古典美術の2度目の流行
ルネサンスの後、2世紀に亘り、バロック美術、ロココ美術が流行りました。豪壮で華麗なバロックに対して、ロココは優美で繊細な画風です。洗練されたローマ帝国の都市ーーポンペイの城が発見されたことをきっかけに、人々は再び古典美術に憧れるようになったのです。
西洋芸術は古代ギリシアや古代ローマを模範に昇華しています。18世紀後半の新古典主義の背景は、古代ローマ時代、ヴェスヴィオ火山の噴火により失われたヘルクラネウムとポンペイの遺跡の発掘と探究が人々の古代への関心を高めたことにあるのです。
パリで生まれたジャック=ルイ・ダヴィッド(1748-1825)の著名な作品「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」から、この世に比べる者などいないという尊大な気迫が感じられます。逞しい白馬に乗り、より高い場所を指差す若いナポレオンの姿、この絵画ではルネサンス期特有の「天を指し、地を踏む」という生命力が見事に表現されています。まさにこの白馬に乗るナポレオンが当時の人々の心に再び古代文明を蘇らせ、新古典主義絵画を推進したのです。
ルイ・ダヴィッドのもうひとつの傑作「ソクラテスの死」では、老いた人間の体と寒色の色調が見事にこの悲劇を表現しており、神の時代が終わり、人類中心の時代が始まることを物語っています。
ロマン主義:再び「エデンの園」へ
ロマン主義はフランス革命をきっかけに巻き起こされた精神的な運動であり、音楽や文学、絵画、演劇など幅広い範囲に影響を及ぼしています。ロマン主義は恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴をもち、イギリスの詩人ジョン・ミルトンは感動的な長編叙事詩『失楽園』を残しました。
多くのロマン主義の詩人や芸術家にとって、人類は天国から追放された不幸な存在であるため、皆ユートピアに対して強烈な感情を抱いているのです。もしかすると、これが原因で、近代国民国家の形成が促進されたのかもしれません。
(つづく)
(翻訳編集 華山律)
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