ルネサンスは 神と人類文明 どちらを称えているのか?(下)

ドイツの作家ゲルト・ブルーム(Gerd Blum)はその著書『Giorgio Vasari, the Inventor of the Renaissance』の中で、ジョルジョ・ヴァザーリが自分の時代をいかに賛美していたかに言及しました。

美術評論家のヴャルデマー・ヤヌシャック (Waldemar Januszczak)もドキュメンタリー映画『The Renaissance Unchained』の中で、ヴァザーリの主張を批判しました。

また、アリストテレス主義とキリスト教の融合は、8世紀から始まっており、ルネサンスの時からではないことも知られています。

実は、イタリアの芸術が最盛期を迎えたことは、修道院の工場が長い間受け継いできた工芸の伝統と、多くの国家の伝統文化と深く結びついています。
 

ルネサンス期の作品が何を伝えているのか?

ルネサンスによる影響が何であれ、様々な素晴らしい作品は未だ世界中の人々の心を引き寄せ、作品自体の意義も、技術面における成就を遥かに超えています。
サン・ジョヴァンニ洗礼堂には毎日大勢の旅行客が訪れ、その「天国への門」の周りはいつも観光者で溢れかえっています。

ロレンツォ・ギベルティが彫刻したこの門は、初めて見る人はきっと衝撃を感じるでしょう。ミケランジェロが「天国へ通じるに値するほど美しい門だ」と称賛したことで、この名前がつきました。また、この門に描かれたアダムが意識もうろうとしている状態で、体が宙に浮かび、神に命を授けられた瞬間を見て、多くの方が感動するでしょう。

 

「ポルタ・ディ・パラディーゾ(天国の扉)」の一部分、アダムとイブが描かれている。(Thermos/CC BY-SA 2.5)

 

このような傑作を鑑賞していると、時間が静止したかのようで、神に命を与えられたこの瞬間に感動の涙が溢れ出します。

ヴァザーリはその著書『Le Vite de Piu Eccellenti Architetti, Pittori, Et Scultori Italiani』(画家・彫刻家・建築家列伝)の中で、レオナルド・ダ・ヴィンチの遺言を引用しました。「私は神と全人類の怒りに触れた。芸術分野でなすべきことをしなかったからだ」

 

「レオナルド・ダ・ヴィンチの死」(1818年、ジャンオーギュスト・ドミニク・イングレス作)レオナルドはフランソワ1世が見守る中で息を引き取ったといわれている。(パブリックドメイン)

 

レオナルドが確かにこの言葉を言ったのかどうかを証明することはできませんが、この言葉はルネサンス期の芸術家たちの動力となり、彼らは人類よりもさらに大きな価値に動かされて、神の創造を称えるために努力していたのです。
(完)

(翻訳編集・天野秀)