新疆ウイグル自治区にある再教育キャンプ。2019年6月2日撮影(Greg Baker/AFP via Getty Images)

深センの米国労働NGOが強制閉鎖 ウイグル人権調査後に締め付け

中国政府はこのほど、労働者の権利・人権問題に取り組むNGO「Verite(ベリテ)」の深圳事務所を突然に捜査し、閉鎖を命じたと報じている。ワシントン・ポストが8月19日に報じた。

ベリテは1995年に設立され、サプライチェーンにおける労働者の権利侵害を明らかにするために、何百もの企業、政府、NGOと提携してきた。中国深圳のベリテは、米国の労働者利権・人権問題に取り組む国際NGO・Verite Inc.の傘下にある。今回の強制閉鎖により、Veriteは中国で運営する資格が失われたことを意味している。

ベリテはかつて、ウォルト・ディズニーやアップルなど中国の工場での労働問題にアドバイザリー・サービスを提供したことがある。

ベリテ深圳事務所の閉鎖について、ワシントンポストは「中国のソーシャルコンプライアンス業界、特にウイグル関連の調査などに関わる組織に、報復の可能性が高まっている」と報じた。

労働者の権利を監視する団体が消えれば、多国籍企業が中国のサプライチェーンにおける労働環境を評価することがますます困難になる。

7月、米上院は「ウイグル強制労働防止法案」を可決した。さらに下院で審議され可決したのち、バイデン大統領が署名すれば法案が成立する。強制労働に関与していないことが証明できない新疆産の綿花やトマト、ポリシリコンなどの輸入は禁止される。

過去一年間、労働者権利団体やサプライチェーン・コンプライアンスの専門家によると、強制労働を調査する監査法人は、中国共産党への反論をますます恐れるようになったという。去年、多くの欧米の監査法人は、政府の厳しい監視と工場内への立ち入り禁止が原因で、新疆での強制労働に関する調査を全面的に中止すると発表した。

スウェーデンのアパレル大手H&Mは、人権的な懸念を理由に新疆綿を使用しないと発表したため、中国共産党によるボイコットの対象となった。同社と新疆をめぐる調査は、今回閉鎖されたベリテによって行われた。

この一件を皮切りに、中国当局はベリテに報復を始めた。3月、人民日報傘下の環球時報に批判的な記事が掲載されると、4月下旬には深圳事務所は捜索を受け、銀行口座も凍結されたという。

ここ数週間、ベリテの中国人従業員8人は、当局に定期的に喚問されている。毎日午前9時に警察署に出頭し、午後5時頃にしか帰ることができないようになっている。これらの従業員によると、現在、ベリテの中国事業全体が閉鎖され、地元政府が同社のオフィスを封鎖しているとのこと。

関係者によると、米国務省の関係者が中国側にベリテ社の中国人従業員の待遇について問題提起したという。

国務省報道官は「中国で重要な仕事をしているサプライチェーン監査人が拘束され、脅され、嫌がらせを受け、継続的な監視を受けているという報告を受け、深く懸念している」とコメントしている。

(翻訳編集・蘇文悦)

関連記事
通学中の学生を狙った社会報復事件が絶えない中国、学校前は厳重警備。
その非人道的な所業から多くの国から停止を求められている中共の臓器狩り。中国共産党は否定しているが、今回、党内部の官僚から内部告発があった。告発者は「これはすでに産業化された仕組みだ」と述べている
10年前、中共は「中国製造2025」計画を掲げハイテク製造業強国を目指した。しかし現在、中共は知的財産権侵害や不公正競争の指摘を受けている。EVや高速鉄道で進展も、核心的な技術は不十分だ。
中国の資本市場から11月に457億ドルの資金が流出し、過去最大を記録。トランプ氏の関税政策への懸念と中国経済の不安定さが主因。中国政府の景気刺激策は市場の期待に応えられず、人民元も下落。習近平は窮地に陥っている