メラトニンが、アルツハイマー型認知症の予防と改善に、新たな可能性を開くかもしれません。(Shutterstock)

メラトニンに新しい可能性「認知症予防と改善に大きな期待」(1)

アルツハイマー認知症に関する専門誌『Alzheimer.s and Dementia Journal』に発表された最近の報告によると、米国では2019年だけで12万1千人以上が、この疾患に関連する原因で世を去りました。これは、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の流行前に起きたことです。

コロナ以降「米で認知症関連死が16%増加」

一方、米国のアルツハイマー病協会は、「新型コロナウイルスの流行以来、アルツハイマー型をふくむ認知症に関連して死亡した人の数が16%増加した」と発表しています。

しかし、この疾患に対する、ある新しい治療法が人々に希望を与えています。

神経学関係の専門誌『Revue Neurologique』の最近の記事で、研究者は、天然メラトニンが、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病のような神経変性疾患の予防あるいは症状を改善する上で、「エキサイティングな可能性を示すかもしれない」と少し興奮気味に報告しています。

もちろん、まだ可能性の段階です。しかし同報告で、研究者は「メラトニンは、私たちが探している解決策になるかもしれない」とまで結論づけています。

 

神経を保護するホルモン

内因性ホルモンの1種であるメラトニンは、睡眠や生体リズムの調整作用をもつ物質です。

よく知られていることですが、日中の明るい光を浴びるとメラトニンの分泌は減少します。夜暗くなりメラトニンの分泌量が増えると、体を入眠するように向かわせます。

メラトニンが誘う良質で安らかな眠りは、人の神経を保護し、明日への活力を養います。

しかし、なぜ研究者たちは、メラトニンのもつ神経保護作用に、それほど認知症改善の希望を抱いているのでしょうか。

 

メラトニンは記憶力を高める

メラトニンは、一般的に「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、脳の松果体で作られます。

この重要なホルモンは、日光の明るさに応じて体の生活リズム合わせるとともに、睡眠と覚醒のサイクルを調節し、睡眠の質を改善します。

研究者は、かなり以前から「メラトニンは記憶力と認知能力を向上させる」という仮説を立ててきましたが、なかなかそれを立証するエビデンスが得られませんでした。

精神薬理学の専門誌『Psychopharmacology』に掲載された記事によると、あるプラセボ(試験用偽薬)を使った対照研究で、若い男性50人にメラトニンの初回用量3 mgが投与されました。

その結果、メラトニン群の参加者はプラセボ群よりも多くのことを記憶リストから思い出すことができたと言います。これを受けて研究者は、「メラトニンは記憶処理に影響を及ぼすストレス誘発ホルモンを抑制できる」と結論づけています。

 

高齢者の認知力改善に有効か?

メラトニンは、高齢者の認知力改善に効果があるのでしょうか。

とくに、アルツハイマー型認知症を改善できるか、病状の進行を抑制することができるかどうかが関心の中心になります。

メラトニンは若い人の体内には大量に存在していますが、年齢とともに分泌量が減っていきます。先述のプラセボ対照研究の著者は、アルツハイマー型認知症患者のメラトニンのレベルが同年齢の健康な人より低いことに注目し、「メラトニン不足がアルツハイマー型認知症の進行に関係している可能性がある」と指摘しています。

このことからして、メラトニンの生体内レベルの上昇は、加齢に伴う記憶力低下および認知障害に抵抗するだけでなく、メラトニンのもつ神経保護作用が神経変性疾患の進行を遅らせるのに役立つ可能性がある、と考えられるのです。

 

(次稿に続く)

(翻訳編集・鳥飼聡)

 

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