1月25日、 ドイツ政府は、独製主力戦車「レオパルト2」をウクライナに供与すると発表した。写真は2022年11月、演習のためスイス国内を移動するスイス軍の「レオパルト2」戦車(2023年 ロイター/Arnd Wiegmann)

情報BOX:独戦車「レオパルト2」、ウクライナが欲しがる理由

[25日 ロイター] – ドイツ政府は25日、独製主力戦車「レオパルト2」をウクライナに供与すると発表した。ポーランドなどの保有分をウクライナに提供することも認める。

ウクライナ政府は、数カ月前からロシアの防衛線を突破するには火力の増強が必要だと訴えてきた。特に英国の「チャレンジャー2」や米国の「M1エイブラムス」など他の戦車に対して優位性がいくつもあるとして、レオパルト2の提供を強く求めていた。

<レオパルト2が欲しい理由>

レオパルト2の強みは西側陣営で最も優れた戦車の1つということに加えて、最も広く使用されている戦車の1つだという点にある。

現在、20カ国ほどで運用されており、いくつかの国が保有分の一部をウクライナ支援に回すことが可能だ。単一のモデルを大量に運用すれば、ウクライナにとっては乗員の訓練や保守管理がしやすくなる。

レオパルト2は1978年に製造が始まり、累計生産台数は3500両余りに上る。ドイツのクラウス・マッファイ・ヴェクマンとラインメタルが共同生産し、重量60トン強、口径120ミリの滑腔砲を備え、最大射程距離は5キロメートル。カナダ、デンマーク、フィンランド、オランダ、ノルウェー、オーストリア、ポーランド、スペイン、スウェーデン、トルコなどで運用されている。

<調達可能な数>

レオパルト2は広く運用されているが、旧ソ連崩壊後に多くの国が軍隊の規模を大幅に縮小したため、欧米のほとんどの国では戦車や重火器が不足している。

ドイツの軍事専門家、カール・シュルツ氏によると、ドイツは冷戦が最も激しかった時期に主力戦闘用戦車を約4000両保有していたが、現在保有するレオパルト2は約350両。

また、レオパルト2をすぐに大量に購入することは不可能だ。ドイツの防衛産業は法律によって在庫維持のための生産を禁じられている。通常、新しい戦車を発注する国は納入まで2-3年待つ覚悟が必要だ。

仮に生産が拡大されても、最初の出荷まで少なくとも2年かかると専門家はみている。

<代わりの戦車はあるか>

米国はゼネラル・ダイナミクス社製のM1エイブラムス数千両を運用しており、米政府関係者によると、これまでの方針を転換してウクライナに数十両を提供する構え。

しかし、M1エイブラムスはガスタービンエンジンで駆動し、燃料の消費量が多い。軽油でも駆動可能とはいえ、ウクライナにとっては燃料の補給維持が難しく不向きと見られている。

レオパルト2はケロシンよりも入手しやすい軽油を燃料とし、燃費も優れている。

英政府は今年1月にチャレンジャー2を14両提供すると発表した。だが、レオパルト2と違って運用が広がっておらず、ウクライナに提供できる数量に限りがある。

また、120ミリの滑腔砲を搭載するM1エイブラムスやレオパルト2と異なり、チャレンジャー2が搭載しているのはライフル砲で弾薬も異なるため、相互運用性の面でも制約がある。

フランスは120ミリ滑腔砲を搭載する主力戦車・ルクレールの提供を検討していると明らかにし、全ての選択肢を検討する方針を示した。

しかし、海外の軍事活動の面から提供可能な数に制限がある。また、ルクレールは保守管理の負担が重く、ウクライナにとって理想的とは言えないとしている。

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