患者の魂が肉体から離れるのを見る
『史記』の記録には、扁鵲の治癒についての驚くべき物語が記されています。扁鵲は、昏睡状態にある患者の覚醒の瞬間や、将来の結果を予測することができました。
その患者は、晋国の権力者でした。目覚めた時の言葉は、扁鵲が予測した通りでした。 これは、古代で頻繁に起こる死の体験を記した、真の記録とも言えます。
晋の昭公の時代は、公室は弱かったのですが、役人は強かったのです。 ある日、趙簡子が体調を崩し、5日間も意識を失っていたため、役人たちは皆、恐れをなして扁鵲を宮中に呼び、扁鵲は趙簡子を治療したといいます。
家臣の董安于が趙簡子の病状を尋ねると、扁鵲はこう言いました。
「これは不整脈の病気で、簡単に治る。 その昔、秦の穆公もこの病気にかかり、目が覚めるまでに、7日間かかった。穆公は目が覚めた日に、秦の大官である公孫支と子輿に、『先代の地に行けることが嬉しくて、何かを学ぼうと何日もかけて行った』と語っていた。亡き皇帝は、『晋の国は大混乱に陥り、5世代は平和にならないだろう』と言っていた。そうすると、覇権国家になるが、残念ながら王様が年を取らないうちに死んでしまった」。
この言葉は、今や晋の国で現実となっていて、誰の目にも明らかでした。秦の穆公は亡くなった皇帝を見ており、本当に昏睡していたことを示しているのだと、扁鵲は付け加えました。
董安于は、扁鵲の診断を信じて、慌てずに気長に待つようにと皆に伝えました。 また扁鵲は、「今日の君主の病状は、秦の穆公とは異なり、3日以内に必ず目を覚まします。その時には、何か言いたいことがあるでしょう」と最後に断言しました。
案の定、2日半後に趙簡子は目を覚まし、大夫に次のように話しました。
「先帝の地に行って、とても幸せだったので、神々と一緒に順天に行って遊んできました。 熊が私を襲おうとしているのを見て、今は亡き皇帝が私に撃てと命じたので、私は矢で熊を打ち、熊は私に殺されました。 別の熊が出てきたので、また矢を射ると、また当たって死んでしまいました。 そして、亡き皇帝は、私のことを気に入ってくれて、持ち手のついた2つの器を与えてくれました。それから、横に息子が立っているのを見て、私に犬を渡し、『これは陛下の形見だ』と言いました。また、亡き皇帝は私に、『晋の国が何代も弱体化し続ければ、7代で滅びるだろう。 英という姓の人(注:秦の初代皇帝である英鄭)が、樊噲の西にある周の国を倒すが、その国も長くは続かないだろう』と言いました」。
董安于は、この一節を書き留めました。 彼は、趙簡子に扁鵲が言ったことを話しました。その後、趙簡子は扁鵲に、4万畝の土地を与えました。
歴史の書から、この扁鵲の話は『史記』に記録されており、患者の身元が明らかになっているため、誰もその話を改ざんしようとはしなかったと考えられています。
そして、この話は極めて真実味があり、扁鵲は超能力を使って、昏睡状態の患者の魂が体から離れる過程のすべてをその目で見て、未来までも見たのでしょう。
(翻訳・井田)