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早歩きは様々な病気のリスクを軽減する
全体として、早歩きはがんや心疾患による死亡リスク、認知症のリスクなど全死因死亡率を下げる可能性が高いです。この見解を支持する研究は、他にも数多くあり、多くの発見が得られています。
まず、早歩きは呼吸器系疾患による死亡率を低下させる可能性があります。
研究者たちは、歩行速度を4.8km/h未満(遅い)、4.8~6.4km/h(平均)、6.4km/h以上(速い)に分け、約32万人のイギリス成人に自分のペースと歩行時間を自己評価してもらいました。
平均5年間の追跡調査の結果、歩行速度が1段階上がるごとに、全死亡率が女性で9%、男性で10%低下することがわかりました。ゆっくり歩くのに比べて、早歩きは呼吸器疾患による死亡率を女性で28%、男性で24%減少させ、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の死亡率は、女性で71%、男性で51%減少しました。
そのため、研究者たちは、現代の多忙なスケジュールに適した、より短時間の早歩きを推奨しています。
早歩きは心不全などの
心血管系疾患のリスクも軽減します
アメリカでは、50〜79歳の女性2万5千人以上を平均17年間追跡調査し、早歩きには心不全予防効果があることを明らかにしました。
具体的には、平均的なペース(3.2km/h〜4.8km/h)で歩いた女性、または活発なペース(4.8km/h以上)で歩いた女性は、普通に歩いた人(3.2km/h未満)に比べて心不全のリスクがそれぞれ27%、34%低くなっていたのです。つまり、ウォーキングや平均的なペースで歩くよりも、早歩きの方が心不全の予防に効果的という結果がでました。
また、早歩きは脳卒中のリスクを減らす可能性があります。
1万3千500人を対象とした7つの研究のメタアナリシス(似ている複数の臨床研究の結果を統合し、ある要因が特定の疾患と関係するかを解析する統計手法)では、早歩きは脳卒中のリスクを有意に減少させると結論づけています。
最も遅い歩行者(1.6km/h)に比べ、最も速い歩行者(5.6km/h)は、脳卒中のリスクが44%低いことが分かりました。
また、歩行速度が1km/h増加すると脳卒中リスクが13%減少しました。
また、36万人以上を対象にした別の研究でも、同様の結果が得られています。
1万歩をどう歩くのが効果的なのか?
どなたでも、毎週150分以上の中強度の活動を行い、少なくとも2日は筋肉を強化する活動を行うことが理想的です。歩行速度を4〜6.4km/hに保つことは、中強度の運動活動に分類されます。
しかし、おそらく時速何キロという単位のスピードを測ることは、多くの人にとって具体的なイメージを持ちにくいのではないでしょうか。
前述の通り、認知症を最小限に抑える歩数は、約4.84km/hの速度で1分間に112歩です。大雑把に言えば、1秒間に2歩程度で歩くのが比較的速い歩調ということになります。このペースを1日30分、週5日続けることができれば、150分の中強度運動をクリアすることができます。
さらに、時間や体力のない方でも、1日30分の早歩きで、研究で提唱された「1日3800歩」の基本目標をほぼ達成できるため、より効率的に認知症のリスクを低減することができます。
もし、30分の早歩きが体力的に厳しい場合は、短い時間から始めて、週に5分ずつ徐々に早歩きの時間を増やしていくと、体が順応していきます。また、早歩きとゆっくり歩きを組み合わせる場合は、早歩きの時間を30分確保するようにしましょう。
早歩きを始める前に、5分ほどゆっくり歩いて足首や膝を動かし、ウォーミングアップをしましょう。 ウォーキングの後は、5〜10分のリラックスタイムを設けて、心臓や呼吸を落ち着かせるとよいでしょう。
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