2021年7月26日、中国を訪れた米国のシャーマン国務副長官は王毅外相らと会談した(FABRICE COFFRINI/AFP via Getty Images)

シャーマン米国務副長官が訪中、中国は「戦狼外交」を継続

中国当局は、25日に訪中した米国のウェンディ・シャーマン国務副長官に不満と非難を浴びせ、引き続き「戦狼外交」を展開した。今年3月、米アラスカで行われた米中外交トップの会談でも、中国側は冒頭のあいさつから米国への批判をまくし立てた。

シャーマン副長官は26日、天津市で中国外務省の謝鋒外務次官と会見し、その後、王毅国務委員兼外相と会談した。シャーマン氏は、バイデン政権が発足した後、中国を訪問した最高位の米政府高官である。

米国務省のネッド・プライス報道官が26日に発表した声明によると、シャーマン副長官は会談の中で、中国当局による香港弾圧、新疆ウイグル人の大量虐殺やチベット人への人権侵害などの問題を提起したほかに、サイバー空間、台湾海峡、南シナ海、東シナ海における中国当局の行動について米国の懸念を伝えた。

また、声明は「副長官は、中国が世界保健機関(WHO)に協力してCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の起源に関する第2段階の調査実施を望まない中国側の姿勢について、改めて懸念を表明した」とした。

いっぽう、中国外務省は同ウェブサイトで、シャーマン氏と謝鋒氏、王毅氏のそれぞれの会見について声明を掲載している。謝鋒氏はシャーマン氏との会談で、「米中関係は現在行き詰まっており、困難に直面している。この根本的な原因は、米国の一部の人が中国を『架空の敵』と見なし、中国を妖魔化する事で、米国内の政治、経済、社会に対する米国民の不満をそらし、米国内の構造的問題を中国のせいにしていることにある」と米側を非難した。

謝氏は、「米側がこの誤った考え方と危険な対中政策を改めるべきだ」とし、バイデン政権の中国当局に対する「競争・協力・対抗」政策を非難した。 同氏は、この3つのアプローチは中国共産党を封じ込め、抑圧するための「人の目をごまかす手段」であり、「(米側が)悪いことを全部やっているのに、良い部分を全部取ることを望んでいる」と述べた。

その一方で、同氏はこの会談で、「中国共産党は世界で最も成功している政党だ」「中国の特色ある社会主義は中国に最も適合している(中略)中国共産党は中国人民の大救世主だ」などと中国共産党をアピールした。

謝氏は、米国が「強圧的な外交」を行っていると非難し、北京は「いかなる国も強圧的に接したことはない」と付け加えた。

声明によると、謝鋒氏は米側に2通のリストを渡した。1つは、米国の対中政策及び中国当局に関する言動を改めるよう求めるもので、16項目ある。もう1つは、特定のケースに関する中国当局の懸念を記したものである。この中に、米政府が中国当局者などに科した制裁措置の解除、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)副会長である孟晩舟氏の身柄引き渡し要求の撤回を求める内容が含まれている。

また、中国外務省の声明によれば、王毅外相はシャーマン副長官との会談で、「米国の新政権は、前政権の極端で誤った対中政策を継続し、いつも中国のレッドラインに踏み込み、中国を封じ込めようとして抑圧を強めている」と糾弾した。同氏は、米側が「中国を主要な競争相手、あるいは敵対国と見なし、中国の近代化プロセスを阻止し、妨害しようとしている。この企みは実現することはないだろう」とした。

米政府はこのほど、中国当局がウイグル人住民や香港市民、法輪功学習者らに対して人権侵害を行っているとして、中国の当局者や関連団体に制裁を発動した。また、中国軍とのつながりがあるとみられる中国の防衛・ハイテク企業59社を投資規制対象に指定し、米国民や企業に対して、59社の株式購入などを禁じた。

中国当局は、シャーマン副長官の訪中に先立って、23日「反外国制裁法」に基づき、米側の対中政策への報復措置として、米国のロス前商務長官らに制裁を科すと発表した。

今年3月18日、米アラスカ州で行われた米中外交トップの会談では、中国当局の外交担当トップである楊潔篪・共産党中央政治局委員は冒頭発言で、15分間以上にわたり米国側を批判し続けた。国際社会は、中国側のこの「戦狼外交」に注目した。

マイク・ポンペオ前国務長官の中国政策顧問を務めた余茂春(マイルズ・ユー)氏は同月23日、大紀元英語版の時事番組「アメリカの思想リーダー」のインタビューを受けた際、中国代表団は米中間の問題を解決するためにアラスカを訪れたのではないと指摘した。「チープなプロパガンダ宣伝のポイントを稼ぎ、アメリアの民主主義を貶めるために来た」と同氏は語った。

AP通信社は22日、米国務省の関係者の話として、バイデン政権はシャーマン副長官の訪中を通じて、中国上層部と直接会う「機会を模索している」と報じた。

中国問題専門家のゴードン・チャン氏は6月23日に発表した評論記事の中で、バイデン政権が中国との関わりを持ち続けようとすることに疑問を投げかけ、アラスカでの米中外交トップ会談を例に挙げた。

「中国は今、実質的な議論をする気がないことは明らかだ。もちろん、米国の降伏を受け入れる目的は除く」とチャン氏は指摘した。

(翻訳編集・張哲)

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