人権問題で国会は大きな選択を迫られている。(Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images)

【全文あり】人権侵害非難決議なければ「国会の存在価値なし」長尾敬議員が成立呼びかけ

今国会の会期も残りわずかとなった。国際情勢が今までにないほど緊迫化するなか、日本が西側諸国と足並みをそろえるためにやらなければならないことが一つ、閉会前に残されている。中国における人権侵害を非難する国会決議だ。昨年、米国のポンペオ国務長官(当時)が中国の新疆ウイグル自治区におけるウイグル人の状態をジェノサイドとして認定して以来、先進諸国は次々と中国の人権侵害を非難する決議を議会で可決させた。

関連報道:【独自】法務省が法輪功学習者を難民認定、日本で初

5月26日、長尾敬・衆議院議員(自民)はツイッターで人権侵害非難決議案の全文(後掲)を公開し、今国会での採択を促した。

「人権侵害非難国会決議採択がまだ未採択。入管法改正、土地利用規制法案やLGBT議論などの影響で与野党幹事長国対委員長会談の手前で止まっている。議論の余地などなし。G7までに国会の意思を示すこと。未採択では国会の存在価値なし!」と長尾議員は語気を強めた。

桜田義孝・衆議院議員(自民)もこのツイートに呼応し、「極めて重要な議案を政争の具にしないで、迅速に審議、採択をすべきです。」と投稿した。

大きな選択を迫られる国会

中国共産党政権による人権侵害が世界各国の注目を集めるなか、日本でも人権に対する意識がますます高くなってきた。

1月26日、日本の超党派国会議員は日本版マグニツキー法となる人権侵害制裁法の成立を目指す議員連盟発足を発表した。「マグニツキー法」とは、人権侵害を行った個人や組織を対象に資産凍結やビザ発給制限などの制裁を科すことを可能にする法律で、先進国の標準装備となっている。

また、4月16日には「人権外交を超党派で考える議員連盟」が結成・発足し、5月21日時点では83名の衆参両院の議員が加入している。

中国共産党が香港市民を弾圧する様子は映像として各国の民衆の目を驚かせ、新疆ウイグル自治区での強制収容・強制労働に関する証言も次から次へと出てきている。そして米国務省は今年の「世界法輪大法デー」に合わせて、法輪功弾圧に加担した中国共産党官僚に対する制裁措置を発動した。

いっぽう、日本の国会では中国共産党との友好関係を重視する派閥もあり、非難決議の採択に時間を要している。当初は菅総理の訪米前までに成立を予定していたものの、全会派の合意を得られなかった。

長尾議員がツイートで取り上げた主要7カ国サミット(G7)は6月11日から英国で開催される。同時に印、豪、韓国の首脳も揃う民主主義10カ国(D10)も開かれる。英下院保守党議員グループはD10開催にあたり、「国際的な法の支配を損ねる独裁政権に対抗するため、民主主義国間の協力を深化させ、自由の価値や人権を強化する」べきだと提言している。

日本が中国を念頭にした人権侵害を非難する決議を採択し、人権大国としての地位を確立させることができるか。各国が注目している。

(王文亮)


新疆ウイグル等における深刻な人権侵害に対する非難決議案

近年、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港、ミャンマー等では、信教の自由への侵害、強制収監をはじめとする深刻な人権侵害が発生している。人権問題は、人権が普遍的価値を有し、国際社会の正当な関心事項であることから、一国の内政問題にとどまるものではない。

この事態に対し、一方的に民主主義を否定されるなど、弾圧を受けている人々からは、国際社会に支援を求める多くの声が上がっており、また、その支援を打ち出す法律を制定する国も出てくるなど、国際社会においてもこれに応えようとする動きが広がっている。そして、過日の日米首脳会談においても、人権状況への深刻な懸念が共有されたところである。

このような状況において、人権の尊重を掲げる我が国も、日本の人権外交を導く実質的かつ強固な政治レベルの文書を採択し、確固たる立場からの建設的なコミットメントが求められている。

本院は、深刻な人権侵害に象徴される力による現状の変更を国際社会に対する脅威と認識し、これを強く非難するとともに、深刻な人権侵害行為を国際社会が納得するような形で直ちに中止するよう、強く求める。

さらに、それぞれの民族等の文化・伝統・自治を尊重しつつ、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値観を踏まえ、立法府の責任において、深刻な人権侵害を防止し、救済するために必要な法整備の検討に速やかに取り掛かる決意である。

政府においても、このような認識の下に、まず、この深刻な人権侵害の全容を把握するため、事実関係の徹底した調査を行うべきである。それとともに、深刻な人権侵害を防止し、救済するための包括的な施策を実施すべきである。

右決議する。

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