理系的な言葉で言えば、我々が今見上げている青空も、分子によってできたものだ。もっとミクロな粒子、それよりもさらにミクロな粒子によってできた空間こそ、本当の空なのかもしれない(Photo by Kevin Winter/Getty Images)

映画『マトリックス』随想

この間、ネットで「カンフー」を調べていたら、映画マトリックス』の一部のシーンが出てきた。ほんの一部だが、以前この映画を見た時の記憶や考えを呼び起こすのに十分だった。

この映画の初めあたりで、モーフィアスがこのようなことを言ったのを覚えている。

 

“Have you ever had a dream, Neo, that you were so sure was real? What if you were unable to wake from that dream? How would you know the difference between the dream world and the real world? ”

「夢を見たことはあるか?現実としか思えないような夢を。夢から起きられなくなったとしたら、どうやって夢と現実の世界の区別をつける?」

 

街を歩いている時、行き来する車やひたすら前へと進んでいく無表情な人々を見て、我々が今いるこの世界も、もしかすると、もっと大きくてリアルな別の空間の中に存在しているのではないかと時々思う。

映画の中で、ネオは仮想世界にいて、よく行くレストランや、好きな食べ物、歩いた街、何もかもよく知っているのに、実はただのプログラムで、現実世界ではただの数字でしかなかった。

理系的な言葉で言えば、我々が今見上げている青空も、分子によってできたものだ。もっとミクロな粒子、それよりもさらにミクロな粒子によってできた空間こそ、本当の空なのかもしれない。

宇宙はあまりにも広く、私が思うに、現在の科学で認識しているのは宇宙のほんの僅かな一部でしかない。科学にとらわれず、すでに形成された観念を取り除いてこの世界を見れば、もしかすると、現在の認識と真逆のことに気づくかもしれない。

しかし、この目で自分の見たいものしか見えないのが人間だ。

映画の中で、スプーン曲げをする少年がこのように言ったのを覚えている。

 

“Do not try and bend the spoon. That’s impossible. Instead… only try to realize the truth.”

「スプーンを曲げようとしちゃダメ。そんなのは無理だ。そのかわりに…真実を見ようとすればいい」

 

“There is no spoon.”

「スプーンなんてないんだ」

“Then you’ll see, that it is not the spoon that bends, it is only yourself.”

「そうすれば分かるよ。曲げるのはスプーンじゃない。自分自身なんだ」

 

多くのカンフー映画で、このようなシーンがよく見られる。クライマックスの時、主人公は布で自分の目を覆い、周りの物事に影響されず、現実に動揺せず、自分が正しいと思う判断を下すといったようなシーンだ。

『マトリックス』シリーズの中で、どれかは忘れたが、「選択(choose)」という言葉が出てくるようになった。いくつものドアが目の前に現れた時、あなたがやるべきことは、そのうちの一つを選んで開けることである。

一つ一つの選択の先に何が待ち受けているのかはわからない。しかし、それはきっとあなたにとって、最も良いことだと思う。

もちろん、人生は良いことばかりではない。時にはトラブルもある。しかし、そのトラブルを乗り越えた先には、きっと素敵なゴールがあなたを待っている。

(作者・風一楊/翻訳編集・天野秀)

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