【医学古今】

股関節痛の鍼灸治療

女性の患者さん(80代)は、長年右股関節から右下肢にかけての痛みが続いていました。整形外科の検査では股関節の異常が見られず、下肢神経痛として投薬され、治療を受けていました。しかし、なかなか効果が得られず、漢方治療を受けても、やはりあまり効果が得られませんでした。そこで鍼灸治療を試すことにしました。

 鍼灸院に来られた時、女性は右足に重心をかけられない状態で、足を引きずっていました。足の痛みは、起床後に身体を動かし始める時が特に強く、長時間立ちっぱなしだったり、疲れたり冷えたりした時にも増すとのこと。舌と脈を診てみると、舌は暗くて脈は沈渋(ちんじゅう)でした。鍼灸医学の診断では「寒滞経脈(かんたいけいみゃく)」の証でした。

 経脈の寒邪を除去するために、右股関節の周りに灸頭鍼(きゅうとうしん)を施し、右足の少陽胆経(しょうようたんけい)と太陽膀胱経(たいようぼうこうけい)のツボを取って治療しました。ツボは大腸兪(だいちょうゆ)、環跳(かんちょう)、居髎(きょりょう)、髖骨(かんこつ)、陽陵泉(ようりょうせん)、飛揚(ひよう)、邱虚(きゅうきょ)、肉里(にくり)でした。環跳と居髎にも灸頭鍼を行いました。

 最初の治療では灸頭鍼を2回行っても、患者さんは全く熱さを感じていませんでした。しかし、治療後1日程度は足の痛みが無かったそうです。2回目の治療でお灸の回数を3回に増やすと、ようやく局部に僅かな温かさを感じました。その後、数日間は痛みが和らいでいましたが、やはり元に戻りました。3回目の治療で4回お灸を行ったところ、今度は股関節から足先まで温かく感じましたが、治療後は一日中脱力感があり、気分も優れませんでした。しかしその後、足の痛みはかなり軽減し、元の状態、つまり常に痛みがある状態には戻らなくなりました。痛みの範囲は徐々に縮小して、これまでの右足全体から、股関節と膝関節の周囲に痛みが集中するようになりました。更に治療を続けると、お灸の熱さをすぐに感じられるようになり、しばらく右足に重心をかけても耐えられるようになりました。現在も治療を継続しています。

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