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がんを考える機会のために「男性の乳がんもあります」

国立がん研究センターの最新がん統計によると、「一生のうちにがんと診断される確率は男性65.0%、女性50.2%」。つまり、日本人の2人に1人が、生きているうちに何らかのがんに罹患するとされています。同じく「がんによって死亡する確率」は男性26.7%、女性17.8%であると言います。

華岡青洲が挑んだ「岩」

(がん)とは、人間の体内に「岩」のような腫瘍が生じるところからできた文字だと考えられています。

江戸時代後期の文化元年(1804)に、医師・華岡青洲が、臨床記録に残る事例としては世界で初めて、全身麻酔による乳がん摘出手術に成功しました。(注:中国後漢の華佗も麻酔薬「麻沸散」を使用したとされる)

その華岡青洲も、乳がんを「乳巖」「乳岩」と記載しています。華岡青洲が開発した全身麻酔薬「通仙散」には、ほとんど毒物にちかい成分も含まれているため、実際の使用には大変な危険がともないました。

麻酔薬の人体実験に身を捧げたことで青洲の実母は死亡し、妻は失明するという、すさまじい過程を経て「通仙散」は完成します。しかし、劇薬とも言えるこの麻酔薬の危険性もあって、華岡流の乳がん手術は門外不出の秘伝とされました。

華岡青洲が、親族を犠牲にしてでも得たかった麻酔薬は、もちろん手術中の患者の痛みをやわらげるためのものですが、彼の信念は、外科手術を実施することによって、この難病を何とか治療したいという、医師の燃えるような使命感に他なりません。

華岡青洲の時代から200年後の現代。乳がんと言えば、自己チェックや各種の検査機による早期発見も可能で、5年生存率も比較的高い種類のがんであると、一般的には言われています。

しかし、やはり「女性にとっては最も罹患しやすいがん」であることに変わりなく、残念ながら、死亡につながる事例もないとは言えません。

レアケースだが「男性の乳がん」もある

乳がんは、女性の、とくに中年から高齢期に多いとされていますが、比較的若い女性にみられる場合もあります。

そして、極めてレアケースではありますが、男性が発症する場合もあります。つまり、子宮がん、卵巣がんが女性に限定されるのとは違って、乳がんは男性にも起こり得る病気なのです。

男性に乳房はありませんが、乳腺組織はごく少量あるので、病変の可能性はあります。男性乳がんの早期発見率が非常に低いのは、乳がんが「女性特有の病気」だと考えられているためで、乳がんに関する保健や予防についての認識が、男性は圧倒的に不足しているからです。

そのため、男性の胸部に何らかの症状が現れても、乳がん以外の炎症や細菌感染によるものと自分で判断してしまいます。また、男性であるために、恥ずかしさもあって、病院で診察を受けることをためらい、確かな診断がさらに遅くなるのです。

男性が乳がんと診断された時には、すでに末期になっているケースが多く、他の器官にまで転移しているため、手術をしても、予後の状況と生存率は、女性の乳がん患者に及ばないことになります。

自分が病気になれば、それは「1分の1」

日本乳癌学会で、2015年に新たに登録された約8万7000人の乳がん患者のうち、男性は560人でした。そうすると、割合は女性の約155分の1でしょうか。

台湾では、男性の乳がん発生率は女性の200分の1と言われており、症例数としては、年間で30弱だそうです。

確かに「男性の乳がん」は少ないのです。男性が乳がんに罹る確率は、非常に低いと言えるでしょう。

しかし、こうした病例を数えるときに、自分自身をしっかり見据えて想像してみることもまた必要です。

もしも自分が罹患したら、それは1分の1。つまり「100%」ということになります。それが「男性の乳がん」であろうが、あるいは全く別の病気であろうが、同じです。

「なぜ人は病になるか」を考えてみましょう

冒頭に挙げた数値を今一度、思い出してください。

「日本人の2人に1人が、何らかのがんに罹る」。だからといって、誰もが今から戦々恐々となり、楽しむべき人生をしぼませてしまう必要はありません。

その一方で、やはり病を避けるための「実行可能な努力」も、実行して然るべきではないでしょうか。

喫煙は止め、飲酒はなるべく控えます。食べ物も、内容をよく理解して、健康的な食事を目指しましょう。良質の睡眠をとり、運動を適度に日常のなかに入れます。

心を穏やかに保ち、周囲の人に優しく接することを、日々の実践として心がけるのです。

そうした生活習慣から改善することは、まさに実行可能な努力の第一歩です。

さらにまた、こんなことも考えてみてください。

病とは、私たちの考えが及ばない、超常的な作用によってもたらされる場合があります。ときに、周囲から敬愛されていたすばらしい人が、思わぬ病で急逝したりすると、それを周囲が悔やんで「理不尽」としか思えないことがあります。ショックと悲しみからそう思うのも無理はないですが、やはり前世から蓄積されてきた何かが、その人の現世の病気につながったとも言えるのではないでしょうか。

前世から蓄積されてきたもののうち、善いものを徳といい、悪いものを業(ごう)といいます。

業を全くもたない人は、この世にいません。この業を「病をまねく原因」とするならば、業を返済させるために、誰もが病気になる可能性があるのです。

ならば私たちは、自身の業をきれいに消滅させるように、努めて良い生き方をしましょう。それは病院の治療薬を飲むよりも体に優しく、どんなワクチンよりも強い免疫力となって、あなたを守り、あなたの健康を維持することに役立つのです。

(翻訳編集・鳥飼聡)

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