(大紀元)

高智晟著『神とともに戦う』(26)中国の弁護士の悲哀②

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中国の闇はあまりにも多すぎる。とりわけ制度によって公民が受ける被害は深刻だ。だが、これは断じて悲哀の全てではない。我々の悲哀とはすなわち、公式・非公式にかかわらず接した政府の職員たちが皆、意外にもこの政府のやり方に全く賛同することであり、それによって、こちらの力がいかに微々たるものかを思い知らされることなのだ。また同時に目にするのは、この「機器(訳注、党が制御する全ての社会システムを指す)」が人を洗脳する能力とエネルギーである。これは巨大な魔力を備えていると言わざるを得ない。

例えば、六四天安門事件は本来、非暴力の形で解決できたはずだったのに、当局が選んだのは銃弾と戦車だった。人々もこれで、「この政府は、人を射殺しても謝罪の必要すらない権力を持っている」と実感したはずだ。

北京市民である葉国柱さんの3代に渡る3世帯は、強制立ち退きの過程で住まいと財産の一切を失ってしまった。そこでデモを申請したところ、「騒ぎを企てた」との罪で刑が下された。これを見た人々は、深く考えることもなく、こんな概念を受け入れてしまう。「政府による立ち退きは法に則った正当なものである。葉国柱の要求こそ理不尽なのだ」

私はよく政府の職員と、かつて私が法輪功学習者に会った際のことを話す機会がある。彼らは決まって「法輪功学習者の目つきは尋常ではないだろう」と尋ねる。彼らは法輪功学習者の目つきがどうかを尋ねるのではなく、「目つきが尋常ではないだろう」といきなり聞くのだ。彼らの認識において、法輪功学習者は正常な人ではないということだ。問題は、彼らが直に法輪功学習者に接してそのような認識を持ったのではなく、「機器」による彼らへの洗脳が見事に成功してこうなったことにある。

 ※ ※ ※

弁護士の道へ足を踏み入れた当初、私は情熱に燃えていた。社会の公平と正義を守る――国家は必ずこれを支持してくれるに違いない。私はそう信じて疑わなかった。しかし、しばらくすると私はこの志に心底悲観的になった。社会を変革するという願いは、一種の悪夢になったと言ってもよい。実際、私はここ数年、理性的あるいは現実的に自分の行動哲学を大幅に調整してきたのである。

例えば私は今、陳情者から毎日3~4件の相談を受ける。これは全く意味がない、とよく言われる。もちろん私だって馬鹿ではないから、たいした意味はないことくらい分かっている。だが彼らは絶望と怒りを胸に、陳情のためはるばる北京へやって来たのだ。北京で彼らを待ち受けるのは、さらなる絶望と怒りである。まさにどん底にいる彼らが私に会いたがっているのに、私は電話口で彼らをむげに断われるだろうか。だから私は、彼らに会う度にこう告げる。「あなたの問題に関して、私は実質的な支援を出来ないかもしれませんが、あなたの境遇を聞かせてくれませんか。このような社会状況の下でどう解決出来るのか、一緒に考えましょう」。私には今、これくらいのことしか出来ないのだ。

 

この制度は弁護士を必要としない。しかし、社会の数多くの弱者集団や個人は、法律の助けを切に必要としている。これこそが、我々弁護士が毎日直面する事実なのである。

国家を運営するに当たって規則がなかったり、あるいは規則が乱用されたりすれば、弱者たちの権益は絶えず侵害される。恥知らずな政府官僚の汚職、法律違反を繰り返す法の執行者、全く形骸化している独立した司法制度、社会全体の不信とモラルの欠如……。

この7年、私たちは毎日このような空気が覆う中で弁護士業に従事してきた。法治は1つの目標である。この目標の実現には、具体的なシステムや段取り、真に実現したいと願う志が必要だ。形の上では「モラルある社会」の姿を保っているこの国。だが実務上、一秒たりとも忘れ得ないのは、いつまで経っても変わらぬゴロツキ行為だ。中国共産党が一切を超える絶大な権力を堅持し、行政権が法律をはるかにしのぐ一方で、「依法治国(法律に基づいて国を治める)」などと高らかに叫んでいる。「空論」と言えばまだ聞こえは良い。言うなれば、これは「詐欺」に過ぎないであろう。

 (続く)

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