中国の劉鶴副首相(Photo by Lintao Zhang/Getty Images)

中国、習近平氏と劉鶴氏の関係にひびか 文革への再評価めぐり

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は12日、情報筋の話として、中国当局は米国との通商協議担当トップの劉鶴副首相(69)を交代し、新たに胡春華副首相(58)の起用を検討していると報道した。いっぽう、同日、中国の習近平国家主席が河南省で視察した際、胡春華氏が同伴したことで、習氏と劉氏の信頼関係にヒビが入ったとの憶測が広まった。

劉鶴氏は今まで習近平氏が各地を視察した時、常に同伴した。中国政府系メディアの報道では、4月末、習氏が広西チワン族自治区と海南省を訪れた際、劉氏が習氏の横にいた様子を確認できた。しかし、国営新華社通信の今月12日の報道では、習氏が河南省南陽市を訪問した時、習氏と同行した複数の中央政府高官の中に胡春華氏の姿があったが、劉鶴氏はいなかった。

劉鶴氏は習氏の側近中の側近とみられている。習氏からの厚い信頼を受ける劉氏は中国代表団の団長として、米トランプ前政権との通商協議に臨んだ。米通商代表部(USTR)のライトハイザー前代表との交渉も任された。いっぽう、胡春華氏は、2023年に任期が切れる李克強首相の有力な後任候補の一人とみられる。

しかし最近、習・劉両氏の関係にヒビが入ったとの見方が広がっている。中国ポータルサイト「網易」はこのほど、劉氏が13年前に執筆した評論記事を掲載した。記事の元タイトルは、「中国経済の三十年と将来の長期問題(中国語題名:中国経済三十年与未来長期問題)」だったが、「網易」に掲載されたタイトルは、「文化大革命への反省がなければ、今の中国経済成長は不可能だ(没有対文革災難的反思、就不可能有今天中国経済的増長)」に変わった。この記事は最近、文化大革命を肯定的に再評価している習近平氏を暗に批判したとの見方が広まっている。

中国共産党は、党成立100周年を祝うため、4月に「中国共産党簡史」2021年版を発行した。新バージョンは、旧バージョンにあった文化大革命に対して「毛沢東が最大の責任を負う」など、毛沢東を批判する内容を削除した。代わって、毛が「資本主義復活の危険性に警戒して」文化大革命を起こしたなどと擁護した。

中国人学者の呉祚来氏は、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対して、「劉鶴氏の父親が文化大革命の時、吊し上げにされ、迫害を受けて死亡した。文化大革命の評価をめぐって今、習氏と劉氏の意見が対立した可能性はある」と述べた。

呉氏は現在、共産党内において、習近平氏が信頼できる人は少ないと指摘した。「共産主義青年団(共青団)派の胡春華氏をやむを得ず起用するのではないか」との見方を示した。呉氏は、胡春華氏が今まで文化大革命を公に批判しなかったことも、習近平氏に起用される理由の一つだとした。

中国商務部(省)の高峰報道官は13日、米紙WSJの報道について「事実ではない」と述べ、劉鶴氏の交代はないとした。

台湾中華経済および金融協会の曽志超・副事務局長は、「来年70歳の劉鶴氏はそろそろ政界から引退する。彼が米中通商協議の中国側の責任者から退任する可能性がないとは言えない」とRFAに語った。

曽氏は、経済学者で米国に広い人脈網を持つ劉鶴氏と比べて、胡春華氏は比較的若く、「外交や貿易に携わった経験が少なく、米国での人脈も広くない。長い間、USTRで中国問題を担当していたバイデン政権のキャサリン・タイ現通商代表との間で行う今後の交渉で、胡氏が対応できるかは不明だ」と指摘した。

(翻訳編集・張哲)

 

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