米CSISが日中関係討論会 「日本はすでに対中政策を調整した」

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies,CSIS)は5日、日中関係の現状や、日本政府のアプローチがアジアにおける米国の戦略にどう影響するかについて、討論会を主催した。中国問題や日中外交関係に詳しい日本人学者4人が参加した。

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の青山瑠妙教授、防衛研究所(NIDS)地域研究部米欧ロシア研究室長の飯田将史氏、東京大学社会科学研究所の伊藤亜聖准教授、関西学院大学総合政策学科の井上一郎教授が出席した。CSISのマイケル・グリーン上級副所長兼日本部長が進行役を担当した。

学者4人は、香港での統治強化や民主化デモへの鎮圧、ウイグル人への人権侵害、南シナ海や台湾海峡での軍事挑発を続けている中国当局に対して、日本政府はすでに対中政策を調整したとの意見を示した。

伊藤准教授は日本経済の角度から、日本経済・貿易は中国に依存しており、中国との尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題や中共ウイルス(新型コロナウイルス)のパンデミックにもかかわらず、対中貿易が拡大しているという日本側の「現実問題」を指摘した。

同氏は、日本は「協力と(中国リスクと脅威への)へッジの間でバランスを取らざるを得ない」との見方を示した。中国リスクヘッジとして、日本は「チャイナ・プラス・ワン」戦略をとっており、また、環太平洋経済連携協定(TPP)などの多国間枠組みに取り組んでいることを挙げた。

伊藤氏は、近い将来、中国から撤退して東南アジアへ生産を移管する企業が増えるが、原材料などは中国に頼っているため、日中間の完全なデカップリングは難しいとした。同氏によれば、中国撤退に関して、日本企業の意見は半々と割れている。

「(国際社会が)中国を変えようとするなら、まず中国の内部から変えなければならない。長い目で見れば、中国が民主主義の国に変わることがその一つの可能性であろう」

井上教授は日本の外交政策について、「日本政府は過去に中国の民主化問題、人権侵害問題などを重点として、外交政策に取り入れていなかった」と紹介した。「冷戦以降、法治、人権、民主化を徐々に外交政策に入れた。特に最近、香港、新疆、南シナ海問題、台湾への挑発について、日本政府は中国に対してはっきりとメッセージを出した」という。

井上教授は、日本は中国の民主化を支持するとし、中国が東南アジアでは依然と強い影響力をもっているが、日本も東南アジア諸国を見放していないと述べた。

井上氏は、日本は中国の習近平国家主席の1期目の時から、中国当局の脅威を感じ取り、同盟国などから構成する民主主義連盟に加わろうと決心したと紹介した。同氏はまた、中国共産党政権と中国国民を分けて認識する必要があるとの見解を示した。中国当局の共産主義イデオロギーだけでなく、民族主義イデオロギーにも警戒すべきだとした。中国当局による香港や台湾への締め付けには、民族主義イデオロギーの影響もあるという。教授は「米国のトランプ前政権が強硬な対中政策を打ち出したことで、中国国内の民族主義が拡大した」と分析。

井上教授は、今回のパネルディスカッションのためにCSISで論文を発表した。同論文は習近平主席が2022年末に2期目を終えて、3期目に移行する可能性が高いことから、中国が近い将来、外交政策を調整し、国際社会との協力関係に戻る可能性は低いと警告した。また、中国当局がグローバル経済への依存から脱却し、グローバル経済の圧力に対抗できる力をつけ、強国になるための「双循環」経済戦略を打ち出したことに言及した。教授は、現在、民主主義国の間では、中国当局という同じ課題に直面しており、自由主義的な国際秩序を守るために毅然とした態度をとるべきだと述べた。

同教授は、日本政府が今後、中国に対抗するために、韓国やインドなどとの外交関係を一段と強める必要があるとした。

いっぽう、飯田氏は討論会の中で、中国当局の戦艦が尖閣諸島や日本領海に頻繁に侵入していることや、中国当局の軍拡主義に強い危機感を示し、日本を取り巻く安全保障環境が悪化しているとの認識を示した。

中国当局はこのほど、中国海警局に対して武器使用を認可する「海警法」を実施した。飯田氏は論文の中で、中国との武力衝突に備えて、尖閣諸島とその周辺海域における海上警備の強化、海上保安庁の艦船や巡視船と乗組員の増加、海上・航空輸送能力の拡大などを日本政府に提案した。また、中国当局の挑発行為に対する日本の抑止力を高めるために、自衛隊は、対艦ミサイルなどの長距離精密攻撃兵器を導入すべきだと強調した。また、中国側の動きに対応して、日米はさらに緊密な連携を図ると同時に、自衛隊と米軍は中国軍への監視や武力行使、尖閣諸島の有事を想定した反撃・占領島奪還などを含めて、様々な統合作戦計画を策定する必要があるとした。

同氏は、中国当局の野心に対抗するために、日本は米国のほかに、インドとオーストラリア、ベトナム、フィリピンの諸国との連帯感を高める必要があるとした。

いっぽう、進行役のグリーン氏は、これまでの調査ではアメリカの若者と比べて、日本の若者の反中感情が強いと示した。これについて、青山教授は、報道機関の報道やソーシャルメディアで得た情報で、特に中共ウイルスの感染拡大以降、日本の若い世代は中国に対する脅威を強めているとの意見を述べた。

(翻訳編集・張哲)

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