【歌の手帳】鶴に身をかれ
歌意「この松島(松嶋)の、なんと見事な風景であることか。この美景にふさわしいように、夜に鳴くほととぎすよ(鳴き声はそのままで)姿だけ鶴の身を借りておくれ」。
松尾芭蕉の門人で、『奥の細道』の旅に同行した河合曾良(かわいそら)の俳句です。
ここは松島。宿にとった二階の部屋の窓を開くと、夜の海に明るい月が映るという、極美の風景が見えます。江戸から、はるばる松島を目指してきた芭蕉は、ここで一句も詠めず、曾良のこの句だけを『奥の細道』に記しています。
ほととぎすに「姿だけ鶴になってくれ」とは無茶な頼みですが、それだけ松島の夜景が美しかったということ。なにしろ師の芭蕉は、興奮のあまり寝られなかったのですから。
(聡)
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