孤独は健康に深刻な影響を及ぼし、既存の健康問題を悪化させるだけでなく、治療を困難にし、死亡リスクをも高める可能性があります。米国では約半数の成人が孤独を感じていると報告されています。
孤独が引き起こす健康リスク
孤独は、心血管疾患や認知症、脳卒中、うつ病、不安障害、さらには早期死亡のリスク増加と密接に関連しています。実際、孤独による死亡率への影響は、1日にタバコを15本吸うことに匹敵し、肥満や運動不足よりも深刻です。
2023年、米国公衆衛生局長のビベック・マーシー氏は、アメリカの成人の約半数が孤独を経験していることを指摘し、孤独を公衆衛生問題として取り組むべきだと表明しました。
臨床現場では、孤独がもたらす苦痛が、人々の心身に大きな影響を及ぼす様子がよく見られます。この影響は肉体的な痛みと同様に深刻で、既存の健康問題をさらに悪化させ、治療を困難にすることもあります。孤独を放置すると、重大な心理的問題を引き起こす可能性があるのです。
研究によると、孤独を強く感じている人は、そうでない人に比べて大うつ病性障害を抱える可能性が約14倍、全般性不安障害のリスクが約11倍高いとされています。また、孤独は早期死亡のリスクを最大で26%も増加させ、特に心疾患や脳卒中などの心血管および脳血管疾患による死亡リスクを高めることがわかっています。
孤独を引き起こす要因
孤独の原因には、外的要因と内的要因があり、それぞれが異なる形で孤独感を生み出します。
外的要因
引越し、転職、学校の変更、大切な人の死など、人生の変化が孤独を引き起こすことがあります。
内的要因
内的要因には、重度のうつ病や社会不安、強い劣等感、「自分は不十分だ」「周囲から批判されている」という思い込みが含まれ、これらが他者との関わりを避けたり恐れたりする原因となり得ます。また、内向的な人は友人を求める気持ちがあっても、社交の場で苦労することが少なくありません。
中年や老年期も孤独感が高まりやすく、特に退職やパートナーの喪失が影響します。しかし、孤独は高齢者だけでなく若年層にも深刻な問題で、多くの調査でそれが示されています。ハーバード大学の「Making Care Common」プロジェクトによると、18歳から25歳の若者の約3人に1人(34%)が孤独を感じており、36%が不安、29%がうつ状態にあると報告されています。特にSNSへの依存が若年層の孤独感の増加に影響していると考えられています。
深い孤独感を抱える人の中には、健康に悪影響を与える対処法をとる人も多くいます。孤独感が強い人が過食、喫煙、飲酒、睡眠不足、運動不足に陥りやすいのは偶然ではなく、これらの行動が身体的・精神的健康に悪影響を及ぼします。また、孤独は脳の働きにも影響し、認知機能の低下を招くこともあります。さらに、自傷リスクを高める可能性もあるため、孤独の影響は深刻なものとして懸念されています。
臨床ケース
ジョンソンさん(76歳)
夫を亡くして一人暮らしとなったジョンソンさんは、遠方に住む子供たちと離れ、次第に孤独と抑うつ感が強まり、外出を避けるようになりました。その結果、認知機能の低下が見られるように。医師から心理療法とシニアセンターでの活動参加を勧められ、最初はためらいましたが、新しい友人や楽しみを見つけることで、生活の質と健康が大きく改善しました。このように、共通の関心を持つグループと交流し、支え合うことは中高年にとって重要です。
デイビッド(18歳)
大学に進学したデイビッドは、厳しい勉強と心理的な負担に直面していました。放課後の活動も学業の不安から参加できずにいましたが、大学の心理相談センターで助言を受け、自分の社交ネットワークを築くためにも課外活動に参加する必要性に気づきました。少しずつ活動に加わり、大学生活に順応していきました。
サラ(35歳)
仕事に情熱を持ち成果を上げていたサラですが、仕事外の時間がほとんどなく、孤独感を抱えていました。その結果、間食や飲酒に頼るようになり、体重増加や疲労、生産性の低下に悩むことに。このままではいけないと気づき、医師の助けを求めて健康と仕事のバランスを取るための戦略を立てることができました。
孤独を力に変える
孤独は誰にでも訪れるものであり、歴史上の偉大な人物たちもその例外ではありません。しかし、多くの人々は孤独を成熟への原動力として活用してきました。
マハトマ・ガンディー
インド独立を目指す長い闘争の中で、ガンディーは不可能に思える課題に直面し、孤独を感じることがありました。支持者に囲まれながらも、特に投獄されている間は強い孤立感を抱いていました。しかし、ガンディーはこの孤独な時間を自らの精神修養に充て、非暴力への信念を再確認する機会としました。この内面の強さが、彼の理想を実現する支えとなったのです。
エイブラハム・リンカーン
アメリカの歴史で最も尊敬される大統領の一人であるリンカーンも、困難な状況や個人的な喪失の中で、深い孤独に直面しました。彼はその孤独を深い共感と決意に変え、国が分裂の危機にあった時期に、統一への力としました。彼の人生は、孤独が強さの源になることを教えてくれます。
孤独に対処する方法
孤独感は日常の習慣を少し変えることで克服できることがあります。以下の方法をおすすめします。
地域活動に参加する
ボランティア活動や共通の趣味を持つ人たちと時間を過ごすことで、意義ある関係が築けます。誰かと一緒に活動することで、自然と仲間が増えていくでしょう。
質の高い友人を作る
友達を作ることを目的にしすぎず、友達ができないからといって落ち込まないことも大切です。多くの友人を持つよりも、信頼できる1〜2人と共通の興味を分かち合う方が、満足感が得られやすいものです。
心の持ち方を変える
友人を作ることは、相性の良い相手を見つけることでもあります。適切な相手に出会えば、自然に関係が発展します。うまくいかない場合も、拒絶されたと感じず、最良の縁があれば長続きする友情が生まれると考えましょう。
家族や友人に連絡する
孤独を感じたときには、家族や友人に連絡を取ることを忘れずに。環境の変化で孤独感が増すことがありますが、そんなときこそ家族や友人のサポートが心の支えになります。
専門家に相談する
もし孤独が日常生活や仕事、学業に大きな影響を与えるようなら、専門家に助けを求めることも一つの方法です。
孤独は深刻な健康問題となり得ますが、適切に対処することで、健康と強さの源に変えることができます。
この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。
(翻訳編集 華山律)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。