過去の強い免疫記憶によって、体はそれを標的とする抗体を産生し続ける

コロナワクチン接種者に「免疫の刷り込み」 ブースター接種に異常な反応示す

新型コロナウイルスの従来株対応のmRNAワクチンを3回以上接種した人に強い「免疫の刷り込み」が起きていることが、ワシントン大学の研究で判明した。

結果として、最新のオミクロン株XBB.1.5系統に対応するmRNAワクチンをブースター接種した場合、接種者はXBB.1.5株に特異的な抗体をほとんど、あるいはまったく産生しなかった。

免疫の刷り込みは、以前の感染やワクチン接種が非常に強力な免疫記憶を残している場合に発生する。その場合、新たな変異株やワクチンに曝露された場合でも、体が以前の免疫の経験に引きずられた免疫細胞や抗体を産生し続ける。

アイオワ大学の免疫学者・微生物学者であるスタンリー・パールマン博士(今回の研究には関与していない)は、エポックタイムズに次のように語った。「人が新たな変異株に対して有用な免疫反応を起こすことができない場合、免疫の刷り込みが問題となっている可能性がある」

驚くべき発見

論文著者のデビッド・ベスラー氏は、プレスリリースの中で「刷り込みは新しい概念ではないが、私たちが見ている状況は非常に変わっている」と述べた。

ベスラー氏はワシントン大学生化学科の教授兼学科長で、ハワード・ヒューズ医学研究所の研究員でもある構造生物学の博士だ。

免疫の刷り込みは、他の感染症やウイルスでも起こりうる、よく知られた現象だ。以前の変異株とは異なる新たなインフルエンザは、インフルエンザワクチン接種や過去の感染による刷り込みを克服する可能性がある。

しかし、ワシントン大学の研究では、新たなオミクロン変異株に感染した人の間でも免疫の刷り込みが持続していた。「これは私たちがインフルエンザウイルスで知っているものとはまったく異なる」とベスラー氏は言う。

「免疫の刷り込みは、XBB.1.5株対応ワクチンのブースター接種後を含む、ワクチン接種や感染によるオミクロン株のスパイクタンパク質への複数回の曝露後も持続するため、今後のワクチン接種の指針として考慮する必要がある」と著者らは書いている。

研究には、武漢株対応のmRNAワクチンを三回以上接種した20人以上が参加した。大半はオミクロン株以前も以後にも新型コロナウイルス感染症に罹患していた。

参加者のほとんどは、従来株対応のmRNAワクチンに加えて、2価ワクチンやXBB.1.5株対応ワクチンのブースター接種を受けていた。研究開始までに、参加者全員が4〜7回の接種を受けていた。

著者らは、XBB.1.5株対応のmRNAワクチン接種後に生成された抗体のほとんどが、オリジナルの武漢株の中和に最も優れていることを発見した。

この抗体は、オミクロン株BA.2.86系統に対して2番目に高い中和能力を、XBB.1.5株に対して3番目に高い中和能力を示した。

これらの抗体には交差反応性があり、つまりXBB.1.5株を含む他の変異株にも結合する可能性があるということだ。

しかし、XBB.1.5株に特異的な抗体はほとんど、あるいはまったくなかった。

XBB.1.5株のみを認識する新たな免疫細胞を産生した人もいたが、評価した12人の参加者のうち、XBB.1.5株は認識するが武漢株は認識しない免疫細胞を持っていたのは5人だけだった。

「最新のブースター接種によって誘導された抗体のほとんどは交差反応性があり、新たな変異株をブロックするのに役立つ。これは良いことだ。しかし、もっといい仕事ができるのではないだろうか? 答えはおそらくイエスだ」とベスラー氏は語った。

考えられる2つの理由

ベスラー氏はプレスリリースで、「我々が見ているものについては2つの有力な仮説がある。2つのうちどちらがそれを説明しているかはまだ分からない」と述べた。

仮説の1つは、シアトルの住民(サンプルのほとんどはシアトルの住民から採取)が、主にワクチン接種によって、あるいは感染によって何度もウイルスにさらされたことで、従来株により対応した抗体や免疫細胞の記憶を生成したのではないかというものだ。

「私を含め、シアトルの人々はとても従順だった。私たちは過去4年間、ワクチンを接種したり、少なくとも1回は感染症にかかったりして、何度も曝露された。これほど短期間にこれほど多くの曝露があったことは非常に異例だ。私たちが分析したコホート(統計上同一の性質を持つ集団)では最大7回のワクチン接種が行われていた」とベスラー氏は語った。

もう1つの仮説は、mRNAワクチンがこれまでに知られているワクチンよりも強力な免疫の刷り込みを生み出すというものだ。著者らは、死滅させた新型コロナウイルスを接種することでヒトにおける刷り込み効果が減少することを発見した別の研究を引用した。

「不活化ワクチンはより微弱な免疫反応を誘発するため、反応が(特定の変異型に)偏る可能性は下がる」とパールマン博士は述べた。

「mRNAワクチンは非常に優れていて、非常に強力な免疫反応を引き起こした可能性があるため、その刷り込みが、インフルエンザウイルスなど他のウイルスのワクチンでこれまで見られてきたものよりも強力である」とベスラー氏は述べた。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。