(大紀元)

高智晟著『神とともに戦う』(34) 弁護士の使命(1)

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弁護士の使命には2種類あると思う。すなわち理論面の弁護士と現実に身を置く弁護士、それぞれの使命である。理論面の弁護士の使命とは、人権・憲政・法制・社会正義などを擁護することである。これは実際、全世界の弁護士が皆、自ずと背負う使命と言えよう。

この理論面の弁護士の使命について、我が中国の弁護士法第一条は、こう概括している。「当事者の合法的な権益を守り、法律が正しく実施されるよう擁護する」。だが理論上、このような中国の弁護士の法的使命と、国際社会で伝統的に受け継がれてきた弁護士の使命とを比べると、やはりまだ隔たりがある。例えば、憲政や人権を擁護することについてだ。少なくとも理論上、これが弁護士の使命であると明記していない。

もちろん、この法律を定めた者が、憲政および人権といった移ろい易い世の正道の擁護に、弁護士が接近することを故意に阻もうとしたわけではないだろう。実際のところ、これは中国の政治文化がもつ独特の思想がもたらしたのである。

もしかしたら、私のこの考えに異議を唱える者がいるかもしれない。中国はこれまでずっと、人民に代わって、何でも政府が鶴の一声で決めてきた。自信満々の政府は、憲政や人権についても、完全に自分たちにとって有利な計らいをする。統治者は当然のごとく、自らが作った憲政制度、人権システムの制度は完璧なものだと確信するはずだ。政府が何でも決める。

ならば自らが作ったシステムで自分の憲政・人権制度を保障してしまえば、自分は永遠に朽ちることはない。政府の傘下に属さない「うっとうしい業界(訳注、弁護士業を指す)」など必要ないのである。

これは確かに現実である。では、中国の弁護士は、憲政や人権の擁護と無縁なのであろうか。当事者の合法的な権益や法律の正しい実施を守ること、その実践において、憲政や人権を守る要素はないのだろうか。実際、この実践は法律に依存する。

ならば現行の基本的な法律は、憲政および人権を守り実践するのに、いかなる義務を負っているのか。弁護士が法律面での使命を果たすのに主な武器となるのは何か。理論上、それは事実(ここでは法律の事実を指す)や法律の技術・手続きである。この時弁護士にとって何よりも必要となるのは、合法的でモラルに反しない一切の手段を用いて、依頼人の有利な結果を追求することである。

弁護士業とは面白いものだ。依頼人にとって有利な裁判結果を得るために、時にはその目標を妨げる一切の相手を攻撃する。場合によっては、国家にすらその矛先を向ける。だが、この種の妨げは、確かに批判すべき要素を秘めているのだ。

 (続く)

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