万病を防ぐ第一歩は「端正な姿勢を保つこと」

現代に生きる私たちにとって、一日中背中を丸め、画面の一点を見つめながらキーボードを打ち、首を硬直させた姿勢でパソコンやスマホに向かうことは、仕事上避けられない宿命のようなものです。

しかし、そのことが原因で、ひどい頭痛動悸、目の疲れ、胸部圧迫感、胃の膨満感など、体に様々な異常が現れていませんか。長時間、背中を丸め、頭を下げている姿勢は、頸椎脊椎に与える負担が非常に大きいものです。そうした無理な姿勢からくるストレスや体の不調は、本当に健康を損なう病気につながりかねませんので、ぜひ注意してください。

頸部を正しく保って、まずは頭痛を改善

「姿勢が悪いことによる体の不調は、一般の人が思っているよりも多いです」と、骨格の専門家で心医学堂漢方医院の院長・呉国斌氏は言います。

頸部については、頭を下げると頸椎の第6椎と第 7椎が突出することで、神経伝達と血行が障害されることになります。それによって、まずは頭痛から始まり、次に肩や首の凝り、めまい、手指のしびれ、高血圧、不眠などが起こりやすくなります。深刻な例としては、脳卒中、三叉神経痛、認知症、頸椎症につながる危険性もあるのです。

さらに、こうした頸椎の圧迫は顔の五感にも影響を与えます。眼の病気で言えば、近視、かすみ目、ドライアイ、乱視、緑内障などの疾病のほか、重症者は突然失明することもあります。

そこで、がっくり下げていた頭を上げ、下顎(したあご)を軽く引くようにすると、頸椎は正常な湾曲度を回復し、血液がスムーズに頭部へ送られるようになります。圧迫されていた血流が回復するだけで、上記の各症状に改善が見られるはずです。

いつも頭を下げてスマホやパソコンに向かう姿勢は、頸椎を圧迫して、頭部や眼に関係する恐ろしい病気を誘発しかねません。(Shutterstock)

通常の猫背は、胸椎の第3〜7椎が弯曲して、心、肺、胃などを圧迫しています。そのため、猫背の人はよく動悸、胸の不快感、胃の膨満感、胃腸の消化不良などの症状を覚えます。胸を広げ、腕を伸ばして、肩甲骨から肩にかけての筋肉をストレッチすると、これらの症状が改善されるとともに、血流が良くなることで大脳にも酸素が多く入って、眠気を感じにくくなります。

胸が苦しく動悸がする人は、第3、第4胸椎がずれていることが多いです。長期にわたる咳をして、西洋医や漢方医をあちこち訪ねても全く治療効果が出ない人もいます。それらの人は、猫背であるなど、姿勢が正しくないために、胸椎がずれている可能性があります。

呉国斌氏は、「胸椎を正常に戻すことで、これらの問題は治まります。私は、このような症例の患者を、何人も治療しました」と言います。

上を向いて胸を張ると、動悸、息苦しさ、胃の膨満感などの諸症状を改善することができます。(shutterstock)

猫背になると、肋骨が伸びなくなることで呼吸が浅くなります。長期的な悪影響としては、心肺機能の低下が懸念されます。
現代医学(西洋医学)の視点から見ると、心肺機能の低下は代謝や循環を悪くして、内臓機能に影響を与え、徐々に機能を低下させることで慢性疾患に至ります。逆に、呼吸が深くなると体内循環が良くなり、血中酸素量も十分となって、内臓機能も向上するのです。

これを漢方医学の角度から見ると、呼吸を深く長くすることで腎気のエネルギーを強化することができます。肺は金に属し、腎臓は水に属する、つまり「金生水(金は水を生ず)」であるからです。

肺の気(訳者注:気とは一種のエネルギー)が十分であれば、腎臓の気も十分になります。特に腎気は、体内エネルギーの根本ですので、五臓六腑は腎気によって起動し、全身器官も正常に運行することになります。

伸び伸びした姿勢から得られる端正な体形は、精神面にもプラスの効果をもたらします。
まっすぐ姿勢良く立っていると、気持ちも積極的になり、周囲の人からも自信があって充実しているように見えるものです。

さあ、顔を上げて、青空の下で思い切り体を伸ばしましょう。

(文・蘇冠米 翻訳編集・鳥飼聡)