必須栄養素の一つであるビタミンDは、カルシウムの吸収促進や骨の形成に重要な役割を担うもので、人体に不可欠な物質であることは言うまでもありません。
ビタミンD欠乏症は「気づかない病」
ビタミンDは、食材としてはキノコ類に含まれるくらいですが、「日光を適度に浴びることにより、体内で合成できる」という不思議な栄養素です。
一方で「ビタミンD欠乏症」という病名があります。
日光に当たる時間が少なくなった現代人には、もはや普遍的な病とも言えるものですが、このビタミンD欠乏症には、長年にわたり無症状であるケースも多いため「なかなか自覚できない」という、サイレントキラー的な恐ろしさが伴うのです。
ビタミンDは、ウイルスや細菌の感染症に対抗する免疫力の維持にも、大きく関わっています。
つまり、ビタミンDの体内保有量を健康上必要なレベルで維持することは、風邪やインフルエンザの予防、さらには新型コロナウイルスの感染予防にも非常に重要なことなのです。
このことは、オミクロン株をはじめとする新たな変異株が猛威を振るう昨今、ぜひ認識を新たにしたい重要事項の一つと言えます。
ビタミンD欠乏症の可能性を示す「14の徴候」
ビタミンDレベルを判定する最善の方法は血液検査ですが、ここでは検査の前に、ビタミンDレベルが低いことが疑われる「14の徴候」を挙げることにします。
1、筋肉痛
筋肉に大きな負荷がかかると、筋繊維が損傷を受けて筋肉痛が起きます。ビタミンD不足は、筋肉痛をひどくする要因になります。
2、骨の痛み
ビタミンD欠乏は骨軟化症と呼ばれる症状を引き起こします。あるいは骨粗しょう症の前兆かもしれません。
3、疲労感
疲労感は、睡眠不足を含めて、さまざまな原因が考えられますが、ビタミンD欠乏もその原因になります。
4、筋力の低下
ビタミンDは、筋肉の発達、筋力維持に不可欠な栄養素です。
ビタミンD欠乏症はスポーツ選手にも起こり得ますが、その場合、筋力の低下を先に自覚し、後から原因を探すケースが多いと言えます。
5、脳の機能の低下
ビタミンDは脳の健康にも欠かせません。
脳に関するビタミンD欠乏症の症状としては、アルツハイマー型認知症の一因であるアミロイドβの増加などがあります。また、うつ病との関連を指摘する研究もあります。
6、睡眠障害
良質の睡眠がとれない睡眠障害とビタミンD不足との関連性については、まだ詳しくは判っていません。
しかし研究によると、ビタミンDレベルの低い人に多くの睡眠障害が見られます。
7、頭部に汗をかく
大量の発汗、特に頭部の発汗が多い人は、ビタミンD欠乏症を示唆している可能性があります。
8、脱毛症
ビタミンDは、表皮に存在するケラチノサイト(角化細胞)の増殖に必須であり、毛髪周期においても重要な役割を果たします。
ビタミンDの欠乏は毛髪周期を不安定にするため、脱毛につながる可能性が高まります。
9、傷の治癒が遅い
ビタミンDは、抗菌ペプチドの産生を促進することで、傷口からの感染症に抵抗します。ビタミンD不足はその機能を低下させて、傷の治癒を遅らせることにもなります。
10、めまい
ビタミンDは、内耳の発達にも必須の物質です。
ビタミンD不足は内耳にも悪影響を及ぼすため、めまいを起こしやすくなります。
11、心臓に問題が生じる
ある臨床研究は、ビタミンD3が血流を改善し、高血圧の改善に役立つことを示しています。一方、別の研究では、ビタミンD3が心血管システムの内皮細胞に著しい影響を与えることを発見しました。
それらの知見から、ビタミンD欠乏は心臓に問題を生じさせることが考えられます。
12、体重増加
ビタミンDが体重にどのように関係するかは、まだよく判っていません。
しかし、肥満の人にビタミンD欠乏が多いことをデータは示しています。
13、感染症に罹りやすくなる
複数の疫学研究により、ビタミンD欠乏症は感染症のリスクを高め、特に呼吸器感染症において重症度を高めることが示唆されています。
14、認知機能の低下
ビタミンD欠乏は認知症の発症リスクを高め、認知機能障害を招きやすくなると言われています。
COVID-19と「ビタミンD欠乏症」との関連性
これまでに新型コロナウイルスに感染した人の約80%は、ビタミンDが不足していたことが判明しています。
ビタミンDのレベルは、多くの疾患の発症リスクおよび重症化リスクに、重要な役割を果たすことが判っています。
だからこそ私は、今回のパンデミックが始まった当初から、「ビタミンDレベルを最適化することが、陽性検出率、感染率および死亡率の抑制に効果がある」と考えて来ました。
パンデミック2年となる今日、それが事実であることを示すデータが増えています。
新型コロナウイルスの大流行以前から、「ビタミンDが不足している人は、重篤な病気にかかるリスクが高い」というデータがあったことを、私たちは知っておくべきでしょう。
しかし同じコインの裏側、つまり「ビタミンDを補充すれば、重症患者の病状を改善できる」という仮説については、まだ議論の余地があるかもしれません。
(文・Joseph Mercola/翻訳編集・鳥飼聡)
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