1~3月期中国GDPが18.3%増 専門家、経済回復判断に「信用需要などに注目を」
中国国家統計局は16日、1~3月期(第1四半期)の国内総生産(GDP)は前年同期比で18.3%増加したと発表した。中共ウイルス(新型コロナウイルス)のパンデミックで世界各国の経済が減速するなか、中国の「一人勝ち」の印象が付けられた。しかし、アナリストは中国GDP成長率拡大の裏に、「投資主導、信用拡大、債務急増がもたらしている深刻な金融リスクがある」と警告した。
国家統計局によると、1~3月期において、第1次産業(農業や林業など)の付加価値は1兆1332億元で前年同期比8.1%増で、第2次産業(鉱業、製造業など)の付加価値は9兆2623億元で、前年同期比24.4%増。第3次産業(サービス、教育、医療など)の付加価値は14兆5355億元で、前年同期比15.6%増となった。
前期比に注目
香港在住の金融アナリスト蒋天明氏は、経済指標は「美しく」見えるが、中国経済が力強く回復しているという意味ではないとの認識を示した。
「昨年1~3月期の中国GDPは前年同期比で6.8%減となった。昨年のこの低い数値に基づいて、今年1~3月期のGDP増長率を計算したため、今回の18.3%増が1992年以来の最大伸び率になったのだ」
蒋氏は、18.3%というGDP増長率は市場の事前予想より下回ったと指摘した。ブルームバーグによれば、米金融大手モルガン・スタンレーのエコノミスト、デイ・タン(Deyi Tan)氏は、1~3月期の中国GDPが前年同期比20%増と予想。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の調査では、多くのエコノミストは中国のGDP増長率が同19.2%になると推測した。
また、「1~3月期の中国GDP増長率は前年同期比で大幅に伸びたが、前期比の伸び率は過去5年間の4半期ごとデータのなかで、下から2番目の低さだ」と蒋天明氏は示した。
李克強首相は3月25日、一部の地方政府責任者との会議で、「今年の状況は特殊で、経済を分析する際、前年比だけでなく、前期比のデータを見る必要がある。一部の経済指標が前年同期比で急速に伸びたのは、前年同期の基数が低かったことが大きく影響している」と強調した。
1~3月期の中国GDPは、2020年10~12月期(第4四半期)と比べて0.6%増となった。
社会融資総量とM2
一方、蒋天明氏は、1~3月期の経済回復ペースが今後維持できるかを見極めるうえで、「社会融資総額とマネーサプライ(M2)の両指標を注目すべきだ」との見解を示した。社会融資総額とマネーサプライは、中国国内の信用需要の強弱を測るための重要な指標だ。
中国人民銀行(中央銀行)は12日、銀行融資や新規株式公開、社債などを含む社会融資総量の残高は、3月末時点で、前年比12.3%増の294兆5500億元と発表した。2月の13.3%増から鈍化した。また、伸び率は8カ月ぶりに13%を下回った。
3月末時点で、M2の残高は227兆6500億元で、前年比9.4%増。2月の10.1%増から鈍化した。
社会融資総量の伸び率は昨年11月から、M2は同年6月からそれぞれ鈍化した。
李首相は3月の全人代(全国人民代表大会、国会に相当)で政府活動報告を行った際、「通貨供給量と社会融資総額の成長率は、基本的に名目経済成長率と一致している」と述べた。
蒋氏は、中国当局が投資主導で経済成長をけん引してきたため、「住宅の過剰供給と各産業での過剰生産という資源の浪費が生じた」と指摘した。また、信用拡大においては、昨年、国有企業集団の北大方正や重慶能源集団、不動産開発大手の華夏幸福、自動車メーカーの華信汽車などで債務不履行(デフォルト)が起きた。
蒋天明氏は、中国企業が債務返済のために融資するという悪循環に陥っていることに強い懸念を示した。
(記者・李曦恩、翻訳編集・張哲)