(大紀元)

高智晟著『神とともに戦う』(56) “黄じいさん”の暴力的立ち退きから1年③

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2004年5月14日、朱租德、王翠娣という上海の老夫婦が、私にあてた手紙で自分たちの窮状と絶望を訴えてきた。

「上海市宝山区の地元政府と公安局が、警官、私服警察官、防暴警察(訳注、日本でいう機動隊)数百人を動員し、我が家を取り壊しました(取り壊しの時点で、土地収用の手続きはまだ終わっていない)。私たちの目の前で、一生の心血を注いで建てた家が廃墟と化していきました。法律による救済への努力がすべて徒労に終わった後、私たちはやむを得ず、自らの権利を守るため、陳情の道へと足を踏み出しました」

「私たちの息子、朱東輝は立ち退き被害を訴える陳情を始めましたが、2004年4月29日、上海市公安局宝山分局に無実の罪で収監されてしまいました」。

そのあと送られてきたのが(2004)上海市労働委員会審議会字第二五四四号〈労働教養院決定書〉という文書である。2544、これは「道徳的社会」にとって恐るべき数字ではないか。上海市だけでも、2004年4月までで、違法に労働教養院(訳注、通常の裁判を経ないで送られる、一種の強制収容所のような施設。

(非人道的手段による思想改造がおこなわれる)送りになった市民が2500人余りに達することを意味するからである。老夫婦の息子は、違法に1年9カ月も拘留されることになったが、その理由は「国家機関の入り口で騒ぎを起こした」からだという。

2004年9月、上海市徐匯区の朱鋼さんら教師9人が連名でこんな手紙を私によこした。「上海永龍不動産有限公司は、上海徐匯不動産動遷有限公司(訳注、住民の立ち退きを進める会社)に立ち退き工事を委託しました。

『覇王(実に身勝手であること)』的な立ち退き合意書に家の所有者が同意しなかったのに、彼ら(あるいは指示を受けた出稼ぎ労働者)は卑劣極まりないことをやりつくしたのです。承認のサインをしていない立ち退き対象者の家の水道やケーブルテレビの線、通信線を断った上、窓さえ壊すなど。我々の堅固な建物は今、汚水にまみれ、ごみだらけの危険な建物に成り果てています。

それはサインを拒んでいる教師たちを家から追い出すための仕業で、そのため帰宅できなくなった人もいます。もっと深刻なのは、開発業者との間で立ち退き合意書にサインもしていないのに、我々の大多数の所有者は、何度も盗みの被害に遭っていることです。

テレビや冷蔵庫、エアコン、パソコン、衣類などの家財がひとつ残らず奪い去られてしまいました。我が家も、窓、ドア、外壁がめちゃくちゃに剥ぎ取られて満身創痍、ボロボロの廃墟となっていました。日の当たるこのような大都市で、これほどまで野蛮で人の尊厳と生存を踏みにじる行為がまかり通っているのは、一体なぜなのでしょうか」

2004年3月、私的財産権と人権の保護が「憲法」に書き込まれた頃、上海市民の王明清さんは、北京に20回余り陳情していた。2005年2月、その王さんが30回目の陳情で投獄されたという知らせが伝わってきた。

2005年2月、上海の強制立ち退きの被害者、許正清さんが北京へ陳情に訪れている間、故・趙紫陽元総書記の追悼に行く途中で、警官に取り囲まれて捕まえられた。許さんを捕まえた人の中には、なんと許さんの家の取り壊しをした開発業者の従業員すらいた。許さんはこうして、この強大な国家に“正式に”逮捕されたのであった。

 (続く)

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