インタビュー:核廃絶へ「核共有」議論を=馬場・日本維新の会代表
[東京 29日 ロイター] – 野党第一党を伺う勢いの日本維新の会・馬場伸幸代表はロイターとのインタビューで、党として政策提言した「核共有(核シェアリング)」の議論を進めるべきとの考えを改めて示した。核共有は拡大抑止を強化する安全保障政策の1つだが、岸田文雄首相が目指す核廃絶につながると説明した。
維新は2022年3月、核共有の議論を政府に提言。ロシアがウクライナに侵攻し、核の使用を示唆した直後のことで、米国の核の傘による拡大抑止力を強化する趣旨だった。
当時の松井一郎代表から職を継いだ馬場氏はロイターに対し、核拡散防止条約(NPT)で保有を認められた5大国が他国と核を共有できるようにすれば、「新しく核を作らせないという道に進むと思う」と説明。「核保有国以外は絶対持ったらいけないと言うから、作ろうとする国が出てくる」と語った。
北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返す中、韓国では核開発論が急速に高まったが、今年4月に尹錫悦大統領がバイデン米大統領と会談。弾道ミサイル搭載可能な米原子力潜水艦を韓国に派遣することなどを柱とした「ワシントン宣言」に合意した。韓国国内に核を配備するわけではなく、厳密には核共有と異なるが、宣言には韓国が独自の核開発兵器計画を追求しないという誓約が含まれた。
馬場代表は「核シェアリングを議論することが、核廃絶へ向けた1つの通過点になる」と指摘。「できれば、日米韓で(議論を)やったほうががいい」と述べた。
馬場氏は、与党の自民党と公明党が議論をしている武器輸出規制の見直しにも言及し、焦点となっている殺傷能力のある防衛装備を輸出できるように運用指針を変えることには反対する立場を表明した。
馬場代表は「(日本は)大人の国家ではない。自分のところは軍隊もないわけで、世界が当たり前に身に着けているいろんなことが日本にはない」と説明。まずは憲法に自衛隊の存在を明記するすべきだとした。「それがないのに無理に防衛装備品など提供し始めると、ひずみが出てくる」とした上で、ウクライナについて「本来は停戦に向けて汗をかくべきだと思う」と述べた。
日本維新の会は、2010年に結成した地域政党・大阪維新の会が源流。選挙を重ねるごとに関西以外でも勢力を拡大し、今年4月の統一地方選で躍進した。
馬場氏は今秋に解散総選挙の可能性が高いとみており、27日時点で130人の候補者を擁立するめどが立ったことを明らかにした。「立憲民主党が候補者150人に達してるということなので、野党第一党を目指すと言った限りは150人以上の候補者を立てたい」と語った。
海外で尊敬する政治家がいるかどうかを問うと、「良いところも悪いところもあるが、前例、慣例をぶち壊して前に進んでいく姿勢として、トランプ前大統領なんかは面白いなと思う」と述べた。
「国民みんながわくわく、どきどきして夢や希望を持って日々過ごすような、そういう社会をもう1回やり直さないといけない」とした上で、「そのためにはポピュリズム政治と言われても僕は良いと思う」と語った。
*インタビューは28日に実施しました。
(金子かおり、豊田祐基子、Tim Kelly 編集:久保信博)