2型糖尿病を改善するために「食事療法の効果と注意点」

糖尿病患者のうち、約90%が2型糖尿病であると言われています。

薬では治らない病気

現在、いわゆる「糖尿病予備群」とされる人々は、本格的な糖尿病への進行を回避するため、一般的に病院で処方される薬剤によって高血圧、高コレステロール、高血糖などのリスク要因をコントロールしています。

しかしこれは、2型糖尿病の主要因であるインスリン抵抗性や、血糖を適切にコントロールできない健康上の問題などを、根本的に解決するものではありません。

つまり薬剤の服用は、血糖値の制御に一定の効果はありますが、2型糖尿病そのものについて根本治療することは、まだできていないのが現状なのです。

確かに、肥満の人が減量して体重を落とす(それが食事制限でも、胃の縮小手術でも)ことが、2型糖尿病の改善に役立つことを示す研究が増えています。

糖尿病患者にとって体重を落とすこと自体が目的ではありませんが、減量によって患者が自身の血糖値をコントロールすることは、糖尿病を改善するための重要なステップであることは言うまでもありません。

食事療法も「ある程度の効果」がある

また、複数の研究は、代用飲料(meal-replacement shakes)の効果、低炭水化物食の効果、地中海式の飲食を取り入れる方法などで、糖尿病を緩和できるかどうかを調べています。

この方面の研究はまだ続けられていますが、現在いくつかの初期的研究から見ると、これらの食事療法の効果は悪くないようです。

2型糖尿病の緩和にどの食事がより効果的かを知るために、我々が90以上の研究をレビューしたところ、1/3の患者が代用食を摂取し、1/5の患者が低炭水化物食を摂りましたが、いずれも減量の効果を上げるとともに、糖尿病をある程度は緩和させていました。

上述の2つの食事プログラムで減量を達成した患者は、その後リバウンドすることなく体重を維持できれば、おそらく治療から2年間は糖尿病を制御できると見られます。

同様に、低カロリー食や地中海式の食事も糖尿病の緩和に役立ちますが、その効果は、先述の2つより低い割合でした。低カロリー食では約5%の患者が、地中海食では約15%の患者が、治療から1年間は糖尿病を制御できると見られます。

「緩和」は治癒ではない

では「糖尿病を改善する」とは、どういうことでしょうか。

多くの専門家が認めているのは、「血糖値が糖尿病と診断されるレベルより低い」ということです。この場合、薬剤を併用するか否かはあまり考慮されません。ただし、一部の専門家は、食事療法の過程で薬剤を併用するべきではない、と考えています。

低炭水化物食は、体重を減らすことで2型糖尿病の緩和に役立ちますが、その後、炭水化物の摂取が再開されると血糖値は必ず再び上昇するのです。

つまり、これは糖尿病の症状の「緩和(mitigation)」と呼ぶべきであり、まだ「治癒にちかい意味の改善」つまり寛解(remission)とは呼べないことになります。

糖尿病は、まだ残っています。言い換えれば、とりあえず悪い症状が制御されているだけです。体の各器官の周囲についた脂肪が本当に減ってこそ、インスリンが正常に分泌されるようになり、病状も徐々に改善されると考えられます。

体重だけが指標にはならない難しさ

炭水化物は、体にエネルギーを供給する主な源でもあります。

炭水化物を減らすことは、体が摂取するカロリーが大幅に減少することを意味します。それは、一般的には体重を減らす効果があるのですが、いわゆるリバウンドも非常に起こりやすい「危うい状態」になっているのです。

そのため、実際には難しいことですが、低炭水化物食を長期間続けることができれば、血糖値をコントロールできるだけでなく、他の合併症リスクを減らすとともに、糖尿病の症状を改善する効果が得られるでしょう。

いずれにしても、我々の評価では、複数の良好な食事療法によって糖尿病患者の血糖値が改善され、多くの被験者で一定の効果があったことを示すエビデンスが多数得られました。

寛解を達成した患者の主な共通点は、少なくとも10〜15 kgの体重減少があったことです。

しかし、注意してください。「体重の減少」は重要な指標と思われがちですが、その中でも特に重要なのは「膵臓肝臓の領域における脂肪の減少」なのです。

例えば、明らかな肥満や体重過多ではない人が、すでに2型糖尿病になっているケースもあります。そのような人は、減量によって体重を減らせるスペースがあまりないため、減量以外の方法も考慮しなければなりません。

いずれにしても、体重だけを判断の指標とすることは適切ではないのです。

無理なく、長く続ける方法を

誰もが食事療法で2型糖尿病を緩和、あるいは改善できるわけではありません。

しかし、体重を減らすことによって、膵臓がインスリンを作り、肝臓がインスリンを使う機能をある程度回復させることは可能です。

食事療法を選択する上で大切なことは、自分に合った方法を選ぶことにより、無理なく、長く続けられるということです。

(翻訳編集・鳥飼聡)