5月22日、英空母クイーン・エリザベスは英南部ポーツマス海軍基地を出発した。写真は打撃群に加わる米フリゲート艦 (Photo by Chris Eades/Getty Images)

英空母、アジア航路が徐々に明らかに 「イスラム国」打撃作戦にも参加

英海軍の最大空母「クイーン・エリザベス」と米英オランダ艦艇からなる英空母打撃群による、アジア地域の航行ルートが徐々に明らかになってきた。同地域ではインド、シンガポール、韓国、日本に寄港する。南シナ海で「航行の自由」は実施するが、台湾海峡は通過しない見通し。日本寄港は今秋とみられる。

英空母打撃群は28週間、航行距離3万6000キロにおよぶ長期航行のなかで、40カ国以上を訪問し、70回以上の演習や作戦を実施する。英議会国防特別委員会のトビアス・エルウッド委員長は、インド太平洋地域の航行は「中国(共産党)の権威主義に立ち向かう」ことを目的としており、志を共にする関係各国との連携強化を図る。

5月22日に英南部ポーツマス海軍基地を出発した際、英女王エリザベス2世が基地を訪問し、1700人あまりの乗組員と歓談した。

参考:英空母「クイーン・エリザベス」が出港 訓練を経て東アジアへ航行

英空母打撃群は6月2日まで、ポルトガル沖、黒海、大西洋でNATOおよびパートナー国と大規模な演習を行う。その後、中東地域を通過する際、イラクとシリアにおける過激派組織「イスラム国」系の武装組織「ダーイッシュ」に対する作戦を展開する。英空母艦載のステルス戦闘機「F35B」を飛行させることが、英空軍の発表で明らかになっている。

この作戦について、英国防副大臣ジェームス・ヒーペイ(James Heappey)氏は「F-35Bがダーイッシュに強烈なパンチをお見舞いすることで、彼らのイラクにおける足場作りを阻止できるだろう」とコメントしている。

英空母はスエズ運河を通過しアラビア海に出て、オマーン、インドの港湾に寄港。インド軍と訓練を展開する。その後、シンガポール寄港を経て南シナ海で「航行の自由(Freedom Navigation)」を実施し、台湾の東側から北上して東シナ海に入る。

台湾海峡を通過しないことについて、対中強硬派の英議員などからは航路の再考を求める声があがっている。元保守党党首イアン・ダンカン・スミス議員は、台湾など「隣国への攻撃的な行動は認めないと中国に知らせる」ために、海峡の通過の必要性を説いている。

寄港先の韓国では8月31日~9月2日にかけて、英海軍が主催する「太平洋未来フォーラム(Pacific Future Forum)」を初めて開く。その後、北上して津軽海峡を通過するか、あるいは南下して九州地方を巡って、米海軍第7艦隊の拠点である横須賀に寄港する。英空母打撃群は太平洋で、自衛隊と米軍との共同訓練を行う予定だ。

さらに、英軍は9月か10月に、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシアおよびシンガポール軍との5カ国間防衛協定に基づく合同演習「バーサ・リマ21」を実施する。

参考:英豪NZシンガポール、マレーシアが5カ国演習を実施 50年前の防衛枠組を再構築

英海軍の情報を伝える独立メディア、ネイビー・ルックアウトは、英空母打撃群のルートを示した地図をツイッターに公開した。それによれば、英空母打撃群は津軽海峡を通過するように描かれている。しかし、大紀元の取材に応じた同媒体ディレクター、ピート・サンダマン(Pete Sandeman)氏は、ルート自体は各国の公開データを基に作成されたもので、暫定的な内容だという。

英空母クイーン・エリザベスは最新鋭戦闘機「F35B」を18機搭載している。英海軍の駆逐艦2隻、フリゲート艦2隻、潜水艦1隻、海軍ヘリ14機などで構成される。英海軍の艦艇のほか、米軍の駆逐艦とオランダ軍のフリゲート艦も一緒に航行する。

ベン・ウォレス英国防長官は、今回の空母派遣について、「世界的な英国(Global Britain)の旗を掲げ、私たちの影響力、力を誇示する。そして友人たちとの連携により、今日と明日の安全保障上の課題に対処する」と声明を出している。

(佐渡道世)

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