南欧全域で夏の気温が急上昇し、旅行客の行動パターンに永続的な変化をもたらすかもしれない。猛暑を避けるため、もっと涼しい場所を選んだり、春や秋に休暇を取ったりする旅行者が増えると、観光団体や専門家は予測している。写真は厳しい暑さが続くローマで17日撮影(2023年 ロイター/Remo Casilli)

アングル:夏の南欧観光に打撃、猛暑で冷涼地に需要シフト

[ロンドン/ローマ 18日 ロイター] – 南欧全域で夏の気温が急上昇し、旅行客の行動パターンに永続的な変化をもたらすかもしれない。猛暑を避けるため、もっと涼しい場所を選んだり、春や秋に休暇を取ったりする旅行者が増えると、観光団体や専門家は予測している。

欧州旅行委員会(ETC)のデータによると、6月から11月にかけて地中海地域への旅行を希望する人の数は、昨年に比べて既に10%減少している。昨年は猛暑が原因で干ばつ山火事が起こった。

その一方で、チェコ、デンマーク、アイルランド、ブルガリアなどの旅行先への関心は急上昇している。

ETCの責任者、ミゲル・サンス氏は「予測不可能な天候が欧州を旅行する人々の選択に与える影響は今後、さらに大きくなるだろう」と述べた。

ETCの報告書では、6月から11月にかけての旅行に関して、旅行者の7.6%が異常気象を大きな懸念事項に挙げている。

アニタ・エルショイさんと夫も同じだ。2人は今月、お気に入りの休暇先であるローマ北部の村、バサネッロへの旅行を予定より1週間早く切り上げてノルウェーに帰国した。気温が約35度前後に達したためだ。

「頭や足が痛くなり、指が腫れ上がり、めまいがひどくなっていった」とエルショイさん。「2週間滞在する予定だったが、熱波のため無理だった」という。

<今はキャンセル多発せず>

数年続いた新型コロナウイルスのパンデミックによる規制の反動で、旅行需要はこの夏も急増している。旅行代理店は、まだキャンセルが多発してはいないと言う。

英旅行代理店グループABTAのショーン・ティプトン氏によると、特に英国民の間では国内の休暇予約が減り、地中海地域での休暇予約が増えている。

しかし、気候変動により熱波は過酷さが増すと見られているため、このバランスは変化する可能性がある。

気象学者らの予想によると、欧州の気温は今後1週間、2021年8月にシチリア島で記録された最高気温48.8度を上回る恐れがあり、熱中症で死者が出た昨年の悪夢が再来するとの懸念が高まっている。

欧州のメディアではここ数週間、イタリアのビーチで旅行者が空から救助されたり、アテネの歴史遺産アクロポリスから救急車で運ばれたりしたというニュースがあふれている。

「われわれの最近の調査によると、休暇シーズンのピークである8月の旅行者数は減少が見込まれ、秋の旅行を検討する欧州市民が増えている」と、ETCのサンズ氏は語った。

<変化する南欧旅行>

ローマに滞在中の旅行者らはロイターに対し、水を十分飲む、涼しく過ごす、エアコンの効いた場所で休む、といった苦労が絶えなかったため、今後は7月のローマ旅行を考え直したいと語った。

米国からの旅行者は、熱波のため旅行は「悲惨」だったとし「もっと涼しいときに来たい。6月とか4月とか」と語った。

夏の観光客で潤ってきたイタリア経済にとっては、悪いニュースだ。

イタリア環境省は今年公表した報告書で、海外からの旅行客は今後、春や秋の旅行を増やし、もっと涼しい場所を選ぶようになると予想。イタリアを訪れている旅行客の一部が気温の低い国に流れるため「差し引きすると(イタリアにとって)マイナスになる」との懸念を示した。

一方で、旅行者が減少するのではなく、単に行動パターンが変化するだけにとどまることを期待する声もある。

ギリシャは今年1―3月の国際航空便の到着数が前年同期比で87.5%増えた。ミコノス島などの観光名所は夏場、混雑し過ぎて観光客を悩ませてきた。

ギリシャ環境省によれば、冬、春、秋の旅行が増えればこの問題が緩和される上、夏の減速を補うことができると予想する。

同国当局は14日、観光客を保護するため、最も暑い時間帯にアクロポリスを閉鎖した。

スペインでは、北部の海岸沿いの観光地や、夏の気温が低い傾向にある島々で強い休暇需要が見込まれていると、全国観光協会エクセルトゥールが報告している。

エルショイさんにとって、南欧の夏は過去のものになるかもしれない。代わりにノルウェー国内での休暇を検討すると言い、こう付け加えた。 「頭痛がしたり、めまいがするような休暇はもうごめんだ」─。

(Joanna Plucinska記者、 Guglielmo Mangiapane記者)

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