国連本部(Photo by Daniel SLIM / AFP) (Photo by DANIEL SLIM/AFP via Getty Images)

なぜ遺体は家族の元に戻らない…国連報告者が投げた臓器収奪の疑問、中国は「捏造」と退ける

9人の国連人権特別報告官らが、中国政府は本人の同意を得ず少数民族や信仰者から臓器を摘出しているとの疑いについて問い合わせたが、中国側は事案自体を「捏造だ」と返答した。いっぽう、人権団体らは、中国の回答は疑惑の解明を行なっておらず、不十分で疑惑を深めるものと指摘した。

6月、国連人権高等弁務官事務所OHCHR)の公式ウェブサイトに発表された中国宛の公開書簡では、中国で民族や信仰を理由に拘束された人々は、必要性の認められない身体や内臓機能の検査を受けており、臓器移植用のデータベースに登録されていると指摘した。これらは、法輪功学習者やウイグル人が長らく証言してきた、臓器強制摘出の問題に一致する。

国連報告官は中国政府に対して、拘束された人々がなぜ臓器機能の検査を受けているのか、収容者が臓器提供に同意しているかどうか、なぜ遺体が親族の元に渡らないのかなどについて、法的根拠を提示するよう求めた。

この書簡を受けて、中国側は、国務院の命令や公安のガイドラインに基づき、拘束者の健康のために実施する検査であり、検査情報について知らされる権利があると説明している。加えて、臓器収奪に関する証言者らを批判した。「証言は捏造であり、不正に国際世論の注目を自分たちに集めようとする動きは失敗する」と疑惑を退けた。

人権団体は、中国政府の回答は疑いを払拭するには不十分であると指摘している。共産主義の犠牲者記念財団(VOC)、対華援助協会(チャイナ・エイド)および中国での臓器移植濫用停止ETAC国際ネットワーク(ETAC)の3つの人権と倫理の団体は、9月23日に声明を発表。中国政府の回答は、国連人権報告官らの疑義を検証する資料さえ提示していないと非難した。

中国政府の対応について、共産主義の犠牲者記念財団の理事長兼CEOで、米国の前ジュネーブ国連大使であるアンドリュー・ブレンバーグ氏は、「中国共産党が国連特別報告者の質問に対して、あからさまな嘘をついたことは恥ずべきことだ。いっぽう、驚くべきことでもない」と述べた。また、同財団の調査で、中国政府は臓器移植件数それ自体を改ざんしていることが明らかになったと指摘し、データの信ぴょう性もないと強調した。

ブレンバーグ氏は、国連の人権専門家らが臓器狩りに関する公開書簡をしたためたことを称賛したが、中国側の不誠実な返答を目の当たりにした米国や他の同盟国らは、中国に対する説明責任と問題追求の動きを止めてはならないと訴えた。

中国の臓器移植市場は、年間10億ドルの規模があると推計されている。病院や医療従事者、その他のインフラ設備に投資され、過去20年で大きく拡大した。2000年以降、信仰を理由に迫害される法輪功学習者の拘束が始まった時期と合わせて、中国の臓器移植産業は爆発的に活発化した。国や軍、警察が運営する移植病院が全国で数百あまり建設されたという。

関連記事
台湾の外科医が中国での違法な臓器移植仲介の罪で起訴された。今回の起訴は台湾での2015年の法改正以来、初めて。強制的生体臓器摘出が再燃する中、医療倫理や人権問題が焦点となっている。
12月10日、中国で厳しい弾圧の対象となる気功、法輪功の日本在住の学習者による証言集会が開催された。出席者は中国で家族が拘束されている現状や、自身が拘束中で受けた拷問の実態を訴えた。現在米国在住の程佩明さんもオンラインで参加。程さんは収容中に、拷問を受け、臓器を摘出された実体験について語った。
ドキュメンタリー映画『国家の臓器』が上映された。映画は中共による、生体臓器摘出の実態を描いており、映像を見た観客からは「非常に非人道的な行為だと強く感じた」「もっと多くの人に事実を知ってもらう必要がある」などのコメントが挙がった。
中共による臓器摘出から生還した程佩明さんが真実を告白。暗殺の危機に直面しながらも、真実を語り続ける姿勢に世界が注目し、米国も保護を進める。人権侵害の実態に対する国際社会の連帯が求められている
中国の中南大学湘雅第二病院に勤務していた羅帥宇氏が、不審な死を遂げた。生前の録音から、同病院が臓器移植研究のために子供のドナーを求めていた可能性が浮上。彼の家族は、羅氏が病院告発を計画していたことから口封じされたと主張している。