風邪をひくことで新型コロナの重症化を防ぐ効果がある

新型コロナウイルスに曝露しても免疫がある人がいるのはなぜでしょうか。研究者らの当惑に対する興味深い説明を可能にするエビデンスが、今新たに出てきています。以前、普通の風邪にかかり克服したことで、免疫が獲得されるそうです。

風邪の抗体が新型コロナを防ぐ

新たな研究が、風邪ウイルスに対する既存の抗体が新型コロナ感染症に対する予防効果をもたらすかどうかを調査しました。 研究者らが、ワクチン接種を受けていないさまざまな重症度の呼吸不全患者94人の血液サンプルを分析したところ、そのうち74人が新型コロナの検査で陽性を示し、残りの20人は感染していませんでした。

研究者らは、陽性を示した患者について、以前のコロナウイルス感染(風邪)で作られた抗体レベルを測定しました。 同様の分析が、対照として非新型コロナ患者に対しても行われました。

その結果、風邪の抗体レベルと新型コロナウイルスに特異的な抗体の間には正の相関関係がありました。対照患者における風邪の抗体レベルのほうが高いことは、新型コロナ感染症の重症化を防ぐ効果を示唆しています。

「抗原原罪」

「抗原原罪」という概念は、1960年代に初めて生み出されました。 この概念は、最初のインフルエンザへの曝露が、その後の関連性のある変異株に対する免疫をいかに形成するかを指すものです。

抗原原罪の提唱以来、研究により、最初に出会った病原体を記憶して免疫が固定化されることにより、それ以外の感染症にかかりやすくなる可能性が示されてきました。

スタテンアイランド大学病院・新型コロナ後遺症センターの内科医トーマス・ガット博士は、エポックタイムズに対して、抗原原罪は新型コロナ感染症や風邪にも当てはまる可能性があると語りました。

「既存の風邪が新型コロナの感染を防ぐ効果があるのか、それとも何らかの形で新型コロナ感染症のリスクを高めるのかについては、かなり長い間議論の的となってきた」と同氏は述べました。

ガット博士は付け加えて、従来のコロナウイルス(風邪や新型コロナウイルス)への感染によって、変異株への感染のしやすさが増す可能性は低いことを、これらの最新の発見は示唆していると述べました。

なぜアフリカはパンデミックで最悪の事態を回避できた?

ある研究レビューによると、風土病の風邪が新型コロナウイルスの重篤な症状に影響するかどうかについては、激しく議論されています。しかし、交差免疫(既存のウイルスに対する抗体が類似のウイルスへの免疫をも発揮する)によってアフリカのパンデミックの影響が比較的穏やかになったことは、幼少期にかかる風邪によって部分的に説明できると推測する人もいます。

人体ウイルス学を扱うオープンアクセスジャーナル「Journal of Clinical Virology Plus」に掲載された2023年の研究では、ナイジェリアのラゴスで見られた新型コロナに対する「強力な」免疫反応について分析がなされました。 研究者らは、医療従事者と一般住民の2つのグループを5つの地域にわたって調査しました。

250人の被験者のうち、83%以上が風邪コロナウイルスへの感染歴がありました。この研究では、風邪ウイルスと闘う白血球が新型コロナウイルスに対して交差免疫を発揮することが判明しました。

このことは、以前に遺伝的に関連性のあるコロナウイルスに曝露された人々が、将来の新型コロナ感染を予防する免疫反応を有していることを示唆していると、ボビー・ブルック・ヘレラ氏は報道声明で述べました。同氏はラトガース・グローバル・ヘルス研究所の国際保健助教授であり、この研究の筆頭著者です。ヘレラ氏は、同研究で採用された、ワクチン接種が始まる前のパンデミック初期に観測された独自の基準値データに注目しました。

現在では、ほとんどの人がワクチン接種か実際の感染によってすでに新型コロナへの抗体を持っているため、比較対象となる未曝露の集団を見つけるのは困難です。それゆえ、パンデミック初期のデータの価値が強調されています。

研究:早期の曝露が子供のウイルス防御を形成する

米国科学アカデミーの機関紙に掲載された2023年の研究は、パンデミック前の子供と成人の血液サンプルと、新型コロナ感染症から回復した人の血液サンプルを分析しています。

この研究では、2歳の子供がすでに、新型コロナウイルス感染症の原因となるウイルス(SARS-CoV-2)を含むいくつかのウイルスに対する免疫を獲得していることが判明しました。しかし、これらの免疫細胞は年齢とともに減少します。

カロリンスカ研究所・臨床検査医学科の研究責任著者でグループリーダーのアニカ・カールソン氏は報道声明で、「これらの免疫反応は幼少期に特に強く、年齢を重ねるにつれて格段に弱くなっていく」と述べました。

これは、子供の新型コロナ感染症の症状が大人よりも軽くなる理由かもしれません。

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。