私は今、米国のシカゴにいます。
モンゴルの出身で、名前をRentsenkhorloo Budと言いますが、皆さんが発音しにくいので「レン」と呼んでいただいて結構です。年齢は……たぶん30歳ですかね。
噂によると、私は「世界一、脚が長い女性」なのだそうです。それが本当かどうか、私には分かりません。私はべつに、ギネス記録に興味があるわけではないのです。
天気の良い日には、ご覧のとおり、お気に入りのショートパンツにハイヒールで街を歩きます。それが私の大好きな時間です。
身長は205.7cm。これは避けようもない親譲りの遺伝子の結果です。なにしろ父は208cm、母は185cmですから。
私が街を歩くと、多くの人が、ニコニコ笑顔で寄ってきます。
「レン、君を知っているよ。一緒に記念写真を撮ってもいいかな」
皆さん、とてもフレンドリーで、私も好きです。もちろん時間が許す限り、誰にでも、写真のリクエストに応じてあげます。
私を奇異の目で見る人も、どこかにいるのかも知れません。ただ、そんな人は、私の近くには寄ってこないのです。私がこの身長のために困ることは、たまにドアの上の梁(はり)に頭をぶつけることぐらいですね。私に合うサイズの服はネットで探せますので、不便なことはありません。
そんな私がハイヒールを履くと、丘の上からモンゴルの草原を見渡すように、世界がさらに輝いて見えるのです。
爽やかな風が、私の髪をなびかせて吹きます。
背中をのばして息を吸うと、清らかな空気が、まっすぐ体内に入るのを感じます。
ハイヒールを履くと、青空が少しだけ、私に近くなったような気がします。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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