アップルが中国当局に妥協か 中国人ユーザー個人情報の管理権譲る=米メディア
米紙ニューヨーク・タイムズ17日付の調査報道によると、米IT大手アップルが中国側の要求に従い、「1989年天安門事件」「チベット独立」「台湾独立」など、中国当局が禁止する用語を含むアプリを削除した。さらに、中国人ユーザーの個人情報を中国国営企業が運営するサーバーに保存し、管理権を譲った。
同報道は、アップルは中国のApp Storeを自己検閲し、ゲームや外国報道機関を含む5万5000のアプリを削除したと指摘した。しかしユーザーは、削除されたアプリを他の国のApp Storeからダウンロードできる。
同紙の調査報道は、アップルの内部資料、法廷文書を引用し、現社員や元社員17人とサイバーセキュリティ専門家4人に取材した。2009~16年まで、App Storeの責任者を務めたフィリップ・シューメーカー(Phillip Shoemaker)氏は、中国での事業に関して、弁護士からリストを受け取ったことがあると明かした。
リストには、中国のApp Storeで危険視されるアプリが列挙されていた。これらのアプリは「1989年天安門事件」などに関する内容だ。シューメーカー氏は夜中に起こされ、中国当局の要求に従いアプリを削除したことがあると語った。「アップルの弁護士が中国当局はこの話題を禁止するだろうと指摘したら、会社はこの関連アプリを削除した」という。
また、同紙によれば、中国当局が2017年「サイバーセキュリティ法」を実施した後、アップルは中国人ユーザーの個人情報を中国国営企業が運営するデータセンターのサーバーに保存することに同意した。建設中のこのデータセンターは貴州省にあり、6月に竣工する。アップルは、ユーザー個人情報のロックを解除する暗号化キーを同データセンターに渡したという。内モンゴル自治区でも、同様のデータセンターが建てられている。
ニューヨーク・タイムズ紙はサイバーセキュリティ専門家の話として、アップルの妥協で、中国当局は中国人ユーザー数百万人の電子メールや写真などを入手できると批判した。
米国家安全保障局(NSA)の元専門家は、アップルは中国当局のイデオロギー宣伝の手助けをしたと指摘した。「過去にiPhoneで『台湾独立』を入力して検索した際、iPhoneがフリーズしたという事例がある」
アップルのスマホを使っている中国人市民の呂新華さんは18日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、「同じアップルのスマホでも、中国国内のApp Storeと国外のApp Storeは全く違う」と話した。
呂さんは「IPアドレスで米国での(iPhone)アカウントを登録したことがあるが、App Storeはすぐに米国国内の内容になった。VPNも普通に使えた」「しかし、IPアドレスと中国のApple IDでは中国国内の検索エンジンしか使えない。検閲ワードが多すぎて、『習近平』や『金正恩』はいずれも敏感ワードになっている」とした。
呂さんは、アップルだけでなく、中国で販売されているすべてのスマホは中国当局に検閲されていると指摘した。
中国当局に協力しなければ、外国のIT企業は国家分裂扇動罪で取り締まりに遭い、中国市場から追い出される。
台湾大学の林宗男教授は、アップルが今後、システム情報を中国当局に渡し、検閲を受ければ、他国のユーザーの言論の自由とプライバシーも甚だしく侵害される恐れがあると懸念した。「アップル社は、台湾を含む各国のユーザーの情報を中国側に渡したかどうか説明すべきだ」
(翻訳編集・張哲)