ノーベル賞受賞理由の修飾塩基ががん発生に寄与する可能性

コロナワクチンの修飾RNAががん発生に寄与する可能性

新型コロナワクチンに使用されているmRNAは、注射後に免疫系によって分解されないように、天然のRNAに「修飾」が加えられている。4月5日に発表された研究レビューは、mRNAに加える修飾、つまりN1-メチルシュードウリジンへの置換が、免疫抑制を引き起こし、がんの発生に寄与する可能性があることを示している。

mRNAの重要な構成要素であるウリジンは、体内に注入されると免疫反応も引き起こしやすく、速やかに分解されてしまう。この免疫反応の回避策がシュードウリジンだ。

ウリジンをN1-メチルシュードウリジンに置き換えることで、mRNAが分解されずにタンパク質が生成されることを発見したカタリン・カリコ博士とドリュー・ワイスマン博士は、その業績が讃えられ、2023年のノーベル賞を受賞している。

mRNAワクチンが細胞内でスパイクタンパク質を生成できるようになったのも、ファイザーとモデルナがこの特許技術を使用したからだ。

しかし、研究によると、この修飾が免疫応答を低下させる可能性があるという。「新型コロナワクチンの枠組みのうち、この阻害は確実に適切なスパイクタンパク質の合成と免疫活性を低下させる」と著者らは研究のアブストラクト(要旨)で述べている。

著者らは、この修飾が感受性の高い個人でがんを促進する可能性があることを懸念している。

「がんや感染症に対する将来の臨床試験では、100%N1-メチルシュードウリジン修飾のmRNAワクチンではなく、免疫抑制を回避するためにN1-メチルシュードウリジン修飾の割合が低いものを使用すべきだ」

修飾RNAと天然RNAの違い

修飾RNAと天然RNAが体内で引き起こす反応は異なる。修飾RNAはより異常なタンパク質を生成する傾向があり、これが細胞ゲノムの不安定性に寄与する可能性がある。

最も重要なのは、修飾RNAが天然RNAよりも体内でより消極的な反応を誘導することだ。これが他の感染症やがんと戦う体の能力に広範な影響を与える可能性がある。

著者らは、天然RNAが重要な抗がん物質である1型インターフェロンや他の免疫化学物質の活性を刺激する傾向があることを発見した研究を引用した。対照的に、修飾RNAが引き起こす反応はより軽度で、外来RNA注射の耐性を促進する免疫化学物質と関連している。

ある先行研究では、修飾ウリジンを含むRNAが、ウイルス感染の検出とがんとの戦いに関与するとされる神経経路を活性化させなかったことが示された。

著者らはカリコ博士とワイスマン博士の論文も引用した。論文では、mRNAの修飾が免疫認識と免疫細胞の活性化を抑制することが示されている。著者らは、これが広範な免疫的結果をもたらす「諸刃の剣」であると主張している。

レビューでは、タイで行われたマウスの研究から決定的なエビデンスが引用された。

研究では、メラノーマ(悪性黒色腫)を持つ2つの異なるマウスグループに天然RNAと100%修飾RNAを注射した。

タイの研究者らは、天然RNAを注射された場合、修飾RNAを注射された場合よりも体内により強力な免疫応答があることを発見した。

さらに、メラノーマのマウスの予後も異なった。

修飾RNAを注射されなかったグループでは生存率は100%だった。逆に、修飾ウリジンを持つグループでは生存率は50%にとどまった。

タイの研究者らは、mRNAワクチンが1型インターフェロンの産生と、腫瘍の成長と転移を制御する上で重要な下流シグナルを誘導するとアブストラクト(要旨)に書いている。

研究レビューの著者らは、この研究結果を、メラノーマモデルにおけるmRNAワクチンへの100%N1-メチルシュードウリジンの追加が、がんの成長と転移を刺激し、非修飾のmRNAワクチンは逆の結果を引き起こしたと解釈した。さらに、完全なmRNA修飾が接種者の生存率を低下させる可能性があることを研究は示しているとした。

がんに関する議論

しかし、タイの研究の上級著者で、微生物学と免疫学の博士号を持つタイ・バンコクのチュラーロンコン大学微生物学教授のタナパット・パラガ氏は、エポックタイムズに対し、その研究レビューが彼の研究チームの「結果を文脈から外している」と語った。

パラガ氏は、非修飾RNAが「強力な抗がん免疫」と関連していることに同意した一方で、彼らの研究は「修飾されたmRNAが腫瘍形成を促進することを示唆したり結論づけたりすることはない」と付け加えた。

「修飾RNAは(中略)ただ単純にI型インターフェロンの産生を誘導しなかった」と彼は述べた。

研究レビューの著者らは、修飾RNAががんを引き起こすとは主張していないことに注意を置きつつ、その影響ががんの発生を助ける環境につながる可能性があると述べた。

著者らはエポックタイムズに対し、「論文を読み込まない人々はすぐに、私たちがmRNAワクチンががんを引き起こすことを確認したと言うだろう」と述べ、論文から次の部分を抜粋した。

「mRNAワクチンはがんの原因ではないが、がんの発生を促進する可能性がある。そのことをここではっきりとさせることが重要だ。私たちは後者に関する実験データと臨床データに関心がある」

カリフォルニア大学ロサンゼルス校ナノ医療部門のティアン・シア博士は、N1-メチルシュードウリジン(m1Ψ)は免疫毒性を低減するものであり、「自然免疫および適応免疫を抑制しない」とエポックタイムズに語り、がんを引き起こすという結論に「強力な科学的裏付けはない」と述べた。

提案:修飾RNAの使用を減らす

研究レビューの著者らは、将来のmRNA治療薬は「修飾RNAの割合を下げるべきだ」と提案した。

彼らはまた、天然または非修飾のRNAが腫瘍の成長を抑制し、免疫応答の効率を改善し、生存率を増加させる可能性があるので、がん治療におけるmRNA注射の使用は阻止できないとも述べている。

著者らは、「新型コロナのmRNAワクチンでは、科学者らはスパイクタンパク質の産生を最大化することに焦点を当てただけで、他の下流効果を考慮していなかった」とエポックタイムズに語った。

「ここで次のことを深く考えなければならない。修飾の割合を下げると、SARS-CoV-2(新型コロナのウイルス名)に対するワクチンの効果が下がる一方で、意図しない副作用も減らすことができるだろう」

オレゴン健康科学大学のシニア研究員であるラケル・バルデス・アングエス氏とその同僚は、新型コロナのN1-メチルシュードウリジン修飾mRNAワクチンががんの進行と転移に与える潜在的な影響に関する研究レビューを歓迎している。

彼女はエポックタイムズに対し、修飾RNAがインターフェロンのシグナル伝達を妨げることが示されていると強調した。その腫瘍生物学上の役割の複雑さを考えると、「修飾mRNAを動物や人間での治療目的で統合する際には注意が必要だ」という。

「これらの考慮事項を踏まえれば、mRNAベースの治療薬の追求において、徹底的な調査と慎重な検討が当然必要だ」

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。