中国湖北省の民営企業、襄大集団の経営者の家族はこのほど、会社を地元政府に差し出すと表明した(JOHANNES EISELE/AFP/Getty Images)

共産党の嫌がらせに耐え切れず 民間企業家の家族「会社を政府に差し出す」

「資本家を打倒する」と掲げる共産主義の中国では、企業家は多大な苦難を受けている。このほど、企業家の家族は、地方政府からの嫌がらせに耐えきれず、父親が経営する会社を地方政府に無条件で差し出すと申し出たことが波紋を呼んだ。

中国国内ネット上では、湖北省にある飼料生産・食肉加工などの事業を手がける、襄大集団の会長の娘である張建航氏が同省トップの応勇・党委員会書記らに宛てた公開書簡が転載された。

張氏は書簡のなかで、同省竹谿県政府は、約20年前の地元裁判所の父親と襄大集団に関する法廷判決を覆すために、1年半前から父親に無実の罪を着せようとしてきたと訴えた。同氏は、竹谿県政府は父親を公然と誹謗中傷していると憤った。張氏の父親は、襄大集団の創業者で会長の張徳武氏だ。

張建航氏は現在、同社の1億5400万元の経営資金が不当に差し押さえられ、社長も当局によって拘束されていると明かした。さらに当局は、社員に虚偽の証言を行わせるために社員の子どもの命を脅かしている。社員らは、自分も当局に拘束されるのではないかと強い不安と恐怖の日々を送っているため、会社の業務を全く行うことができないという。

同氏は、自身が中国当局の証券業監督管理員会の傘下機関で勤務したことがあり、米国のカリフォルニア大学で経済学博士号を取得したと自己紹介した。父親と襄大集団を助けるために帰国した。帰国後、地元警察から「会社資金の不法流用」罪を着せると脅迫を受けた。「警察は、私が会社のことに関われば、私も逮捕すると脅かした」

張建航氏は、「父は会社のために、毎日朝早く起き、夜遅く寝るという生活を送ってきた。会社を自分の子どものように20年間育ててきた」「民営の企業家は本当に辛くて大変だ。私ももう(政府に)抵抗できなくなった。諦めるしかない」と嘆いた。

同氏は、襄大集団の全資産を地元政府に渡すと述べ、政府が直ちに管理チームを派遣し会社を接収するよう求めた。会社が存続できれば、「わが社の5000人余りの従業員とその家族の生活が保障され、従業員も安心できるからだ」とした。

公開情報によると、張徳武氏は2001年、襄大集団を創業した。同社の総資産は70億元以上。

政府系メディア「中国新聞週刊」4月の報道によると、同社は中国民営企業500強にランクインしたことがある。しかし、2019年に湖北省襄陽市政府は、張徳武氏と同社の上層幹部が「国家政府機関への襲撃を組織した」と批判した。

同報道によると、2014年、地元の国有化学企業が経営破たんし、社員2000人以上が失業した。襄陽市政府の高官は張徳武氏に対して、同化学会社の再建を支援するよう要請した。張氏はこの要請に応じ、襄大集団を通じて出資を行った。張氏の支援を受け、15年に同国有企業は新卾西化学有限公司として経営再建した。

しかし、2016年、債務紛争をめぐって、襄陽市の地裁が新卾西化学有限公司の法人口座を凍結した。同年9月、同社の従業員が地裁の前で陳情活動を行った。襄陽市政府はこの陳情活動について、襄大集団の幹部らによる「国家政府機関への襲撃」と捉えた。すでに幹部14人は地元の検察側に起訴された。

また、張徳武氏は2002年、湖北省宜城市の地裁で「公務執行妨害」や「脱税」などの罪に問われた公判で、無罪判決を受けた。しかし、今年3月30日、同省十堰市張湾区人民法院(地裁)はこの件を再審理し始めたという。

(翻訳編集・張哲)

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