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医山夜話

拒食症(2)

ハイジーは、15歳の時にこの病気になったと告白しました。

「私は10歳の時、すでに自分の身体に敏感でした。母は東欧人の遺伝性肥満型であり、体重は90キロを上回っていました。幼い頃、私の人形や家の置物などは、みなほっそりとした女性のイメージでした。母はずっと『女の子は太ってはいけない』という考えを私に植え付け、買ってくれた洋服はいつも私の体より一回り小さいサイズのものでした。その洋服を着ると、私の体はいつも太って見え、時には息まで苦しくなって腰も曲げられず、いつも怖くて緊張し、プライドが大きく傷つけられました」

「私はバレエ学校に通っていましたが、小さくて痩せている子供たちの中にいると、太っている私はとても目立ちました。母はよく他の子供を指して、『あの子を見て、小柄で痩せて、本当に可愛いわ』と言いました。私にはまるで『あなたは本当に駄目な子ね、どうしてそんなに太っているの?』と聞こえました。母の期待に応えるため、私は食後に食べた物を吐く習慣を身につけました。どれほど食べても太らなくなったと嬉しくなり、また自分のこのような決心を誇りに思っていました。食べた物は胃の中にはいってから一時間もしないうちに吐き出されました」

私はハイジーに、「あなたのこの習慣を、お母さんは気づいていましたか?」と聞きました。

「私たちはこの話題を避けていました。しかし、食後に子供がトイレに長時間閉じ込もっているのに、気付かない母親がいるでしょうか?」 ハイジーの表情はとても苦しそうでした。

一方、ハイジーが育った環境とはまるで違う経済状況の中で育った私は、美味しい物を食べた後に吐き出すということが理解できず、戸惑いました。小学生の時、私の兄は体育の時間に運動場で倒れたことがあります。兄は、空腹が原因で倒れたのです。あの時、私の家族はとても貧乏でした。私の気持ちはとてもつらく、大人になった今でもあの日のことをよく覚えています。

「母は私たちが太るのを心配しながらも、毎日のように焼肉やフライドポテトなど太りそうなものを作りました。私は本当に食べることが好きだったので、食べれば食べるほど量が多くなっていき、一回の食事で数人分も食べていました。どうしてもダイエットができず、食欲をコントロールできないかと私はいつも思っていました」

「長期にわたって嘔吐していたため、胃酸が私の歯のエナメル質にダメージを与えたので、セラミックの歯に変えました。私の体は時に太り、時に痩せて、服のサイズも中から特大まで全部揃っていました。初対面の人に対して、私はまずその人のスタイルに注目します。スタイルと服に対して厳しく要求しているため、部下たちも自分の容姿をとても重視しています。外見では、私は有能なキャリアウーマンで体力もありますが、毎晩、私がどんな苦難にいるのか、誰も知りません……」

「以前、治療を求めたことはないのですか?」と私は聞きました。

 

「ずっと治療を続けていますが、表向きの治療をいくらしても、私自身が変わらない限り治りません。しかし、私は自分を変えようと思っていません。色々な治療法を試せば、最後に奇跡がきっと起こると思いましたが、35年経っても私は少しも変わっていません。毎日、食後はトイレに閉じこもり、きれいに吐き出します」

「では、私はあなたのために何かできますか」と、私は聞きました。

彼女は感謝を込めて、「先生はたばことお酒をやめさせてくれました」と言いました。

「私はただ一般的な原理に沿って少し調整を加えただけで、肝心なのはあなた自身がやめたいと思っていたからです。あなたの病気は漢方医の治療範疇に属しません。正直にいうと、このような病気の治療の実例を見たこともありません」と私は答えました。

「先生は今後、私に来てほしくないのですか?」

大半の病気は、三分が実際の病で七分が心理的作用によるものです。正しく導かないと、患者の心理的負担はますます重くなり、病状も次第にひどくなります。従って、人間が健康的な心理を保つことはとても重要なのです。

それから、ハイジーは少女時代の経歴を語ってくれました。

「10代に入って、私の性格はひねくれてしまいました。鏡の中の私はただ太って見えますが、周囲の人は皆『ハイジー、あなたは痩せすぎよ』と言うのです。周りの人はみな頭がおかしくて、私だけが正常だと思いました。私は皆を説得しようとしましたが、最後に私は精神病院に入れられました」

「病院では、私と同室の女の子がまもなく亡くなりました。私と彼女は同じ病気を患っていました。彼女は骨と皮だけで痩せこけているのに、彼女は断固として自分がとても太っていると言っていました。私はとても驚いて、自分の問題にやっと気付きました。その時、私はやっと自分が本当に病んでいることを認めざるを得ませんでした」

拒食症は、心理的な欠陥に由来する病なのです。

 

                                    (翻訳編集・陳櫻華)

 

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