仕事でのAI利用 孤独、不眠症を助長する怖れ

人工知能(AI)の利用拡大のトレンドは続いているが、同時に、様々な問題点がもたらされている。仕事にAIを頻繁に使う人は孤独になりやすく、それが不眠や仕事後の飲酒の増加につながる可能性があることが、新しい研究で明らかになった。

この研究は6月12日の「応用心理学研究」誌オンライン版に掲載されている。

研究者は、これらの知見は相関関係を立証するものであり、AIシステムとの連携が孤独感やその他の反応を引き起こすことを証明するものではなく、あくまで関連性を示すものであると指摘している。この研究は、米国、台湾、インドネシア、マレーシアの異なる文化圏で行われ、4つの実験で構成された。その結果は、異なる文化間でも一致していた。

「AIシステムの急速な進歩は、多くの利点があり、職場を再構築する新たな産業革命を巻き起こしている」

「人間は社会的動物なので、職場でAIとだけ仕事をするようになると、従業員のプライベートの面において、このような負の影響が出てくる可能性がある」と主任研究者のジョージア大学経営学部助教授ポック・マン・タン氏は語った。

一方、AIシステムを使った仕事は、ポジティブな面もある可能性がある。研究者たちは、AIシステムを頻繁に利用する従業員は、同僚に手助けをする傾向があることを発見したが、この反応は、彼らの孤独感や社会的交流の必要性が引き金になっているのかもしれない。

ある実験では、AIシステムを扱う台湾のバイオメディカル企業のエンジニア166名を対象に、3週間にわたって孤独感、愛着不安、帰属意識について質問した。

同僚は各個人の助け合いの行動について評価し、家族は不眠や仕事後のアルコール摂取について報告した。

その結果、AIシステムとの対話頻度が高い社員ほど、孤独感、不眠症、終業後のアルコール摂取量が増加することがわかった。しかし、その一方で、同僚に対する援助行動も見られた。

別の実験では、インドネシアの不動産管理会社の126人の不動産コンサルタントを対象に、半数には3日間連続でAIシステムを使用しないよう指示し、他の半数にはできるだけAIシステムを使うように促した。結果、AIを使うグループの結果は前の実験と似ていたが、AIの使用頻度と仕事後のアルコール摂取との関連はなかった。

また、米国のフルタイム労働者214人とマレーシアのテック企業の従業員294人を対象としたオンライン実験でも似たような結果が得られた。

タン氏は、AI技術の開発者は、AIシステムに人間の声などの社会的機能を搭載し、人間のようなやり取りを模倣することを検討すべきであると提案した。また、雇用主は、AIシステムを使った作業の頻度を制限し、従業員が対話する機会を提供することをアドバイスした。

タン氏は「マインドフルネス(うつ病の再発防止)プログラムや他のポジティブな介入も、孤独感を緩和するのに役立つかもしれない」「AIはますます拡大していくので、これらのシステムと共に働く人々に対する潜在的な悪影響を軽減するために今行動を起こす必要がある」と指摘している。

一方、米国の外科医総監の最近の報告書「Our Epidemic of Loneliness and Isolation(孤独と孤立の蔓延)」と題する報告書では、孤独は単なる嫌な気分だけではなく、個人と社会の健康に害を及ぼしている。心血管疾患、認知症、脳卒中、うつ病、不安、早死にのリスクが高くなることと関連している。社会的断絶がもたらす死亡への影響は、1日15本までのタバコの喫煙と同様で、肥満や運動不足よりもさらに大きい。

報告書によれば、大規模な人口調査では、初めは健康である人々を長期間追跡した結果、より社会的につながっている人々はより長生きする。他方では、孤立、孤独、質の低い人間関係などの社会的コミュニケーションの不足を経験した人は、死因にかかわらず、より早く死亡する可能性が高いようだ。

「私たち一人ひとりが今、自分の生活の中で関係や人間関係を強化することから始めることができる。私たちの個々の関係は、目の前に隠れている癒しの源である。それらは私たちがより健康で生産的で充実した人生を送るのに役立つのだ。友人からかかってきた電話に出る。食事を共にする時間を作ろう。携帯電話に気を取られることなく、耳を傾けよう。奉仕の行為を行おう。真摯に自己表現しよう。人間のつながりの鍵はシンプルではあるが、非常に強力だ」と外科医総監のヴィヴェク・ムルティ博士は書いている。

ベス・ブレルジェ氏が寄稿した。

 

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