新疆ウイグル自治区ホータン地区の郊外にある再教育収容所=2019年4月27日(Shutterstock)

中国当局の内部文書が流出 「ウイグル人によるポンペオ批判」映像の制作を指示

中国政府は最近、ウイグル人が中国共産党を称賛し、ポンペオ前米国務長官を非難し、中国当局から虐待を受けているという米国の主張を否定するビデオ数十本を公開した。しかし、これらの映像は当局の指示で制作されたものだと明らかになった。

5月20日付のAP通信によると、同社は、中国中央政府が今年1月に新疆ウイグル自治区カラマイ市の各政府部門に送った内部文書を入手した。その中で、中央政府は同市に対し、北京語の堪能なウイグル人を見つけだし、マイク・ポンペオ前米国務長官の 「反中発言 」に反論する1分間のビデオを制作するよう求めた。

この文書では、登場人物のセリフについても細かく指示した。「ポンペオの発言に対しては、『私はポンペオの反中発言に強く反対し、非常に憤りを覚えている』とはっきり言わせること」「『私は中国人で、中国を愛し、仕事や生活に満足している』など、党や国、新疆への愛を表現させること」などと書かれている。

AP通信に同文書のスクリーンショットを提供したのは、言語学者のフィルダブス・ドリノフ氏(中国語名:陳浩宇)。ドリノフ氏の友人が、カラマイ政府に勤める親戚からこの文書を入手した。AP通信に文書を渡した3日後、ドリノフ氏とその友人は中国当局に逮捕された。

新疆ウイグル自治区当局も、ドリノフ氏は「虚偽の情報を捏造・発表し、分離独立を扇動した」という容疑で逮捕され、現在、留置場で裁判を待っていると発表した。ドリノフ氏は2015年、国際言語学オリンピック(IOL)に中国代表として参加した。

2017年に中国を脱出したウイグル人活動家のタヒール・イミン(Tahir Imin)氏はAP通信に対し、「新疆に出入りする情報は厳重に検閲されているため、(新疆の)人々はポンペオが誰なのか、彼が何を言ったのかさえ知らない。これらの映像は中国政府によって加工された可能性が高い」と指摘した。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のアルバート・チャン(Albert Zhang)研究員は、「これらのビデオは(当局の意図に沿って作られた)偽物のようだ。そして重要なのは、中国当局がこのようなビデオを求めていることだ」と述べた。

新疆ウイグル自治区人民政府の徐貴相報道官は、記者会見で流出文書の信憑性を直接否定しなかったが、「映像への出演は自発的なものであり、強制されたものではない」と主張した。

数多くの証言や証拠は、中国共産党が2017年以降、100万人以上のウイグル人を強制収容所に入れていることを示している。中国共産党はこれを否定し、拘禁施設を「職業技能教育訓練センター」と表現し、独立国際調査団による現地調査を拒否している。

ポンペオ前米国務長官は、任期最終日の1月19日、中国共産党が新疆ウイグル自治区のウイグル人などイスラム教徒系少数民族に対する弾圧は、「ジェノサイド(民族大量虐殺)と人道に対する罪」であると認定した。その報復として、中国政府は同月21日、ポンペオ氏を含む28人の米政府関係者に制裁を科したと発表した。

(翻訳編集・王君宜)

関連記事
湖南省株洲市の湘江で、ウイルスサンプル収集用試験管が大量に発見され、住民たちは感染リスクに怯えています。当局は「未使用で損傷はなく、ウイルスは検出されなかった」と発表しましたが、専門家や市民の間で疑問の声が広がっています。試験管の正体や流出の経緯について調査が進む中、不安は収まりません。病院も研究所を信用できないのは間違いない。中国ではコロナが収束していないというのは、こういうことなのか?
米司法省は最近、IR事業をめぐり日本の政府関係者に賄賂を渡すよう指示して、中国企業のCEOを海外腐敗行為防止法違反の容疑で起訴した。
ニセモノ摘発も命がけ、道徳低下した中国社会。中国福建省の展示会で、偽商品の摘発を目的とするインフルエンサーが暴行を受ける事件が発生しました。「福建鉄鉄」のカメラマンが問題商品を通報したことがきっかけで、出品者らから集団暴行を受けたとされています。この事件は、中国SNSやメディアで大きな注目を集めており、現在、市場管理局と公安当局が調査を進めています。偽商品撲滅の活動が招いた事件の経緯とその背景に迫ります。
19日、中国江蘇省連雲港市にある国有企業「中国化学工程第十四建设有限公司」の正門前で、ある女性が滞納された給料の支払いを求めて会社管理者の足に抱きつき泣き叫ぶ姿が撮影されました。この動画はSNSを通じて拡散され、多くの人々に衝撃を与えています。女性の訴えに耳を貸さない企業の対応と、中国社会で頻発する同様の問題に、ネット上では悲しみと怒りの声が相次いでいます。「惨め過ぎる」労働者の姿。官製メディアが宣伝する「盛世(繁栄)」中国のリアル。経営者が人間なのか? 人間であれば、会社をつぶす決意をして、会社財産を売って、給料を支払うはずだが。
湖北省武漢市で、配達食注文に対するクレームが原因で、配達員がナイフを持って客の家に押し入ろうとする衝撃的な事件が発生した。監視カメラには、ドアを内側から押さえる家主と、外でナイフを振り上げながら脅す配達員の姿が記録されている。この事件をめぐり、SNSでは中国社会のストレスや労働環境への懸念が噴出。「極限状態にある人々の行動は予測不能」といった声も広がっている。 至るところに「火薬庫」の中国、言動を慎まないと、いつどこで殺されるかわからない。