岸田文雄総理大臣 (Photo by DU XIAOYI/POOL/AFP via Getty Images)
【エルドリッヂ氏独占インタビュー】

自民党は民意を正しく把握し、台湾と連携を強化せよ

米国では、台湾に対する理解がかなり増進していると思う。台湾寄りの立場を明確にしたり表明したりする政治家や学者がますます多くなり、彼らが勇気を持って発言できるようになっている。

世論調査でも、アメリカは台湾を守るべきという意見が過半数を占めた。エリート層と一般国民の意識がどちらも台湾寄りになっていると思う。さらに、中国共産党に対して非常に批判的な人たちが7割、脅威だと思う8割ほど存在する。人権問題や政治体制、覇権主義の現実を知れば知るほど、国民の反感がさらに増えるだろう。

中国共産党が台湾に対して行っていることを批判しなければ、その矛先はいずれ日本にも向けられるようになるだろう。

立法を通して台湾との連携を強化する

日本は法律に対して非常にうるさい国だ。なにごとにおいても法律がないと行動できない。いっぽう、世界の常識は、禁止されなければできるというもの。日本の場合はすなわち、ポジティブリストのようなものだ。つまりOKがないと、ダメ。

そのように解釈されている以上は、少なくとも台湾関係法や台湾基本法、台湾交流法などのような法律を作ったほうがいいだろう。私は「日本版台湾関係法」が一番分かりやすいと思う。米国の台湾関係法という既存のものがあるので、それに近い内容にすればよい。

このような法律が成立すれば台湾との様々な交流が簡単になる。後は政治的な問題だ。

合同軍事演習のような交流も全く不可能ということではない。例えば、多国間の軍事演習には主催国がいて、招待する国を決めることができる。どの国と連携するかは、国同士で決める。また、訓練のどの部分に参加するかは自国で決められる。米軍などは長い間タイで他国と訓練を行っていたが、2000年半ばごろから日本も参加し始めた。最初はオブザーバー参加だったが、その次は非戦闘員の避難に参加した。このように徐々に既成事実を積み重ねていけば、国内法に基づいてできること、そしてできないことを細かく調整することができる。

日本の近年の政策転換は目を見張るものがある。私の海兵隊OBは数か月前に日本の防衛政策について振り返る論点を発表した。五年前の日本の行動は改善すべき点が多々あったが、日本が短期間で様々な制約を乗り越えて実行に移していると考察している。ということは、今、考えられない政策転換や進展があるかもしれない。

そのような意味では政治家の意思が大切になってくる。例えば、私が大変尊敬する「ヒゲ隊長」こと佐藤正久参議院議員は非常に積極的に行動している。台湾との間で安全保障対話を開催するなど、日台間の交流を推進している。このことは前向きに評価できると考える。

自民党は民意を正しく把握すべき

自民党は日本の世論を読み間違えていると思う。世論は中国に対して強硬な姿勢を求めているはずだ。しかし、世論が大切だ、と言いながら与党や公明党は勝手に中国寄りの姿勢になっている。このままでは国民が怒るかもしれない。国民の意見がすべて正しいわけではないが、正しいことは正しいことだ。

自信があるのなら、台湾問題で勝負しようと言えばいい。日本国民がそこまで強硬でないというのであれば、政治家一人ひとりが台湾を支持するか否かを表明すればいいと思う。

岸田総理は総裁選で「話を聞くこと」をアピールしている。問題は、どのような話を聞いているかである。経済界から対中宥和の声が聞こえているのかもしれない。そして、毎日どのような人物に会っているのかをチェックすれば見えてくるものがあると思う。

私は何も中国とケンカしろと言っているわけではない。中国の言いなりになってはいけないだけだ。中国の独裁的な政治体制、法や規範からの離脱、人権の蹂躙、そして覇権主義的な拡張。これらのことは絶対に許してはいけない。(つづく)

ロバート・D・エルドリッヂ

1968年米国ニュージャージー州生まれ。政治学博士。米リンチバーグ大学卒業後、神戸大学大学院で日米関係史を研究する。大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖アメリカ海兵隊政務外交部次長としてトモダチ作戦の立案に携わる。著書は『尖閣問題の起源』(名古屋大学出版会、2015年)など多数。

(聞き手・王文亮)

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