2月27日、西側諸国が26日、ロシアの「一部」銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除すると決めたことは、同国経済に深刻な打撃をもたらす一方で、西側の企業と銀行にも大きな痛みを及ぼす。捨身はSWIFTのロゴと、ロシアとEUの旗のイメージ。26日撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

焦点:SWIFTでの制裁、ロシア経済に壊滅的打撃も

[ロンドン/ニューヨーク 27日 ロイター] – 西側諸国が26日、ロシアの「一部」銀行をSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除すると決めたことは、同国経済に深刻な打撃をもたらす一方で、西側の企業と銀行にも大きな痛みを及ぼす。西側が制裁をさらに拡大する余地を残している点も重要だ。

SWIFTは国境を越えた迅速な決済を可能にするメッセージシステム(ネットワーク)で、国際貿易の主要な決済手段となっている。

SWIFTから排除されたロシアの銀行は、友好国の中国などを含めて国外銀行とのやりとりが困難になり、円滑な貿易取引が難しくなり決済手続きコストが上昇するとみられている。

西側諸国は、ロシア中央銀行によるルーブルの買い支え能力を制限する措置も約束している。ただ、SWIFTの排除対象となる銀行名はまだ明らかにされていない。専門家は、どの銀行を対象にするかによって、この措置の効果は大きく左右されると言う。

「悪魔は細部に宿る。どの銀行が選ばれるか見守ろう」と言うのは、アトランティック・カウンシルのユーラシア・センターに所属する経済制裁専門家、エドワード・フィッシュマン氏だ。

同氏は、ズベルバンクやVTB、ガスプロムバンクといったロシア最大級の銀行が対象に入れば「決定的な大打撃となる」とツイッターに記した。

ズベルバンクとVTBは先に、どんな展開にも備えていると表明した。

金融情報についての訓練プログラムを提供する企業を営むキム・マンチェスター氏は、SWIFTからのロシア排除について「まさにロシアの銀行の急所に切り込む」対応だと指摘する。

マンチェスター氏によると、バイデン米大統領はこれまで制裁対象を選別してきたため、今後さらに多くの銀行を排除し、最終的には一律排除して制裁を強める余地がある。「移動弾幕射撃」のようなものだという。

<ロシア経済に壊滅的打撃>

SWIFTからのロシア排除は、同国の経済と市場に壊滅的な打撃をもたらす可能性がある。

ロシア中銀の元副会長で今は米国在住のセルゲイ・アレクサシェンコ氏は、28日に市場が開くと通貨ルーブルは暴落し、ロシアへの多くの輸入が途絶えることになると予想。「(ロシア)経済の大きな部分が終わりを迎える。最終消費に関連した市場の半分が消滅するだろう。支払いができないとなれば、消費財は姿を消すことになる」と語った。

もっとも、あるロシアの元銀行幹部は、排除の対象が既に制裁を受けている銀行に限られたり、ロシア中銀が資産を別の場所に移す時間的余裕を与えられたりすれば、制裁の効果は鈍りかねないと言う。

「既に制裁を受けている銀行であれば、これまでと大して変わらない。しかし、ロシアの上位30行が対象となれば、話は全く違ってくる」と説明。西側諸国の発表は「非常に大々的なものに聞こえ、だれもが大喜びしているが、現実には政治的な発表だ」と述べた。

先に米国が発表したズベルバンクやVTBなど数行への制裁は、ロシアの金融機関による外為取引(1日460億ドル程度)の大半に直接照準を定めた対応だ。ロシアにある銀行資産の約8割が標的となる。

ロシアは、SWIFTに代わる独自の決済網「SPFS」を構築している。中銀によると、2020年時点でロシア国内の決済の約2割に当たる約200万件のメッセージがやり取りされており、2023年にはこの割合を3割に増やしたい意向だ。

だが、SPFSはメッセージのサイズに制限があり、営業日にしか稼働しないため、外国銀行の加盟は進んでいない。

<金融版の核兵器>

ロシアの銀行をSWIFTから排除することは、苦渋の決断だった。

過去数日間、ウクライナは西側諸国に排除を要請し、英国などの国々は賛意を示したが、ドイツなどの国々は自国の経済や企業への影響を懸念していた。

フランスのルメール経済・財務相は25日、SWIFTからのロシア排除は「金融版の核兵器」だと発言。「あなたがもし核兵器を手にしていたら、使う前によく考えるはずだ」と記者団に述べた。

しかし、ロシア軍がウクライナの首都キエフへの攻撃を開始し、外交的解決の希望が薄れると、潮目は変化した。

ドイツは26日に態度を軟化させ、「巻き添え被害」の抑制に務めながらロシア銀をSWIFTから排除する方法を探る姿勢を示した。

金融情報の訓練に携わるマンチェスター氏によると、一部の銀行だけを排除の対象とした場合、ロシアの銀行は制裁対象から外れた銀行や多国籍のグローバル行を介して国際金融システムにアクセスする「ネスティング」と呼ばれる迂回手段を使うとみられる。

グローバル行は、自行が支援している取引が西側の制裁措置に抵触していないことを確かめる必要が生じ、コンプライアンス(法令順守)上、頭の痛い問題を抱えることになる。

マンチェスター氏は25日、あるグローバル行の金融犯罪部門から相談を受けた。こうした銀行は、うっかり制裁に抵触してしまうと重い罰金を科される恐れがあるため「最新の動向を理解するための勉強に余念がない」とマンチェスター氏は述べた。

(Catherine Belton記者、 Paritosh Bansal記者、 Megan Davies記者)

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