参加者16人を募集しました。いずれも併存疾患はなく、これまで新型コロナに感染したこともワクチン接種を受けたこともありませんでした。

3つの異なる免疫反応

16人はウイルスへのばく露に対して異なる反応を示し、それに応じてグループ分けされました。

1番目のグループは症状が出た6人からなり、研究著者らは彼らを「持続感染」に分類しました。

2番目のグループの人々は無症状でしたが、PCR検査で新型コロナの陽性反応が出ました。彼らは「一過性感染」に分類されました。

3番目のタイプの人々は無症状かつPCR検査で繰り返し陰性でした。感染していたものの、急速に治ったため、「不完全感染」と名付けられました。

著者らによると、無症状感染者からなる2番目と3番目のグループの免疫反応は、より迅速あるいはかすかでした。

著者らは1日目に、無症状のグループにおいて、感染部位である鼻に移動した免疫細胞を検出しました。

しかし、検査で陰性だった人は補充された免疫細胞の種類が少なかったのに対し、陽性グループではあらゆる種類の免疫細胞が補充されていました。

新型コロナへの感染が持続し症状のある人たちは、免疫反応がより遅く、より全身的でした。彼らは、1日目ではなく5日目にあらゆる種類の免疫細胞が鼻に流入しました。

遺伝的素因

HLA-DQA2などの特定の遺伝子の発現が多い人は、「持続的なウイルス感染の発症を防ぐのに優れている」と著者らは書いています。

他の研究では、血液中のHLA-DQA2の活性増加が新型コロナの進行の軽度化に関連していることが示されています。

HLA-DQA2は、数あるヒト白血球抗原(HLA)遺伝子の1つです。HLA遺伝子は、細胞表面に表示されるタンパク質を作ります。病原体が細胞に感染すると、HLAタンパク質は、感染したことを免疫細胞に知らせます。

著者らは、HLA-DQA2の活性が感染細胞でのSARS-CoV-2のさらなる生成を防ぐことをデータで確認したと述べています。

症状のある人は全身的な反応を示した

新型コロナの症状のある人だけが、全身的なインターフェロン反応を示しました。インターフェロンは免疫系のメッセンジャーであり、免疫および炎症活動を軽減または悪化させるのに役立ちます。

著者らは、血液中のインターフェロンが感染部位のインターフェロンよりも早く活性化したことに驚きました。血液中のインターフェロン活性は感染3日目にピークに達しましたが、感染部位である鼻でのインターフェロンの活性は5日目まで検出されませんでした。

プレスリリースで著者らは、鼻での免疫反応が遅いために感染が急速に定着した可能性があると述べました。

無症状の人には全身性インターフェロン反応がなく、感染細胞はほとんどありませんでした。

「感染細胞はほぼ症状のある人の鼻腔だけからしか見つからなかった」と著者らは書いています。被験者の鼻腔の内側を覆う細胞はSARS-CoV-2を産生し始め、ウイルス量の増加に寄与します。

「私たちは現在、あらゆる種類の免疫反応についてはるかに深い理解を得ており、それがこれらの自然な防御反応を模倣する潜在的な治療法やワクチンを開発するための基礎となる可能性があります」とニコリッチ博士は述べました。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。