「笑うことの効能」それがあなたの健康を守ります

笑うことは、いいことです。
嬉しいとき、楽しいとき、面白いと思ったとき、人はお腹をかかえて笑います。
 

「笑えないこと」が意味するもの

他の人を冷たく笑うのは、あまり良くないので止めておきましょう。
それから、人間とは不思議なもので、とんでもなく大きな不幸に突然襲われたとき、唖然として「笑ってしまう」こともあります。

悲しみがモンスター化すると、人は精神が一気に弛緩して、笑うしかなくなるのですが、その笑いも歓迎すべきものではありません。

10年前の東日本大震災があったとき、テレビのバラエティ番組もCMも一斉に喪に伏したよう凍りつき、「笑い」を失くしました。一時的とはいえ、日本中が笑えなくなったのです。
笑うことが許されなくなった雰囲気の日本でしたが、その年の春にも、子供の笑顔のような花が咲きました。

そして今、特に昨年のコロナ第1波のころは、日本中で顔をひきつらせて緊張したため、とても笑えなくなっていました。夜の飲食店も、寄席も、映画館も、カラオケボックスも、観光地も、どこもかしこも「大勢で、楽しく笑ってはいけない場所」になってしまったのです。

これで分かったことといえば、笑えないことは、人間にとって「不健康な状態」であるということです。
 

「笑い」は副作用のない解毒剤

では、笑うことは「健康」な証し、と言えるのでしょうか。
確かに、笑うことが「天然の解毒剤」になるという考え方が、海外にもあるようです。

笑いは、痛みを止め、憂鬱を散らし、病気を改善してくれる、副作用がない妙薬です。研究によると、人が笑う時、心身の両面に、多くのポジティブな変化が起こると言います。

あるユーモアのある牧師が、けがで入院したところ、痛みが激しかったので鎮痛剤を打ってもらおうとしたそうです。牧師は、女性の看護師さんが注射してくれると思い、イタズラ心で、お尻を出したままベッドにうつ伏せになっていました。

ドアが開いたので「注射を打ってください」と言うと、入ってきたのは、なんと教会の同僚の女性職員でした。

大恥をかいて反省した牧師でしたが、あとで注射を打つため入ってきた看護師さんにその話をすると、自分で大笑いしてしまい、痛みも忘れていたと言います。

同じく、米国のジャーナリストで原爆投下直後の広島も取材したノーマン・カズンズ氏は、その著書『笑いと治癒力』のなかで、重病で余命が数カ月しかないと言われた自身の体験を語っています。

カズンズ氏は、自分の意思で病院を出て、ホテル住まいを選択します。

ホテルの部屋では、ビタミンCの錠剤を多めに服用し、一人芝居の「喜劇」を演じたと言います。そうして10分ほど笑うと、痛みもなくなり、2時間ぐっすり眠れます。

余命を宣告された同氏でしたが、やがて病状も回復に向かい、職場復帰も可能になって、それから20年ほど生き延びたと言います。
 

ストレスを軽減し、免疫力もアップ

「笑い」の効能は患者の痛みを止めるだけでなく、憂鬱な感情を散らし、精神的なストレスを軽減することで、免疫力を向上させるはたらきもあります。

研究により、「笑い」はエンドルフィンという「脳内モルヒネ」を盛んにして、多幸感をもたらし、ストレスを軽減することが分かっています。さらに、例えば面白いコメディー番組を見ると、免疫グロブリンIgA、IgM、IgGの濃度が著しく高くなることも分かりました。

これらは、人体が本来もっている免疫機能を強化するもので、気持ちが沈んだ状態でいる時より、笑いによって明るい気持ちになっている状態のほうが、同じ人物でも、免疫機能が高まることを意味しています。

笑いはまた、心臓機能を高めるはたらきもあります。思い切り声を出し、大きな口を開けて笑えば、良い意味で心臓も盛んに動くようになります。そうして全身の機能が活性化すると、次は「笑い」によって代謝がアップされ、カロリー燃焼も促進されるのです。

血圧の変化について、これはイランでの研究ですが、40人の人工透析患者にお笑い番組のCDを毎回30分、計16回を聴かせてそのデータを取ったところ、8週間以内にすべての患者で血圧の低下が見られたと言います。

アメリカ心臓協会の研究者も同様に、「笑い」を聴かせることによって、被験者の血圧が下がる現象を報告しています。
 

赤ちゃんは、なぜ「笑う」のでしょう

そして最後にもう一つ、「笑い」がもたらす、すばらしい効能をお教えしましょう。
ユーモアを理解し、よく笑う人は、寿命が長いのです。

精神医学の雑誌『Psychosomatic Medicine』に発表されたある大規模な研究では、ユーモア感覚の豊かな人ほど長生きすることが示されています。

ノルウェーのこの15年間の研究は、同国の53,556人のユーモアセンスと死亡率の関連性を分析したものです。研究チームはアンケート調査を用いて被験者のユーモアのセンスを評価し、特定の病気(心疾患、感染症、がん、肺閉塞)の患者とその死まで追跡調査しました。

結果は、ユーモア感覚の高い女性の心臓病での死亡リスクが73%減少し、感染症での死亡リスクが83%減少することを示すものでした。

これだけで十分な判断材料とは言えませんが、「よく笑う人」が長生きであることは、人間の気持ちのもち方として理想的であることから、うなずけると思います。

そう言えば、赤ちゃんは、なぜあんなに美しい顔で「笑う」のでしょう。

きっと、これから生きる寿命が、たくさんあるからなのですね。
(文・李小奕/翻訳編集・鳥飼聡)